トクリュウ捜査にピンチか 「ドン・ファン事件」で評価を落とす警察キャリアが指揮官就任で内部から不平不満も
徹底抗戦の構え
警視庁暴力団対策課が、国内最大級の風俗スカウトグループ「ナチュラル」トップの木山こと小畑寛昭容疑者(40)を東京都暴力団排除条例違反で逮捕したのは1月26日のこと。その後、女性を風俗店に紹介したという職業安定法違反容疑で再逮捕し、今後も何らかの容疑で小畑容疑者の再逮捕を繰り返していく方針を固めている。警察はこの匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ=匿流)対策に血道をあげているが、捜査を担う現場からは不平不満も伝わってくるという。
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「小畑容疑者は20日現在で計4度逮捕されていますが、一度も起訴されていません。捜査当局は起訴できるか否かにかかわらず再逮捕を最低でも10回繰り返すことで小畑容疑者を揺さぶり続ける方針のようです」

と、社会部デスク。
「小畑容疑者の方は末端のメンバーがやっていた詳細を組織トップは知り得ないとのスタンスで徹底抗戦の構えを崩していません。我慢比べが続きそうな状況です」(同)
ナチュラルの実態
ここで改めて、ナチュラルの驚くべき生態について簡単に紹介しておこう。
・暴力団との共存共栄をうたいながら巨額の資金獲得活動(スカウトバック)を行っている。暴力団側には多額の現金を支払うなどの便宜を供与。法人登記はされていないが、総務課、プロ課などの部署や細則やマニュアルが多数存在し、会社組織のような体裁を取っている。小畑容疑者は会長と呼ばれている。“社員”になったメンバーには早慶MARCH出身者もおり、月に300万円ほど稼ぐ者もいる。
・徹底した警察対策を講じる秘密結社的側面を持ち、警察の取り締まりを回避すべく、数千万円かけて開発した秘匿性の高い闇アプリを用いてメンバーらは本名ではなく源氏名などでやり取りしている。
・風俗の店舗側もナチュラルなしには女性の獲得がままならない状況となっており、一説には、国内のその種の店の約20%がナチュラルと取引しているとされる。年間収益は少なくとも50億円。
・組織への裏切りや規約違反にはリンチなど厳しい罰則が科される。
警視庁副総監の存在
警視庁は4月1日から、住吉会の2次団体「幸平一家」の特別対策本部の指揮について、刑事部長から副総監に格上げして体制を強化することにした。前項で触れた「暴力団との共存共栄」における暴力団とは主として幸平一家を指す。
「新宿・歌舞伎町などを根城とする幸平一家は以前にナチュラルのスカウトを襲撃するなどしてトラブルになったことがありますが、その後に両組織は和解し、協力関係を築くことになったとされています。警視庁は対策本部を当初、1月に刑事部長をトップとして暴力団対策課に設置し、75人の専従捜査員を置きました。今回の体制強化でさらに100人が対策本部に加わったとされています」(同)
副総監は親家和仁(しんかかずひと)氏。1994年に警察庁に入庁したキャリアだ。岡山県警察の捜査2課長、和歌山県警察本部長、警察庁刑事局刑事企画課長、警視庁刑事部長などを歴任し、2026年1月に警視庁副総監に就任した。
異例の横並び会見
「昨年12月、首都圏で相次いでいた強盗事件のうちの1つの事案について男4人が警視庁などの合同捜査本部に強盗致傷容疑などで逮捕されました。その際の発表会見に、刑事部長だった親家氏に加えて警視庁と首都圏3県警の捜査1課長らが同席しました。それだけ警察が注力していることをアピールしていると評価する声があった一方、こうした会見は極めて異例で、刑事部長を離任することが決まっていた親家氏自身による手柄のアピールではないかといぶかる声もあがっていました」(同)
親家氏は副総監を務めた後に警察庁に戻って刑事局長を務めた後、警察庁長官か警視総監を目指しているとの評もある。
「親家氏に限らずポスト欲がないキャリアは少ないですから特に驚きはありませんが、親家氏についてはアピール過剰との評価も聞こえてきます。特別対策本部の指揮を自ら担うべく警視総監に必要性を訴えたのではとも言われているほどです」(同)
ドン・ファン事件の捜査指揮
親家氏はある「有名事件」の捜査を指揮したことでも知られる。
「親家氏は和歌山県警本部長時代にいわゆるドン・ファン事件の捜査指揮をとりました。ご存じの通り、2審の無罪判決を受けて検察は最高裁に上告していますが棄却される可能性が極めて高い。ここに来て親家氏の当時の捜査指揮に疑問符がついており、親家氏はそのことを気にしているという話もありますね。それはともかく、4月から体制が強化されて増員されたものの、具体的に仕事はなくコピーばかり取っている捜査員もいるという話が現場から漏れてきました。トクリュウに関しては上層部の力の入れようが半端なく、とにかく実績をあげろとの圧が強いという不平不満もあるようです」(同)
圧の強さが裏目に出ることもある。大阪でも、トクリュウ捜査を巡って問題が噴出している。一例が、大阪府警捜査4課の捜査員がナチュラルの関係先を家宅捜索中にスカウトの男らを暴行したとされる事件だ。府警は捜査員ら12人を懲戒処分とし、うち2人は免職とした。
裏切られた思い
「ナチュラルは特殊なスマホアプリを通じて組織内でやり取りをしており、捜査員らは当初のプラン通りスマホのロック解除や暗証番号を聞き出そうとして、口を割らないスカウトらを暴行してしまったということです。実は上層部はその少し前に“聞き出しより身柄拘束”に舵を切っていたのですが、その方針変更が現場には周知徹底されていなかったことがわかっています。懲戒処分を受けた捜査員の1人は“上層部に裏切られた思いだ”と心中を語っていました」(同)
トクリュウ案件が世間の一大関心事になったことで捜査当局は摘発を急ぎ、それによる弊害も生まれているということなのかもしれない。
「ナチュラルは現役捜査員を取り込んで内部情報を聞き出していたほどですから、当局内の混乱は大歓迎でしょう」(同)
幸いなことに、いささか強引な捜査について世論は寛容だ。暴力団やトクリュウに向けられる目は厳しいからである。それだけに早めの「成果」が求められるのだが、警察は期待に応えられるだろうか。
デイリー新潮編集部
