「5分でいいから、子供が消えてほしい」不満を抱えた母親たちは、やがて『既婚者合コン』へ…中年世代で不倫がカジュアル化した「切実な事情」
〈《既婚者合コンに潜入!》「家庭に満足してたら、こんなとこ来ない」夫に嘘をついて参加する人も…中年世代がのめり込む“不倫の温床”に広がる光景〉から続く
いま、中年世代で「既婚者限定の合コン」がブームだという。大半の人が目当てとするのは刺激=不倫である。
実際に潜入してみると、参加者の多くはギラギラしたようすもなく「普通の人たち」だ。既婚者限定合コンという機会があるにしても、彼・彼女らをリスクのある行動に突き動かす背景には何があるのか。原田曜平氏による新著『中年中心社会 団塊ジュニアとポスト団塊ジュニア』から、一部抜粋してお届けする。

既婚者合コンは不倫をカジュアルなものにした 画像はイメージ ©milatas/イメージマート
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一見「普通の人たち」の集まりだが……
改めて、取材した既婚者合コンを振り返ってみて感じたのは、“普通の人たち”の集まりである、ということでした。あからさまにオラオラ・イケイケの男性も、ものすごく乱れた女性もいない。むしろ全体のテンションは落ち着いている。取り立ててキャラや見た目が「立って」いるわけでもない人がほとんどでした。
男女ともに服装も態度も普通で、特に女性の場合「こんな地味な人も来るんだ」というのが正直な感想。東京のど真ん中、美しい夜景を見ながらの集いです。もう少し着飾ってもいいのでは? と感じるような風貌の方すら中にはいました。
それは裏を返せば、「普通の人たちが一歩踏み出しやすい状況」を作っているのが、このような既婚者合コンであるということなのかもしれません。
ひと昔前、既婚者がセカンドパートナーを作る機会はあまりなかったのではないでしょうか。職場などでアプローチするか、盛り場で声をかけるか。かなり肝の据わったつわ者でなければ、そんなことはできなかったでしょう。
ところが既婚者合コンは、サイトで必要事項を入力して予約するだけ。実際、マッチングアプリですら抵抗のある方が、これなら安心と言って参加するケース(Bさん)もありましたし、Aさんのように積極性がまるでない方も参加しています。
これまで、刺激を得たいミドル層の中には一定数、欲望を内に秘めたままで決して行動に移さない人もいたのだと思います。既婚者合コンは確実に、その人たちの背中を後押ししています。
開始から1時間後、会場に異変が……
自分ではっちゃけられないミドル層に、はっちゃける場を提供した──とでも言いましょうか。特に男性の場合、会話の入口はどなたもソフトですが、開始1時間過ぎ(お酒が徐々に回ってきたころ)から欲望が露出し始めました。
一応、多くの既婚者合コンのサイトでは「同じ趣味を持つ友人作り」「たまの気分転換」を謳っています。それゆえ、たとえば趣味の確認なり、好きなエンターテインメントなり、最近何か面白いドラマってありますか? といった話題がもう少し出るかと思いきや、驚くほど出ません。
かなり直接的に「次、個別に会えるか」「一緒に行くならどんなお店がいいか」を最短時間で聞き出そうとする男性が多かったように思います。1テーブルあたり30分しかないので当然と言えば当然なのかもしれませんが、何か非常に「会話の順序を踏んでいない」というか、切実というか、コスパ、タイパ重視で攻める男性が目立ちました。
一方、女性参加者たちを見ていて、思い出したことがあります。
「5分でいいから子供が消えてほしい」と口にし始めた女性たち
私には、「マイルドヤンキー」という言葉を提唱した『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(幻冬舎新書)という2014年の著作があるのですが、その本のためのインタビュー調査をしていた2012〜13年ごろ、地方に住む若いママ(20〜30代)から「5分でいいから子供が消えてほしい」という切実な言葉を聞きました。
無論、本当に子供がいなくなってほしいということではありません。ある女性は3人の子持ちでしたが、たった5分でもいいから子供が消えてくれれば、ゆっくりコーヒーが飲めて、もっと子供たちを愛せるのに……ということだったのです。忙しいお母さんたちは、たった5分の自由な時間すら確保できません。そんな切実な気持ちは、他のお母さんたちからも、さまざまな言い方で表明されました。
団塊世代とジュニア世代との「大きな違い」
当時の私は正直、ぎょっとしました。子育ての大変さは無論よく理解できるのですが、そういう言葉は自分の母親世代(団塊世代)だったら──子育てを大変だと感じていたにしても──絶対に口にはしなかっただろうな、と思ったからです。きっと団塊世代の母親たちは、愚痴や不満が喉元まで出かかっても、「こんなことを考えてしまう私はすごく罪深い。こらえ性のない人間だ」と考えて、ぐっと飲み込んでいたことでしょう。
しかし2010年代初頭の時点で、それを口にするママたちが出現し始めました。そんな彼女たちのニーズを受けて広告代理店勤務だった私は、某車会社と一緒にある車を開発しました。せめて子供を連れてスーパーまで運転する間くらいは、「何買おうかなあ」とルンルンしていてくださいよ、というコンセプト。
広告も、後部座席の子供がおもちゃで遊んだり、窓の外を見て楽しそうにしている一方、運転席のママはママで楽しく運転していて、ファミリー感があるのに親子が分離されていることをアピールしたものでした。ママのパーソナルスペースが確保されている、という打ち出しは彼女たちのインサイトをうまく突き、その車は売れました。
2026年現在、彼女たちの多くは40代──本書で取り上げている団塊ジュニア世代・ポスト団塊ジュニア世代──になっています。「たった5分でもいいから子供が消えてくれれば」という“秘めたる欲望”を口に出せる世代。そんな彼女たちが、子育てが一段落してわき上がってきた別の“欲望”を満たすための手段のひとつが、既婚者合コンになっているのかもしれません。
(原田 曜平/Webオリジナル(外部転載))
