「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は「旅」。春の陽気に誘われて、旅に出たくなる季節です。



「旅」という字は、ふたつの文字から成り立っています。

向かって左側の部分は、「方向」の「方」。古い字体ではそこに「人」という文字を添えて、吹き流しをつけた旗竿を意味しています。

この旗には、一族の神さまや祖先の霊が宿っていると考えられていました。

一方、右側の部分は古い字体を見ると「人」という漢字をふたつ並べた形。

これは「人」が複数いる様子を表します。

これらをあわせた「旅」という字は、祖先の霊が宿る旗を掲げて、多くの人が出て行くことを意味するのです。

いにしえの人々にとっての「旅」とは、災いから身を守ってくれる祖先の霊とともに、戦地へ赴くことだったのです。

大空へ飛び立つ鳥、草原を横切ってゆく動物、海岸に打ち寄せられた木の実、風に運ばれてゆく小さな種。

その様子を見た私たち「ヒト」の祖先は、自分たちもまた、見知らぬ土地を目指してみようと思い立ちます。

食べものや水、あたたかな光、美しい花のある場所へ……。

およそ二十万年前にアフリカ大陸で誕生したといわれる人類は、長い長い年月をかけて、世界中へと散らばっていったのです。

その偉大な勇気、高い志、果てしない好奇心。

旅への憧れは、命の可能性を信じようとする気持ち。

その遺伝子を受け継いでいる私たちは、ここではないどこかを夢みてしまうのです。

ではここで、もう一度「旅」という字を感じてみてください。

日本語の「旅」の語源は諸説ありますが、「他の日々」を過ごすから「他日(たび)」、また、「他の土地や家の火で調理したもの」を食べるので、「他の火」で「他火(たび)」ともいわれています。

いにしえの旅における移動や食事の確保は、さぞや大変なことだったでしょう。

ちなみに、英語の「TRAVEL」の語源も諸説ありますが、「苦しみ」「困難」「陣痛」といった意味をもつ、「TRAVAIL(トラベイル)」とも言われています。

それでも人は、それぞれの理由で旅に出るのです。

常識や固定観念を捨て去り、自分自身を生きるため。

目には見えない、大きな力に抱かれるため。

心の中にいつも居てくれる、大切な人の存在に気づくため。

旅の途中で遭遇する予想外の出来事や不自由さのその先に、思わぬ幸福や気づきがきっと待っています。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。

その想いを受けとって、感じてみたら……、

ほら、今日一日が違って見えるはず。

*参考文献

『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)

4月1日の放送では「宵」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。

<番組概要>

番組名:「感じて、漢字の世界」

放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット

放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜7:20〜7:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)

パーソナリティ:山根基世

番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/



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聴取期限 2017年4月2日 AM 4:59 まで

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