「日本では約8割の地域から若年女性が都市部に流出し、人口減少・地方衰退の一因であると言われています。でも、それって私たちが問題なんだっけ?」というSNS投稿を発端に、「地方女子プロジェクト」として120人以上に及ぶ当事者の生きづらさをインタビューしてきた山本蓮さん。女性が声を上げることで「珍獣扱い」すらされるリスクを負いながらも、地方女性が抱える課題に向き合っています。

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地方の人口減少「これって私たちが問題なの?」

── 山本蓮さんは「地方女子プロジェクト」を立ち上げ、これまでに地方在住・出身の20、30代女性120人以上にインタビュー。SNSで地方女子が抱く違和感や悩みなどの声を配信してきました。取材相手は顔出しの方もいれば、プライバシーを守るために顔や声を伏せる方もいます。「意見を言えば、珍獣扱いされ」と涙ぐむ人も姿も…。

山本さん:プロジェクトを手伝ってくれるコアメンバーは顔出し可能な人が多いのですが、お話を伺う方は近所や家族に何を言われるかわからないので、顔や声がばれないようにしたいと話す方が多いです。これまで矢面に立たされてきた、フェミニズム運動の先輩たちを見て、「自分は黙っていたほうがいい」と考えるのも理解できます。

でも、誰かがやらないといけないので…。地方在住や地方出身で地元での女性を取り囲む環境や保守的な価値観に苦しむ「地方女子」は、周囲の目を気にしやすく、「自分から声を上げよう」という流れに乗りづらいテーマなので、ここからどのように広げていくかが課題です。私たちは決して苦情や文句を言っているのではないのですが、批判や誤解を受けることもありますね。

── 意見を述べる際にも、障壁があるのですね。「地方女子プロジェクト」の発端は? 

山本さん:自分や周囲の経験から「これはおかしい」と考え、実際に地方から女性が流出している現状を世の中に問いたいと考えたのがきっかけです。2024年1月、インスタグラムに「日本では約8割の地域から若年女性が都市部に流出し、人口減少・地方衰退の一因であると言われています。でも、それって私たちが問題なんだっけ?」という動画を投稿すると、大きな反響があり「この動画を市長や町長に見てほしい」というコメントなども寄せられました。

意識を変えられないおじさんの気持ちもわかる?

──「地方女子プロジェクト」の声を、いちばん届けたい相手は誰ですか?

山本さん:共感という点では地方在住・地方出身女性にも向けていますが、いちばん届けたい相手は男女の待遇改善の鍵を握る、地方のステークホルダーである年配の男性です。SNS発信が届きにくい層なので、新聞などの紙媒体や講演会などにも力を入れています。

講演会や勉強会での反応は、「そもそも地方における女性の仕事の選択肢の少なさや賃金格差、固定観念・習慣を問題だと認識していなかった」というケースが多く、「都会がキラキラしているから女の人は出ていっちゃうんじゃないか?」「今回、初めて女性活躍のテーマで勉強会に参加して現状を知った」という反応がまだまだ多いです。

いっぽうで講演後、「本当に、結婚や子どもに関して無意識に女性へ質問をしていた。今後はそうした質問はしないし、周囲で聞いている人を見かけたら止めに入りたい」と、おっしゃる方もいました。講演会などで面と向かって話すと否定的な反応は少ないですが、YouTube動画へのコメントには、男性によるものと見られる「(結婚や経済面など社会からのプレッシャーで)男のほうがつらいんだ」という内容が多く見られます。

私たちは、地方で暮らして働く女性にステレオタイプな役割を求める人に対して、対立ではなく変化を望んでいるのですが、意識変革は本当に難しいです。私の父もたまに「意識を変えられないおじさんの気持ちもわかる」とつぶやくので、私もため息をつきたくなることがあります。

── なるほど、なかなか難しいですね。

山本さん:現在60、70代の女性たちが経験していたことが、そのまま私たち若い世代に残っており、地方では何も変わっていない現実に唖然とします。でも、以前は問題だと認識すらされていなかったテーマが、こうして当事者が「イヤだ」と声を上げ始めて、課題として表面化しているのは大きな変化です。

前総理にも進言。感じる「確かな変化」

── 山本さんは、内閣官房地域働き方・職場改革等推進会議メンバーや自治体の男女共同参画推進委員としても活動中です。これは大きな前進ではないでしょうか?

山本さん:2025年3月に、石破茂総理(当時)側から声をかけていただき、直接、意見交換しました。石破さんは地方創生に力を入れ、女性の権利問題に鋭い感覚を持っていらっしゃったので、当事者の声に驚きながらも真摯な態度で聞いてくださいました。会議メンバーや委員としては、若者が抱える悩みを当事者の立場でお話ししています。

最近は自治体の男女共同参画推進計画に「地域における男女共同参画」がアジェンダ(議題)に含まれていたり、地方創生のなかで「若者・女性に選ばれる地方」と表現されたりするようになったのも進歩です。若年女性の流出や少子化に苦しむ自治体でも、以前は婚活パーティなどの企画が多かったのですが、キャリアの機会拡大や賃金格差の解消に向けて、地元企業の意識改革に乗り出す自治体も増えました。

また、この課題への関心が高まり、地方の女性流出について、これまでのデータと考察のみの記事や報道だけでなく、私自身が取材を受ける機会が増えるなど、当事者へのインタビューを交えた報道が増えた気がします。

── たしかな変化を感じます。「地方女子プロジェクト」が立ち上がって2年が過ぎましたが、活動の様子は?

山本さん:現在、プロジェクトに主体的に関与するメンバーは、もともと社会課題への解消に携わりたいというモチベーションが高い人が多い背景があります。各メンバーは社会運動、ビジネス、メディアなどさまざまな得意分野で協力してくれています。なかには、「地方の課題のすべてに共感できるわけではないが部分もあるが、自分のような都会にいる人間が地方のために動かないといけないと考え、運営に携わった」という都市部在住のメンバーもいます。

活動開始時はボランティアでできる範囲のことをやろう、という雰囲気でしたが、最近はこの取り組みをボランティアで終わらせず、持続可能でインパクトのある取り組みにしようという共通認識を持つようになりました。現在は、法人化を目指そうという段階です。

──「地方女子プロジェクト」に関わるメンバー自身の心境やキャリアに変化は見られますか?

山本さん:運営メンバーのひとりはプロジェクト加入時は学生で、「絶対、地元に帰らない」と言っていましたが、「自分が地元を変える」という志を新たに持ち、地元に公務員として就職しました。

120人以上インタビューした中では、地元のジェンダーギャップを変えたいという志を持ち、市議会・県議会議員になった方や政治家を目指している方とも出会いました。さらに、起業家や起業検討中の女性もいます。このように「地方女子プロジェクト」は、同じ志を持った方とつながるきっかけにもなり、心強いです。

私がこの活動を始めたのは地方での女性の扱いに疑問を感じたからですが、その原点をたどると、叔父の死があります。叔父は若いころから周囲に「結婚しろ」、結婚後も「給料が低い。男なんだからもっと稼げ、しっかりしろ」と言われ続け、ずっとプレッシャーを感じていたようです。

結局、叔父は私が高校生のときに、40代で自死。ジェンダーを学ぶにつれ、「固定観念や社会的構造に追い詰められた末の死だったのでは?」、「どうすれば叔父が生き続けられた社会になるのか?」という疑問やるせなさが湧いてきました。私たちは地方女子の声を発信していますが、女性だけでなく男性も、男女に当てはまらない人も、固定観念や慣習に縛られず、多様な声や生き方が受け入れられやすい社会を目指したいと考えています。

取材・文:岡本聡子 写真:山本蓮、地方女子プロジェクト、ヤマモトクミコ

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