CMやテレビ通販でおなじみのアスリート愛用のマットレスやリカバリーウェアは本当に効果があるのか。睡眠コーチの角谷リョウさんは「アスリート仕様の商品は運動をハードにした人向けで、ビジネスパーソンや一般人には不要どころか、かえって睡眠の質を下げてしまう可能性もある」という――。

※本稿は、角谷リョウ『仕事の質を高める休養力』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/Liudmila Chernetska
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Liudmila Chernetska

■なぜ、アスリート愛用のマットレスは一般人に合わないのか?

寝具メーカーさんたちのマーケティングの努力により、以前は一部の人しか縁がなかった高級マットレスが、今や一般的な人でも普通に購入できる時代になりました。

マットレスといえば、フィギュアスケートの浅田真央さん、テニスの錦織圭さん、サッカーの三浦知良さん、そして極め付けはメジャーリーグの大谷翔平さんといった知らない人はいないレベルのアスリートが広告塔になっています。

その理由としては、そもそも今の高級マットレスがアスリートの疲労回復に効果があることから始まったからです。実際にアスリートにとって疲労回復はとても重要であり、寝具には非常にこだわっているので説得力があります。

さらに、さまざまな研究や実験を通して、各メーカーはどのような反発力や体圧分散が疲労回復に効果的かを日々研究し、改善を続けています。

しかし……ここで重要なことなのですが、アスリートたちと普通のビジネスパーソンの疲労はかなり種類が違います。というか、真逆くらい違います。アスリートは体を酷使した疲労ですが、ビジネスパーソンは脳と神経のみの疲労が多く、肉体はむしろ使わなさすぎるための疲労なのです。

もちろん仕事も運動もバリバリこなす方はアスリート仕様で良いと思います。

もう1つ考えていただきたいのは、体格が違うことです。アスリートと私たちでは筋肉量が全然違うのです。

アスリート仕様のマットレスで寝ると「かなり固いな」と思われる方が多いと思います。実際にかなり高反発で当たりも固いタイプが多いので、マットレスの上にトッパーと言われるクッションシートを購入されて固さを軽減させることが多いです(販売員に購入をすすめられます)。

今までの話を総合すると、運動をそこまでしていないほとんどの人にとって、アスリート仕様のマットレスは不要どころか、かえって睡眠の質を下げてしまう可能性すらあるのです。

高級なアスリート仕様のマットレスにクッションシートを重ねるのは、お金をかけてノーマルマットレスに戻しているような茶番行為なのです。

この原稿を執筆時点でチャットGPTに「あなたは寝具の専門家でオタクです」という設定にして、「一般的な成人が最も睡眠が良くなるマットレスを正直に忖度(そんたく)なく教えてください」と質問したところ、「コアラマットレス」という回答が返ってきました。

私も個人的には適度な高反発で寝返りしやすく、体に触れる部分は低反発でリラックスできる二重構造は現時点で一番おすすめです。現時点でも5万円以上クラスだと、この二重構造がスタンダードになってきています。5万円以下のリーズナブルな価格帯のマットレスでも、できるだけ「高反発」かつ「表層は柔らかく」する工夫をさまざまなメーカーが始めてきています。

■なぜ、リカバリーウェアで逆に疲労が増す人がいるのか?

最近、最もクライアントやセミナー受講者からいただく質問が、「リカバリーウェアは本当に疲労回復効果があるのか?」または「リカバリーウェアは睡眠の質を上げるのか?」といったリカバリーウェアに関するものです。

ちなみにリカバリーウェアとは、特殊な素材を生地に入れて、血行を促進させて疲労回復をサポートするウェアを指します。

この原稿を書いている時点ですでに200万着も売れている商品があったり、リカバリーウェアだけで上場する会社も出てきているくらい社会現象になっています。

実際に私もクライアントの多くの方もリカバリーウェアを持っていて、着て寝ることもまれにあります。

リカバリーウェアを着て寝るのは、おもに運動をハードに行って肉体疲労があるケースです。ちなみにリカバリーウェアの多くは一般医療機器認証を受けていますが、これは疲労効果に対して認証しているのではなく、遠赤外線による温熱効果と血流促進効果に対する認証なのです。

リカバリーウェアの最大の特徴は「血行を促進させること」「筋肉のハリを軽減すること」にあります。

角谷リョウ『仕事の質を高める休養力』(フォレスト出版)

デスクワーク中心の現代のビジネスパーソンが寝ている間に血行を促進させて調整するといったトリッキーな考え方もあるかもしれませんが、基本的には睡眠中は自然で肌触りの良い素材(コットンやシルクなど)で手足が解放されているパジャマで寝る方が理にかなっています。

実際に私も含めてほとんどのクライアントが、主観的にもデバイスのデータでも、普段の日中の過ごし方ならパジャマの方がむしろ回復感や睡眠スコアが良いのです。

けしてリカバリーウェアを否定しているのではなく、盲信せずにうまく使いましょうということを言いたいだけです。

出典=『仕事の質を高める休養力』(フォレスト出版)

例えば自宅に帰って寝る前まではリカバリーウェアを着て、寝るときはパジャマ、あるいはトレーニングや日中よく歩いた日はリカバリーウェアで寝るという感じで使い分けるイメージです。

一流のアスリートは日によって枕やマットレスを変えることもありますが、それは私たち一般人には大変です。しかし、寝るときの服を変えることは比較的簡単かと思います(ちなみに最近では締め付けもなく肌ざわりが自然な感じのリカバリーウェアが主流になってきています)。

----------
角谷 リョウ(すみや・りょう)
睡眠コーチ
LIFREE共同創業者、睡眠・超回復研究所 所長。大手企業を中心に、計160 社、累計16 万人を超えるビジネスパーソンのパフォーマンスを改善してきた上級睡眠健康指導士。日本スポーツ協会公認スポーツ指導者。日本睡眠学会会員。日本サウナ学会学会員。認知行動療法や心理学をベースにした独自の睡眠改善メソッドによるサポートを行っており、1 回のセミナー参加で不眠症レベルの受講者の約60%が「正常範囲」まで改善。4 週間の睡眠改善プログラムにおいては90%以上が「正常範囲」にまで改善している。テレビ、雑誌などメディア出演も多数。著書に『エグゼクティブを見せられる体にするトレーナーは密室で何を教えているのか』(ダイヤモンド社)、『働く女子のための睡眠革命』(光文社)、『働く50 代の快眠法則』(フォレスト出版)など多数。公式note 16 万人改善の睡眠コーチ 角谷リョウ:仕事で差がつく超回復睡眠
----------

(睡眠コーチ 角谷 リョウ)