中野相続手続センターの代表司法書士・鈴木敏弘さん

弁護士、税理士、司法書士などの専門家のなかで、相続においては誰にどのタイミングで頼ればよいのでしょうか。これまで都内を中心に相続・遺言手続きに特化して実務に携わってきた「中野相続手続センター(東京都中野区)」の代表司法書士・鈴木敏弘さんに、司法書士に手続きを依頼するメリットや、後悔しない専門家選びのコツを伺いました。

相続の専門家探しは「診療科選び」と同じ

――身内が亡くなり、いざ相続となったとき、弁護士や税理士など専門家にはさまざまな選択肢があります。ご遺族はまず、誰に相談すればよいのでしょうか。

初めての相続で何から手をつけていいか分からない場合、最初に相談する相手としては「司法書士」が一番関わりやすいのではないかと考えています。

“相続”というと親族間で激しくもめるケースを想像しがちですが、実は弁護士が必要になるほどの紛争は、全体の1割にも満たない印象です。また、税理士の出番となる相続税の申告が必要なケースも、同じく1割程度にとどまります。

一方で、相続財産に不動産が含まれるケースは全体の半分ほどを占めます。不動産の名義変更(相続登記)の専門家であり、かつ幅広い手続きの窓口となれる司法書士は、ご遺族にとって最も身近で相談しやすい存在だと言えます。

――依頼する司法書士などを探す際、気をつけるべきポイントはありますか。

同じ士業であっても、「相続に特化している事務所」を選ぶことが重要です。病院の診療科に内科や外科があるように、法律の専門家にも得意分野があります。例えば司法書士なら、普段は不動産の売買に伴う登記手続きをメインにしていて、相続はあまり扱っていないという事務所もたくさんあります。

まずはインターネットなどで、相続手続きを専門にしている事務所を検索していただくのが一番の近道だと思います。そこからもし税務申告が必要になれば提携する税理士を、万が一紛争になれば弁護士を……というように、司法書士を起点にして専門家のネットワークを活用することも可能です。

立ちはだかる「平日昼間」の壁と、読めない古い戸籍

――ご自身で相続手続きを進めようとして、途中で「想像以上に大変だ」と疲弊してしまう方も多いと聞きます。特につまずきやすいのは、どのような場面でしょうか。

お客様からよく聞くのは、「役所や金融機関の対応の大変さ」です。手続きには役所や法務局、銀行の窓口に出向かなければならず、基本的にどこも平日昼間しか対応していません。働きながら何度も平日に休みを取るのは、精神的にも時間的にも大きな負担になります。

また、難関となりやすいのが「戸籍集め」です。相続手続きでは、原則として亡くなった方の出生からご逝去まで、途切れのないすべての戸籍が必要になります。相談者のご遺族の方からは「亡くなった時点の親の戸籍と、自分(子ども)の戸籍だけあれば大丈夫だろう」と誤解されている方も少なくありません。

直近の戸籍は制度の変更で取得しやすくなりましたが、遡っていくと昭和初期や明治・大正時代の手書きの戸籍にたどり着くことも珍しくありません。昔の戸籍は旧字や難しい漢数字(大字)で書かれているため、一般の方が読み解くのは本当に大変です。自分で何通か取ってみたものの、解読できずに途中でストップしてしまい、ご相談に来られる方もいらっしゃいます。

――ほかにも、手続きを進める上で注意すべきルールなどはありますか。

一部の手続きには「期限」がある、という点はしっかり意識していただきたいですね。

例えば、借金などマイナスの財産が多く、相続したくない場合の「相続放棄」は、原則として相続開始を知った時から3カ月以内に行う必要があります。また、亡くなった方の確定申告を引き継ぐ「準確定申告」は相続の開始を知った日の翌日から4カ月以内、「相続税申告」は10カ月以内と決められています。

悲しみのなか、ご葬儀や四十九日の法要などの手配に追われているうちに、あっという間に期限が迫ってきます。ギリギリになって「税理士に頼めばすぐ終わるだろう」と思っても、財産の調査や評価には数カ月かかることも。まずは、「わが家はどんな相続手続きをしなければいけないのか」という全体像をイメージするためにも、四十九日が過ぎた頃の落ち着いたタイミングで、一度専門家の無料相談を利用してみることをおすすめします。

「地方の実家の相続」での専門家選びの正解

――都市部の実務に関わるなかで、不動産相続において都市部ならではの特徴や「よくあるお悩み」はありますか。

都内の場合、不動産の評価額が高くなりやすく、不動産を所有しているだけで相続税の基礎控除額をあっさりと上回ってしまうケースが多く見られます。

そのような場合、「誰にどう分けるか」という視点が重要になってきます。

例えば、お父様が亡くなった際(一次相続)に、お母様が財産をすべて相続すると、税額は抑えられるものの、将来お母様が亡くなった「二次相続」の際に、子どもたちに多額の相続税が発生してしまう可能性があります。そのため、ケースによっては配偶者の取得割合を抑え、子どもたちにも一定割合を分けるといった調整が検討されることもあります。
また、「不動産の評価額は高いけれど、手元には預金があまりない」というケースも少なくありません。相続税は原則として現金での一括納付になるため、納税資金をどう確保するかが課題になることもあります。

――地方に実家があり、親元を離れた子どもたちは全員都市部に住んでいるケースも増えています。その場合、実家近くの専門家に頼むべきか、自分の住まい近くの専門家に頼むべきか、どちらがよいのでしょうか。

基本的には、ご自身が今お住まいの場所から通いやすい司法書士にご相談いただいて全く問題ありません。ご遺族としてさまざまな対応に追われてご心労も重なる時期に、わざわざ遠方にある地元の専門家に相談しに行くのは大変ですよね。

今は戸籍の収集から不動産の名義変更、銀行の預金手続きまで、多くの手続きは郵送で完結させることができます。実際に当センターでも、ご依頼者が都内にお住まいで、地方にあるご実家の相続手続きをお任せいただくことも多いです。通常は遠方だからといって費用が大きく変わることもありません。

ただ、「誰も住まなくなった実家を売却(処分)したい」という場合だけは、その地域の事情に詳しい現地の不動産業者に依頼するメリットがあります。その場合でも、各種手続きの窓口はご自宅近くの司法書士に任せていただき、その司法書士から現地の不動産業者へ連携してもらう、という進め方が負担も少なくスムーズです。

――最後に、相続手続きに不安を抱えるご遺族に向けて、アドバイスをお願いします。

煩雑な手続きを専門家に依頼する最大のメリットは、ご遺族が「安心できる」「気が楽になる」という精神的な負担の軽減に尽きます。「第三者である専門家が間に入り、公平に進めてくれている」という納得感にもつながります。

初めて相続手続きを経験される方も多いと思いますし、士業に対して「硬い」「怖い」というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。「なるべく分かりやすい言葉で丁寧に説明してくれるか」という視点で、ご自身が安心してお任せできる専門家を見つけていただければと思います。

また、かつては費用体系が分かりにくいケースもありましたが、手続きをパッケージ化して料金を明確に示す事務所も増えています。そういった点も、専門家選びの判断材料になるでしょう。

最近では、ご自身が元気なうちに遺言書を作成したり、おひとりさまが死後事務委任契約を結んだりと、生前からの対策に動かれる方も増えてきました。残されたご家族の負担を減らし、大切な相続を「争族」にしないためにも、気軽に司法書士を頼っていただければうれしいです。

中野相続手続センター

東京国際司法書士事務所が運営。東京都中野区に事務所を構え、東京エリアを中心に相続・遺言手続きに特化したサポートを展開。累計1万件以上の相談実績を持つ。不動産登記まで一貫して代行する「相続手続きおまかせパック」など、明朗会計でのワンストップ対応を強みとしている。

(記事は2026年6月1日時点の情報に基づいています)