秘密のバーがある佐賀の酒蔵 焼酎が有名な九州で愛される日本酒と楽しむ晩酌

酒の造り手だって、そりゃ酒を飲む。誰よりもその酒のことを知り、我が子のように愛する醸造のプロ「杜氏」は、一体どのように呑んでいるのか?今回は佐賀県小城(おぎ)市にある『天山酒造』を訪ねた。杜氏の後藤潤さんは、酒造りに魅せられた。会社を辞め、佐賀の地へ。伝統を守りつつも新たな味に挑戦し続ける杜氏のくつろぎの時間とは?
2004年、『天山酒造』の杜氏に就任
【後藤潤氏】

1966年、福岡県生まれ。工業大学卒業後、計測・制御機器の大手企業に入社。1995年、酒造りを志し、天山酒造に転職。初の社員の蔵人となる。2004年、杜氏に就任。趣味は筋トレ。
燗酒を飲って、〆は粕取り焼酎
「料理に合わせて、タイプの異なる酒を同時に酌む」と杜氏は言った。
「天山」や「七田」を醸す天山酒造の杜氏・後藤潤さんだ。蔵内にある秘密のバーで、蔵元の七田謙介さんと一杯を楽しむ。

酒といえば焼酎が優勢の九州にあって、佐賀には日本酒を好む県民性がある。九州の料理は、甘みの強い醤油に象徴されるように、味付けが全般的に甘い。佐賀の日本酒も甘めのものが多いが、同じ県内でも海側と山側とで傾向に違いが見られると後藤さんは話す。
それぞれの料理に合わせてタイプの異なる酒を楽しむ
「軟水の海側のエリアでは、料理に甘口の酒を合わせて甘みを増幅させた美味しさが好まれます。一方、当蔵がある小城市など中硬水が湧く山側では辛口の酒を合わせて、酒で料理の甘さを切って口をすっきりさせる傾向があります」
「天山」は辛口の酒。とはいえ、さらりとした飲み心地の淡麗辛口ではなく、コクや余韻もしっかりとある濃醇辛口タイプが伝統的に造られてきた。その真骨頂が後藤さんの定番晩酌酒でもある本醸造の「超辛口天山」だ。熱燗につけて、甘めのダシ汁をはった揚げ出し豆腐と合わせる。ダシの旨みがパッとふくらみ、スッとキレるから、いくらでも飲めそうだ。

大好物である佐賀産地鶏・みつせ鶏に合わせたのは、現代の食生活にマッチする酒として2001年から造る「七田」。最もスタンダードな純米を常温で酌む。
「鶏の脂、肉の旨みには酸がしっかりある酒がよく合う。味付けは塩胡椒だけですが、酒と一緒になると味が驚くほど広がります」
大の酒好きの後藤さんの晩酌は、週2回ほどと意外に少ない。5年前に始めた筋トレが習慣となり、筋トレの日は筋肉の成長を優先して飲酒を控えるからだ。お気に入りの筋トレメニューはハンギングワイパー(ぜひ検索してどんな動きかご確認を)。蔵元曰く、現在の後藤さんは「見違えるほど引き締まった」らしい。

〆には吟醸粕を再発酵させ蒸留する粕取り焼酎「七田」を羊羹と共に味わう。ブドウの搾りかすで造るイタリアの蒸留酒・グラッパのように、食後酒として格好だと言う。杜氏の晩酌は、お待ちかねのチートデイでもあった。
1861年創業、主力商品は「天山」「七田」
1861年水車業で創業。1875年に酒造業を開始。2009年に七田謙介氏が代表就任後、スパークリング日本酒など新たな酒造りに積極的に挑戦している。代表銘柄は「天山」「七田」など。焼酎やリキュールも製造する。
【超辛口天山】

【七田純米】

【七田吟醸酒粕焼酎】


撮影/松村隆史、取材/渡辺高
※月刊情報誌『おとなの週末』2025年8月号発売時点の情報です。
※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。
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