ミセス、M!LK、CUTIE STREET…GWライブで露わになった、ファンが求める「神運営」の条件
ゴールデンウィークはエンタメ業界のかき入れ時。大型イベント開催だけでなく、サブスクの動きも大きく、SNSの再生回数も伸びるため、どのジャンルでも活発な動きが見られた。
そんななかで相次いで起きたのが、「ミセス、音漏れ鑑賞禁止令」と「大型フェス強風中止で落胆と歓喜」という2つのニュースだ。ミセスの運営サイドは音漏れ目的の来場や終演後の滞留に対して注意喚起を発信したが、これは賛否を呼ぶ結果となった。一方、M!LKやCUTIE STREET、ILLITらはフェス中止というアクシデントを即座に「緊急生配信」へと転化し、コアなファンにとどまらずライト層の心も掴む「神対応」として高く評価された。
どちらも一見すれば個別のトラブルや偶発的な出来事に映るが、その本質は「アーティストとファンの距離感」「ビジネスとファンサービスのバランス」という、音楽業界が長年抱えてきた問題の表出にほかならない。
今後、アーティストと運営はいかにしてファンと向き合っていくべきなのか。後編では、その展望を具体的に掘り下げていく。
前編記事『ミセス「音漏れ問題」、M!LK・キュースト「緊急生配信」…GWライブをめぐる2大ニュースから見えてきたもの』より続く。
芽生えはじめたファンと運営の絆
音漏れや滞留への対応も、アクシデント時のリカバリーも、真っ先に求められているのは「ファンファーストの姿勢を見せること」だろう。そのためには、問題のある一部の人々には毅然とした態度で接し、落胆のみで終わらせず歓喜に変える工夫が運営サイドに求められている。
また、人気のあるアーティストほど、それらをファンだけでなく世間に向けて開示しておく姿勢が求められているのも間違いないところ。少なくとも現在のミセスはコアなファン層に向けたビジネスのスタンスでは納得されない影響力があるため、運営サイドの立ち回りが注目を集めてしまう。
ファンたちが推しのアーティストに向ける目線は限りなく温かい一方で、運営サイドに向けられる目線はシビア。「どうしたらファンが喜ぶか」を考えて動いていることが伝われば「神運営」と称賛されるし、そうでなければ「運営ガチャがハズれた」などと酷評されてしまう。
なかでも現在、運営の評価を最も左右するものとなっているのが、SNSの内容や頻度と、イベントでのきめ細やかなフォローの2点。スターダストやKAWAII LAB.などがそれらの点で「神運営」と言われる機会が目立ち、“アーティストとファン”だけでなく“ファンと運営サイド”の絆を深めていくようなムードが感じられる。
しかし、アーティストの運営サイドに話を聞くと、「運営とファンの絆なんて話はそんなに簡単ではない」「運営とファンの距離が近づきすぎるのもよくない」という厳しい言葉が返ってきた。
特にアイドルやアイドル性の高いアーティストは「ファンの要求が徐々に高くなっていくことへの不安がある」という。実際、SNSやイベント会場で運営サイドにアーティストのセットリストに関する要望を出したり、演出に苦言を呈したりなどの人もいる。さらに「もっとたくさん姿を見たい」「もっと休ませろ」という矛盾を突きつけられるなど、運営サイドの精神的な負担が増していると言っていいかもしれない。
「アイドルのコール」は賛否真っ二つ
あるアイドルのマネージャーは「ライブのコール1つ取っても、コアなファンの中にも肯定派と否定派がいて対応が難しい」と悩んでいた。
「コールで肝心の歌声が聞こえない」「コールに熱心でステージをあまり見ていないのはどうなのか」「新規客のライブ参加を阻害している」などの批判がある一方で、「コールを行う人々は心から楽しみ、彼らはコア層の中核を担う」という現実もある。
そのマネージャーは「SNSでこちらからみんなができるコールを提案しても限界がある」「もう“コールありライブ”と“コールなしライブ”に分けるしかないかもしれない」とも言っていたが、肯定派の中にはそれらの対応でも納得しない人も多いのではないか。今後は肯定派と否定派それぞれに対するきめ細やかなフォローも運営サイドに求められていくのだろう。
いずれにしても「アーティストとファンの間に立って距離感を調整する」という意味で運営サイドの役割が重要になっていることは確かだ。彼らの動きがよければ適正な距離が保たれ、動きが悪ければ距離は離れていく。最近はそれを理解しているファンが増えていて、「一番の推しは運営」というニュアンスのコメントも見かけるようになった。
ファンにとっては「気持ちよくお金を払って推させてくれる」という状態を作ることが大切であり、かつてのように「運営サイドがヒールになってお金を使ってもらおう」という考え方で理解を得ることが難しくなっている。
「ファンファースト」を掲げてファンを喜ばせ、健全なファンを守りながら、適度に「ビジネスセカンド」で稼ぐところを示し、そこで得られたものを次の展開に使う姿勢を見せていく。冒頭にあげた2つのニュースからは、これらをアーティスト本人ではなく運営サイドからも明確に伝えていく必要性を痛感させられた。
・・・・・・
【もっと読む】「イイじゃん」「爆裂」「滅」だけじゃない…なぜ「M!LK」はテレビに出まくっているのか?業界人が知る「本当の評判」
【もっと読む】「イイじゃん」「爆裂」「滅」だけじゃない…なぜ「M!LK」はテレビに出まくっているのか?業界人が知る「本当の評判」
