日本代表のウルグアイ戦(8月14日/宮城)を4日後に控えたJリーグ第20節。周囲の高まる期待に応えるように、柿谷曜一朗が2ゴールの活躍でセレッソ大阪を勝利に導いた。

「(連敗していた最近の)2試合とも攻撃陣がディフェンス陣に迷惑をかけていた。もう一回信頼してもらうためにもゴールしたかった」

 そう語る柿谷は、試合開始からわずか3分でこぼれ球を押し込み、先制ゴール。前半26分には、MFシンプリシオからのパスでDFラインの背後に抜け出す得意の形から追加点を決めた。

 さらにはダメ押しとなる3点目(後半64分)も、柿谷の巧みなドリブルと正確なクロスによってもたらされた。3−0で大宮アルディージャを下したこの日の試合は、さながら「柿谷ショー」となった。

 そんなエースストライカーの活躍に、周囲の期待はさらなる過熱を見せる。言うまでもなく、ウルグアイ戦に臨む日本代表メンバーに柿谷が名を連ねているからだ。

 しかし、現在のJリーグでひと際高い注目を集めるニュースターは、周囲の過熱ぶりをたしなめるように「Jリーグの試合は、(日本代表へのアピールではなく)セレッソのために戦う。そこはブレずにやりたい」と言い、こう話した。

「(日本代表に)選ばれたからどうこうではなく、チームが2連敗していたので、それをいい方向へいくようにしたかった。勝ててよかった」

 もちろん、日本代表を意識していないということではない。「目の前の試合のことしか考えられない」という柿谷は、連敗を止める貴重な勝利をチームにもたらしたあとは、「次はウルグアイ戦」と視線を日本代表へと移し、「短期間だけど、何か得るものがあると思う」と口にした。

 東アジアカップでは2試合で3ゴールを決め、鮮烈な代表デビューを果たした柿谷。当然、ウルグアイ戦でも同様の活躍が期待されているわけだが、今回の日本代表には東アジカップ当時との決定的な違いがある。すなわち、海外組を含めた主力組の中でプレイするということだ。

 東アジアカップは新戦力発掘に焦点を当てた、いわば“2軍戦”だった。柿谷自身、東アジアカップでは「周りが自分に合わせてくれた」と語っており、今回は状況が違うということをしっかりと認識している。

 実際、主力組が合流するに際しては、少なからず不安もある。本来のプレイスタイルという点から言えば、日本代表と柿谷とは必ずしも相性がいいとは言えないからだ。

 高い位置にポジションを取って相手DFラインを下げさせ、2列目の選手を生かすためのスペースを作り出す。日本代表の1トップに求められているのは(前田遼一がそうであったように)主にそうしたプレイである。

 一方で、柿谷が得意とするのは、スピードを生かして自らDFラインの背後のスペースに飛び出すこと。その特徴は異なる。

 セレッソのレヴィー・クルピ監督が、「曜一朗はときどき、試合の流れから消えてしまうことがある。それでも、技術のクオリティーの高さはずば抜けており、ワンプレイで試合を変えられる」と語っていたが、図らずもこの言葉は、柿谷が日本代表でプレイすることへの不安と期待を同時に示している。

 だからこそ、柿谷は「(自分の得意なプレイで)変化を出すことも大事かもしれないが」と前置きしたうえで、こう語る。

「(今回の日本代表は)ザッケローニ監督のサッカーを頭に叩き込まれているメンバーが多いので、何かを吸収することも大事。韓国(東アジアカップ)で少しだけ教えてもらったけど、もっともっといろんなことを教えてもらいたい」

 自分の特徴をグイグイと前に押し出すことよりも、まずは指揮官の目指すサッカーのベースとなる部分をしっかりと身につける。柿谷にはそうした覚悟ができているようだ。

 とはいえ、どれだけ仮説を並べてみたところで、仮説は仮説。やってみなければわからない、というのが正直なところでもある。

 現在の柿谷は、卓越した技術と高い決定力を見せている、J1屈指のストライカーであることは間違いない。実際に柿谷が1トップに入り、2列目に岡崎慎司、本田圭佑、香川真司が並んだとき、どんなことが起きるのか。まずは、それをピッチ上で見てみたいものだ。

 新戦力が合流間もない試合で目に見える結果を残すことは簡単ではないだろうが、もしも今後への楽しみを膨らませてくれるものになるならば言うことはない。

 とりあえずはザッケローニ監督が、柿谷に出場機会を(それも残り5分の途中出場などではなく、できることなら先発で)用意してくれることを願うばかり。そのときこそ、東アジアカップではわからなかった、真の意味での「日本代表・柿谷曜一朗」がベールを脱ぐことになる。

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