怒りの池上治男さん

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 北海道・砂川市の要請でヒグマを駆除したにもかかわらず猟銃の所持許可が取り消された件をめぐり、最高裁で逆転勝訴したハンターの池上治男さん(77)の猟銃を札幌地検が廃棄していたことが明らかになった。池上さんが16日までに取材に応じ、廃棄された銃が形見だったことを明かし、今の心境を語った。

 最高裁で勝訴した池上さんは押収された銃の返還を求めていたが、池上さんの代理人が検察から「適正に廃棄した」との連絡を受けたという。

 取材に対して池上さんは「とんでもないことやるなと思ったよ。証拠品でしょ? 一番重要なものだよ」と怒りをにじませた。北海道猟友会砂川支部長の池上さんは2018年に市から要請され、市職員と警察官の立ち会いのもとでヒグマを駆除。しかし北海道公安委員会は、銃弾が周辺の民家に当たる恐れのある発砲だったと判断し、銃を所持する許可を取り消した。

 池上さんは20年に、この処分の取り消しを求めて提訴。一審の札幌地裁は道側の処分は違法だったとして取り消したが、二審の高裁は銃弾が建物に届く恐れがあったとして処分は適法と判断。池上さんは高裁判決を不服として最高裁に上告し、今年3月に逆転勝訴した。

 勝訴を受け、押収されていた銃のうち1丁が返還されたが、18年の発砲時の銃が返還されず廃棄されたという。池上さんは「ハンターはみんなそれぞれに銃に思い入れがある。それを押収していた」と振り返る。押収されたうえ、廃棄された銃は猟友会の仲間で登山家の児玉保則さんの形見だったという。

 池上さんは「愛着を持っていた銃を死ぬ前に私にもらってくれと言った彼の言葉を思い出すよね」と語り始めた。闘病中の児玉さんから病室に呼ばれた池上さんは「私はもう長くないから、俺の銃をもらってくれないか」と言われ、「分かった。アンタの大事な銃を受け取って、みんなのために役に立たせる」と誓い、銃を譲り受けた。「彼の思い入れの銃を受け継ぎ、その銃で(18年の)ヒグマを撃った。要するに形見だよね。その銃で撃ったシカ肉を『お父さんが使ってた銃で取ったシカ肉だ』と言って息子さんに届けたこともあった」と思い出は尽きない。

 今後については弁護団に任せるとしており、検察は廃棄の経緯について説明が求められることになりそうだ。