(※写真はイメージです/PIXTA)

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物価高と光熱費の高騰で「年末年始が苦しい」と答えるひとり親家庭は少なくありません。特定非営利活動法人グッドネーバーズ・ジャパンが11月に行った調査「ひとり親家庭における年末年始の暮らしに関するアンケート」でも、その割合は8割にのぼります。そんな状況を象徴するように、東京都内で小4の娘を育てる朝倉奈々さん(38歳・仮名)も、手取り17万円に公的支援を加えても冬の生活費に不安を抱えています。奈々さんのケースからひとり親家庭が抱える窮状について見ていきます。

「年末年始が怖い」娘と二人で暮らすシングルマザー

「クリスマスや年末が近づくと、胸がぎゅっと苦しくなるんです」

東京都内で小4の娘を育てる朝倉奈々さん(38歳・仮名)は、仕事帰りの暗い道を歩きながらそう漏らしました。

離婚して3年。娘と2人、2DKの賃貸住宅で暮らしています。

奈々さんの収入は、正社員として働く月の手取りが約17万円。そこに児童扶養手当と児童手当が加わり、実質的な手取りは22万円ほどになります。それでも、家賃7万5,000円と光熱費、学童費、学校の諸費用を支払えば、残るお金は多くありません。養育費はもらっていません。

「夏より冬のほうが断然きついんです。電気代が上がって、食材も高くなる。学校も休みに入るので給食がないのも家計に響きます。娘が“今年もサンタさん来るかな”なんて言うと、心のどこかで『どうしよう』と焦ってしまいます」

「クリスマスはプリンでいいよ」

奈々さんは毎年、クリスマスだけは少しだけ華やかにしてあげたいと思ってきました。
しかし今年は、クリスマスケーキの予約のお知らせを見て立ち止まってしまったといいます。

物価高でクリスマスケーキの値段は去年よりも上がっている。食材もですよね。娘には、『ごめんね、今年はケーキ小さめでもいい?』と聞きました。そしたら、『ママの作るプリンでいいよ』って笑って言うんです。嬉しいけれど、胸が痛くなります」

娘はまだ10歳。ただ「ママと一緒に食べるものなら何でもいい」と信じて疑わない年頃です。

「でも、同級生はクリスマスケーキや豪華なご飯の話をするでしょう? 娘が寂しい思いをしていないかな……と、つい考えてしまいます」

物価高の冬、じわりと削られる生活

ここ数年、とくに冬場の家計が厳しくなっていると奈々さんはいいます。

「スーパーでいつもの食材をかごに入れても、レジで『えっ?』となる金額。光熱費も高くて、暖房は必要最低限にしています。娘と毛布にくるまって過ごす夜もあります」

特定非営利活動法人グッドネーバーズ・ジャパンが自団体が運営するフードバンク「グッドごはん」の利用者である低所得のひとり親家庭を対象に、年末年始の家計の見通しについて行った調査によると、「非常に苦しい」と回答した人が最も多く、「やや苦しい」と合わせた割合は8割に及びました。「季節行事の食事をあきらめる」「暖房を我慢する」といった回答も多く、奈々さんの状況は決して特別ではありません。

物価上昇により、昨年の同じ時期と比べて、現在の暮らしの中で変わったこと」について回答を得たところ、「十分な食料を買えないようになった/買えないことが増えた」と回答した人は63.4%、「貯金を切り崩して生活するようになった/切り崩すことが増えた」と回答した人は54.3%、「生活に必要な水道・電気・ガスの使用を控えるようになった/控えることが増えた」と回答した人は50.2%でした。

さらに「物価上昇を受けて、この年末年始の家庭での食事にどのような影響が出ると思うか」を質問した結果、「季節のイベント(お正月・クリスマス等)に際した食事を用意できない」「経済的に購入できる食材が限られ、栄養が偏る」を選択した人が6割を超えました(複数回答)

「娘と笑って年を越したい」

家計的に厳しい中でも奈々さんはなんとか小さなクリスマスケーキを予約しました。クリスマスプレゼントは娘が欲しがっていたシール帳とシールです。

「お友達との交換が流行っているみたいで、夏に妹と会ったときにそんな話をしたんです。そしたら、妹が可愛いシールを少しずつ集めて送ってくれて……その気持ちが本当に嬉しくて、ありがたかったです」

こうした“ささやかな準備”にさえ気を遣う毎日ですが、奈々さんが前を向ける瞬間もあります。

「娘が“ママ、おしごと頑張ってね”って言ってくれるんです。そのたびに、『よし、あと一ヶ月頑張ろう』って思えるんですよね」

クリスマスもお正月も、豪華である必要はありません。奈々さんが願うのは、ただ一つ。

「特別なものじゃなくていいんです。娘と一緒にあたたかいご飯を食べて、笑って年を越せたら……それだけで十分です」

厳しい現実の中でも、なんとか前を向いて暮らす母と娘。その姿は、「季節を楽しむ余裕すら奪われるひとり親家庭が増えている」現実を静かに映し出していました。

[参考資料]
認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパン「ひとり親家庭における年末年始の暮らしに関するアンケート