男女平等社会と言われて久しいこのご時世に、大学時代の最終章ともいえるのは4年時の「就職活動」。

この時の選択は、その後の人生を大きく変えるGATE(入口)だ。

これは、若さと美貌、また裕福な実家というバックグラウンドを兼ね備えた女子大生たちの、22歳(就職内定時)・23歳(社会人1年目)・27歳(社会人5年目)時点の人生を描いたものである。

果たして22歳時の選択は、その後の人生にどう影響をもたらすのだろうかー?

前回までは、「就活は婚活」と言い切り、CAとして華々しい生活を送るものの、結婚後「他人から与えられる幸せは長続きしない」ということに気づいた英理佳を紹介した。

今回は、そんな英理佳の親友の1人である「葵」の大学4年、就職活動時のお話。




「総合商社の総合職は、ほぼ不可能だと考えた方がいいね」

大学のキャリアセンターで、担当職員にそう言われ、葵は肩を落とした。

「女の子だし、一般職の挑戦も考えてみたら?まぁ、商社一般職は昨今、早稲田や慶應の女の子たちも狙っていて、さらに狭き門になっているけどね」

自分でも分かりきったことを他者に言われると、なおさらそれに抗おうとしてしまうのは、葵の昔からの癖である。

―総合職で、総合商社に就職したい。

葵はいつの頃からか、このような将来像を抱くようになっていた。

大学入学当初は、将来の目標も特になく、友人の英理佳や沙耶と毎日楽しく過ごしていた。

就職活動や将来のことが心配になることもあったが、先輩たちの様子を見ていると、特に苦労することなく、皆大手企業に内定を決めていた。

ただ1つ、葵にとって疑問だったのが、職種が「男性は総合職、女性は一般職」とはっきりと分かれていたことだった。

「私達って、将来どうするんだろうね?みんな就職活動して企業に勤めるんだっけ?」

葵が、時折英理佳や沙耶に聞くと、2人はこんなことを言う。

「うーん、分かんない。幸せに暮らせたらいいよね♡」
「葵は、葵のパパみたいにならないの?」

沙耶がのんびりした口調で、父親のことを話題に出すと、葵はきっぱりこう言った。

「うん、私はパパみたいに国会議員みたいになりたいとは思わない。もっと違う形で働きたい。」

そしてこう思うのだった。

―そう、私は絶対パパみたいにも、ママみたいにもなりたくない。自分の力だけで生きていきたい。


葵の人生観に影響を与えた背景とは…?


葵は、代議士である父と専業主婦である母のもとで育った。

九州のとある地方を選挙区とする父親と、父の後援会活動に忙しい母親。

両親は1カ月の3分の2を、九州の地元にて選挙関連の活動で過ごす。葵は、高校生の頃から自宅に帰っても1人ということが多かった。

もっとも、父が絶大なパワーを持っている葵の家では、例え両親が家にいたとしても、母は父の顔色を伺うばかりで、「団欒」からは程遠いのが実情であった。

父に気を遣いすぎる母と、母に感謝することなく横暴な父。

―私は、将来絶対に自分で稼いで、男性に頼らなくてもいいような大人になりたい。

葵は、いつしかそう思うようになっていった。



また、葵の将来観を大きく動かす出来事が、もう一つ存在した。

それは、大学2年の夏から1年間留学していたフィンランドでの経験である。

「今の時代、英語くらいは話せるようになっておかないと、将来きっと困るわよね。」

英理佳や、他の成城大生と違って帰国子女ではない葵が、大学入学時に1つだけ抱いていた目標が海外留学であった。

当初は、英語圏への留学を希望していた葵であるが、選抜試験に敗れてしまった。そこで、北欧諸国は英語の話者率が世界の中でも高く、何より治安が良いということで、選択肢になかったフィンランドへと留学を決めたのである。

結果としてこの選択は、葵にとって大変有意義なものであった。

「男性や女性といった区別ではなく、個人として将来どうありたいか」を、葵は現地にて肌で感じたからである。

―私のこれまでの環境とは、大きく違うわ。

これは葵にはとても新鮮だったし、自分もそのようにありたいと強く思うようになっていった。

またアメリカやイギリスと違い、フィンランドのような国は、日本人留学生にとってはマイナーである。そこで出会った日本人留学生達は、年齢関係なくコミュニティとして、互いに距離が近くなり、帰国後も何かと関係が続くことが多かった。




大学4年生の4月中旬、葵は就職活動に行き詰っていた。

しっかり者の葵は、これまでに、自分の大学のOB、OG達のほとんどに話を聞きに行き、面接の準備を進めていた。しかし狙うは超人気の総合商社、日に日に、焦りは増すばかりである。


焦る葵が思いついた就活の攻略法とは…?


「そうだわ…!隼人先輩って確か、商社に就職していたわよね。」

とっさに、葵はFacebookを確認する。そこには、商社マンらしい爽やかな笑みを浮かべた青年の写真―中田隼人が映っていた。

中田隼人は、葵がフィンランドに留学していた時に、慶應義塾大から同じくフィンランドに留学してきていた2つ上の先輩である。

葵が次に狙ったのは、他大学出身のOB訪問だ。

「葵ちゃんぜひうちに来てよ!俺、人事部で働いているんだよね、今度俺の先輩達も交えてご飯でも行く?」

最大手の商社に勤める隼人は、すっかり大人びており、社会人の余裕を醸し出していた。

「え〜隼人先輩!いいんですか?ぜひお願いしたいです。」

隼人は自身が勤める会社の先輩だけでなく、慶應時代の同期であり、他の商社に就職したOB達とも、葵をつなげてくれた。

結果的に葵は、芋づる式に数々のOB・OG達に訪問を重ねていき、面接が始まる6月の直前には、訪問時にもらった名刺の束が、書籍の厚みを超えるぐらいになっていった。

―それぞれの会社の特徴はなんとなく掴めたわ。後は面接を頑張るだけね。

情報収集を進めていく中で、葵は結局「一般職」としてエントリーすることにした。葵の大学からでは、総合商社の総合職は男子でもハードルが高い。だったら一般職で入るしかない、という結論に達したのである。

実際、葵は隼人が勤める最大手には縁がなかった。また、その他の総合商社にも縁がなく、諦めかけていた6月の最終週。

葵は自身の携帯の着信音に気づいた。

「おめでとうございます。あなたを採用させて頂きたいと思います。」

それは、葵が望んでいた『内定』を知らせる電話だった。葵を採用したいといってくれたのは、業界の中でも、「一般職は顔選考」と呼ばれるくらい、一般職がかわいいことで有名な会社である。

長身で正統派美人の葵は、熱心な就職活動と、自分自身が持ちうる最大限の武器を活かして、商社一般職という狭き門を突破したのである。




7月の初旬、葵は「内定者懇親会」に参加していた。

葵と同じく「一般職」に内定を果たした同期をみていると、7人中、4人が大学在学時にミスコンに出場しており、葵も見たことがある子たちだった。

そのうちの1人は、朝の情報番組で「お天気お姉さん」として活躍中の子であり、葵は改めて、自分達が少なからず「顔採用」であることを実感した。

難関を突破しはしゃぐ内定者達をよそに、葵は、「女性総合職」として働く人事部の寺島綾香に声を掛けた。

「総合職転換制度ってあったりしますか?」

寺島は、驚いた顔をしたが、すぐに答えてくれた。

「社内試験があって、それに合格すれば可能性もあるわよ。私もこの春から、総合職に職種転換したのよ。あなたもやってみたいなら、頑張りなさい。」

そして葵は、決心した。

―ここで頑張って総合職になろう。

こうして葵の就職活動は、いったん終了したが、総合職を狙う葵にとっては、ここからが始まりであった。

▶Next:8月12日 月曜更新予定
「一般職」で入社し、「総合職」を目指す葵。「バリキャリになりたい。」そんな葵の就職活動はまだまだ始まったばかり?!

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〜自分でも戸惑うような意外な一面を、誰しもが持っている。キラキラOLの翔子(27歳)の“もう1人の自分”とは…?続きは、明日の連載をお楽しみに!