「我々もイノウエをKOするつもりで臨む」傑物・井上尚弥とどう戦う? 中谷潤人の名参謀が米メディアで語った決戦の“分かれ目”とは――

井上と中谷。日本ボクシング界屈指の偉才のバトルは世界規模で注目を集めている(C)Getty Images
激闘必至の一戦に高まる期待感
決戦の時が迫っている。来る5月2日に東京ドームで開催される世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋)と、WBA、WBC、WBO世界同級1位・中谷潤人(M.T)のマッチアップだ。
【動画】繰り出されるボディショット!井上尚弥の“音”に着目
互いに負け知らずで、“その瞬間”への期待感を創り続けてきた。昨年3月に行われた2024年の年間優秀選手表彰式において、“絶対王者”である井上が「1年後の東京ドームで日本ボクシングを盛り上げよう」と呼びかけ、これに中谷が「ぜひ、やりましょう」と呼応し、実現に向けた動きが加速。以降、両雄の戦いは常に東京ドーム決戦含みで語られるようになった。
世間の下馬評は「モンスター優位」の見方が堅い。中谷は転級初戦となった昨年12月27日セバスチャン・エルナンデス(メキシコ)戦で苦戦。辛くも判定勝ちを収めたものの、“あわや初黒星か”と感じさせたほどの内容は、少なくない不安も残るものだった。尋常ではない対応力を持つ井上とのマッチアップに向けた機運を高めるものではなかった。
とはいえ、成功する自信がなければ、異例の対戦要求に応じることもなかったはずである。実際、中谷陣営は「打倒・井上」への想いを強くしている。米ボクシング専門サイト『Boxing Scene』のインタビューに応じた名参謀のルディ・エルナンデス氏は「あれほどの相手を尊重するのは当然だが、ゴングが鳴ったら勝利以外には考えない。我々には勝利こそが全てだ」と力説している。
無論、チャレンジャー側が百戦錬磨の怪物を軽視しているわけではない。そこはエルナンデス氏が「私はイノウエを今のボクシング界で世界最高のファイターだと考えているし、我々は手強い相手と対戦することになる」と語る通りだ。
それでも、負けるわけにはいかない。いまだ前人未到のモンスターの牙城を崩す自信はある。中谷を14歳から手塩にかけてきた聡明な名伯楽は、「もちろん勝つ。始まりのあるものには、必ず終わりがある」と続けている。
「頂点に立てば、それ以上は進めない。今日はナンバーワンでも、明日は別の誰かがナンバーワンになるんだ」

井上とのメガマッチに向け、米国内で調整を続けている中谷(C)Getty Images
「ジュントの強みは、身長とリーチの長さ、そして(井上よりも)少しだけ若いこと」
中谷が珍しく打ち込まれ、苦戦を強いられたセバスチャン戦について「試合を見直して、どうすればもっと良くなるかを見極めた」と振り返ったエルナンデス氏は、井上戦で勝利を呼び込むポイントを挙げている。
「イノウエがジュントをノックアウトしたいと思っているように、我々も彼をノックアウトするつもりで臨む。彼(中谷)ほど自分自身に厳しい選手はいない。ただ、それはイノウエも同じように感じているはずだ。だから、結局のところ、どちらが一足先に戦術を実行できるかが勝負の分かれ目になると思う」
さらに「イノウエがリング上で繰り出すあらゆる動きに、ジュントが反応してくれることを期待している。タイミングがすべてだ」と対サウスポーの経験も豊富な井上が主導権を握るであろう展開も想定しているというエルナンデス氏。ただ、「ジュントの強みは、身長とリーチの長さ、そして(井上よりも)少しだけ若いこと」と強調する62歳は、「それ以外は、どっちが先にパンチを当てるか、どちらがより速いか、そしてどちらがパンチをよりうまく受け止められるか、といった点にかかっている」と分析した。
無論、簡単な試合ではない。日進月歩で進化を続けてきた中谷でさえも、これまでとは、一線を画す心身をすり減らすような展開が予想される。ましてやKO勝利を公言する井上が真っ向勝負を挑めば、押し込まれる戦いとなる可能性もある。
それでも、陣営には揺るぎない覚悟がある。エルナンデス氏は、こうも漏らしている。
「もしも、イノウエをノックアウトして倒すことができるなら、私は、その翌日に死んでも、人生に未練はない。そうなれば、自分が目指してきたこと、成し遂げたいと思っていたことが、すべて達成されたことになるからだ」
中谷とって修羅の時間となる井上戦をどう戦うか。モンスターが狙いを定めた若きチャレンジャーは、文字通り死に物狂いで勝利を狙う。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
