マーケティング&コンサルテーションの富士キメラ総研は、規則改正やウェルビーイングの推進による需要拡大、次世代技術/AI活用によって高度化するヘルスケア関連のシステム/サービスおよび機器の国内市場を調査した。その結果を「ウェアラブル/ヘルスケアビジネス総調査 2026」にまとめた。トピックスとして、2030年予測(2024年比)では、エイジテック関連の需要が増加。また、AI機能の実装が市場拡大を後押しするとみられる国内ヘルスケア関連市場が1兆1416億円(40.5%増)に達する見通しだ。作業者安全管理サービスでは、職場での熱中症対策義務化で急伸長。ファン付き作業着、ウェアラブル冷温デバイスも好調なことから、107億円(2.5倍)に達すると予測する。

この調査では、ヘルスケア関連の主要なシステム/サービス17品目、機器22品目の市場の現状を分析し、今後を予想した。また、育児や保育の支援、女性特有の健康課題解決、介護者や高齢者のサポート、運動能力の向上、睡眠の改善、脳の解析と活性化を実現するシステム/サービスや製品の市場(ヘルステック市場)についても明らかにした。

国内ヘルスケア関連市場のシステム/サービス、機器別におけるシステム/サービスは、個人や企業の健康管理に対する意識向上、政府の健康寿命延伸政策に基づく新たなシステム/サービスの開発や利用増加によって拡大している。機器は、2025年の労働安全衛生規則改正に伴う特需によって作業者安全管理サービスやファン付き作業着、ウェアラブル冷温デバイスが好調である。


今後は、高齢者の増加に伴いエイジテック関連の需要が増加すると予想される。特に市場規模が最も大きい高齢者見守りサービスは堅調に伸長し市場をけん引する。また、ヘルスケアビッグデータを提供する次世代医療基盤法関連プラットフォームサービスやPHR(Personal Health Record)関連プラットフォームサービスは2030年に向け高伸長が期待される。システム/サービスおよび機器は、今後さらにAI機能の実装が進展し、健康に関するデータ管理/分析の高度化、利便性が向上すると予想される。

健康管理/増進、医療関連、介護関連、汎用ウェアラブルのいずれの市場も2025年から2030年にかけて年平均5〜6%台の成長率で推移するとみられる。最も規模が大きいのは介護関連市場であり、「見守り」「 サポート」「 五感拡張」に関連する需要が継続的に増加していくと予想される。


ヘルステックの国内市場は、ウェルビーイングを実現する注目ヘルステック6市場のうち、最も規模が大きいのがエイジテック市場である。ここでは65歳以上の高齢者の自立支援や介護者の負担軽減を目的に開発/提供された、個人向け、あるいは介護施設や医療機関向けのシステム/サービスや製品を対象とした。AIの高度化によって多様で複雑な情報解析が可能となったことで、情報を取得するエッジデバイスや解析データを活用したサービスが増加している。

市場は堅調に拡大しているものの、高齢者宅では通信インフラの整備が大きな課題であり、参入企業ではシステム/サービスや製品にセルラー通信モジュールを搭載して課題解決を図っているところもある。また、電気通信事業者と連携して通信インフラをセットで提供するケースも増えている。

システム/サービスや製品に対する高齢者の抵抗感や介護施設などの予算制約などもあり急速な拡大は期待しにくいが、補助金交付やサポートする家族・介護士の認知向上が進んでいることから、今後も市場は堅調に拡大するとみられる。


作業者安全管理サービスは、スマートウォッチやスマートバンド、スマートウェアなどのウェアラブル端末を活用し、バイタルデータや位置情報を取得することで作業者の健康状態を見守り、安全管理を行うサービスを対象とした。

労働契約法第5条における使用者の安全配慮義務(使用者が従業員の生命・身体・精神の安全を守る法的義務)やBCP(事業継続計画)対策として、近年大手企業を中心に導入が増加している。2024年は参入企業の増加によるサービス認知の向上も相まって、市場は堅調に拡大した。2025年は6月の労働安全衛生規則改正により職場での熱中症対策が義務化されたことで特需が発生した。また、国土交通省のNETIS(New Technology Information System:新しい工法・材料・機器といった技術を共有・提供するデータベースシステム)に選定されている製品の需要が増加したほか、IT導入補助金も追い風となり、市場は急拡大した。

サービスの導入は、暑熱作業者を多く抱える建設業が先行したが、労働安全衛生規則の改正により製造業や運送業などでも需要が急増しているため、当面市場の拡大は続くと予想される。中小企業では改正時にスマートウォッチのみの簡易な導入にとどまるところが多かったが、今後は管理システムを含めたリプレースが期待される。

職場での熱中症対策の義務化は、外気を取り込んで汗を気化させ気化熱で体温を下げるファン付き作業着や、電流の流す方向を切り替えることで装着する首周辺を冷却・加温できるウェアラブル冷温デバイスの市場にも特需をもたらした。ファン付き作業着の市場は2025年に前年比71.8%増となり、2030年には475億円が予測される。また、ウェアラブル冷温デバイスの市場は2025年に同12.5%増となり、2030年には122億円が予測される。


集音器は、補聴器が耳に装着し音声を増幅する管理医療機器であるのに対し、集音器は耳に装着し周囲の音を一律に大きくする音響機器である。また、音楽鑑賞を主目的とした音質補正機能を有する両耳独立型の音響機器(ヒアラブルデバイス)は対象外とした。

補聴器のようなフィッティングを必要せず手軽に利用できる反面、個人別の調整をしにくいことなどもあり利用率は低かった。しかし、近年はBluetoothの高性能化による音質向上や低遅延化、充電式への対応、ノイズ調整といったヒアラブルデバイスの技術を活用したセルフフィッティング機能搭載製品が相次いで発売され、市場が拡大している。

管理医療機器である補聴器は第三者認証機関による認証が必要であるが、音響機器である集音器はその必要がないこともあり、2025年には大手オーディオメーカーが参入し、注目度が高まっている。また、ヒアラブルデバイスの利用者増加によって、耳に機器を装着することへの心理的ハードルが低下しており、音質のカスタマイズもしやすくなっているため、軽度難聴者の新規需要を掘り起こすとみられる。現在およそ350万人が活用しているが、そのリプレース需要も期待される。ただし、ヒアラブルデバイスでもセルフフィッティング機能の搭載が進むとみられることから、市場は拡大するが、競合により緩やかな拡大にとどまると予想される。

2025年の補聴器およびヒアラブルデバイスの市場は566億円、564億円と、集音器市場のおよそ10倍の規模である。補聴器はAIやセンサーを搭載した製品や低価格製品、聴力検査なしで購入可能なOTC補聴器なども発売され、聴力補助に加えて健康管理向けにも活用が広がっている。助成金を出す自治体の増加も市場拡大につながっている。ヒアラブルデバイスは耳に装着して心拍数が測定できることから、健康管理にも活用されている。2024年、2025年は耳穴を塞がず周辺音も把握可能なオープンイヤー型の製品が流行し市場をけん引した。

[調査方法]富士キメラ総研専門調査員によるヒアリングおよび関連文献、データベース活用による調査・分析
[調査期間]2025年11月〜2026年2月
[小売価格]
書籍版:19万8000円
書籍/PDF版セット:23万1000円
ネットワークパッケージ版:39万6000円
(すべて税込)

富士キメラ総研=https://www.fcr.co.jp