大阪府が今年から実施に踏み切った拡充・私立高校授業料支援制度で、高校関係者が大ピンチに見舞われている。
 私学へのハードルが低くなり、自由に進路が選べるようになった結果、公立高校の定員割れが続出しているからだ。
 「なにしろ公立普通科の4割が定員割れ。ある程度は予想していましたが、この数字は今の試験制度になってから最低です。授業料が高くて私立への進学を諦めていた家庭の子供が、みんな目指すようになりましたからね」(大阪府教育委員会)

 支援制度の拡充による私立授業料“実質無償化”の制度は、橋下徹大阪府知事の「経済的事情にかかわらず、自由に進路を選べるように」という意向に沿って、今年から実施された。
 年収610万円未満の家庭の子供が私立に進学する場合、授業料はゼロ。610万〜800万円未満の家庭でも、保護者負担は年10万円に抑えられるというもので、橋下府政の目玉政策の一つである。中学生の進路が広がったという点では、まさに橋下知事の狙いどおりになったが、予想外の事態も生み出そうとしている。それが、公立高校間の格差拡大だ。

 ある新設高の教員はこう語る。
 「公立が不人気で私立に生徒が流れるといっても、名門校は新制度に関係なく人気がある。問題は中位下位の学校です。本来、公立に行くはずの生徒たちが私学に流れるようになれば、公立の上位校にはさらに優秀な生徒が集まり、荒れる学校はますます荒れる、ということになるでしょう。最悪、存続が危うくなる学校も出てきますよ」

 ただし、「それこそ橋下知事の本当の狙い」という見方もある。
 「知事が本当にやりたいのは、公立高校の統廃合。そうすれば、無能な教職員をリストラし、税金の負担も減らせる。そのために公立を私立との競争に追い立てているんです」(府政記者)

 競争原理がすべてというのは橋下流の真骨頂。その力の論理は大阪の公教育に、今後どんな影響を及ぼすのだろうか?


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