決勝のピッチに立てずに涙を流したディ・マリア。当時の心境を本人が明かした。 (C) Getty Images

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 2014年7月のブラジル、ドイツ代表とのワールドカップ決勝を控えていたアルゼンチン代表のアンヘル・ディ・マリアの元に、一枚の手紙が届いていた。

 差し出したの当時所属していたレアル・マドリ。その内容は、「ファイナルに出てはいけない」という厳しいものだった。というのも、ディ・マリアは、準々決勝のベルギー戦で脚を負傷。準決勝のオランダ戦を欠場し、満足にプレー出来る状態ではなかったのだ。

 契約を結んでいるマドリーからすれば、当然の“命令”だった。だが、非情な宣告を受け、ディ・マリアは手紙を破り捨てたという。アルゼンチンのテレビ局『Telefe』のインタビューで、こう明かした。

「この真実を知っているのは、チームドクターだったダニエル・マルティネス、監督のアレハンドロ・サベージャ、そして僕だけだ。怪我の状態はできるかできないかのギリギリのところだった。でも、僕としては試合に出たかった。たとえもう一回、サッカーをできなくなっていたとしてもね。そんなことは全く重要ではなかったんだ。

 マドリーからの手紙はダニエルから受け取った。あのとき、彼ら(マドリー)が僕を売り飛ばそうとしていたのは知っていた。それで売り物を傷つけたくなくて送ってきたんだ。僕はそれを手にしたけど、破り捨てたんだ」
 
 結局、ディ・マリアは決勝のピッチに立てず、延長戦の末にドイツに屈した仲間たちをベンチから涙ながらに見守るしかできなかった。

 ディ・マリアは当時の心境を語っている。

「試合の前の日にアレハンドロの元へ話しに行って、僕は泣きながら自分が100パーセントの状態じゃないと伝えた。監督は、僕を愛してくれていて、プレーして欲しいと願っていることが分かった。でも、ふたりともチームにとって最善のことを考えた。そう考えてはいたけど、痛み止めを打って、チャレンジはしようとしたんだ。最終的にミーティングでエンソ・ペレスを僕のポジションに置くことが決まったけどね」

 大会後、マドリーに不満を抱いていたディ・マリアは、当時のプレミアリーグ史上最高額となる5970万ポンド(約83億5800万円)でマンチェスター・ユナイテッドへ移籍した。

 15年8月には、パリ・サンジェルマンへと移籍し、チームに欠かせないパーツとして活躍を続けているディ・マリア。ブラジルで味わった悔しさもその原動力となっているはずだ。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部