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人型ロボットが進化を続けています。GMOインターネットグループの「ひとみん」は、中国で行われる人型ロボットの運動会で優勝を狙います。開発チームには、解決したい社会の課題もありました。「ひとみん」が走行フォームを学ぶ1か月に密着しました。

■製造・物流の現場で実証実験も

4月2日、神奈川・川崎市。ロボットが廊下を進んでいきます。ユニフォームを着て向かったのは、記者会見です。

ひとみん
「GMOロボッツのひとみんです」

“人”型ロボットということで、「ひとみん」と呼ばれています。キレのあるダンスも披露できます。ひとみんが所属するGMOインターネットグループは、人型ロボットをイベントで活用するほか、製造業や物流業などの現場でも実証実験を進めています。

■世界中から500体以上が運動会に

今回挑戦するのが、中国で行われる人型ロボットの運動会です。去年8月に北京で開催された第1回大会には、陸上やサッカーなど全26種目に、世界中から500体以上のロボットが集まりました。

今年8月に予定されている第2回大会で、GMOのひとみんの開発チームは1500m走での優勝を目指しています。

■箱根駅伝で活躍した選手も入部

GMOの陸上部は、今年元日のニューイヤー駅伝で初優勝。箱根駅伝で活躍した青山学院大学の黒田朝日選手も陸上部に入部し、ひとみんの開発に協力します。

黒田朝日選手
「ヒューマノイド(人型ロボット)、これからどんどん進化して、走りが速くなったりだとか技術力の向上が見込まれているのかなと」

大会優勝を目指し、ひとみんが走行フォームを学ぶ1か月に密着しました。

■チームリーダー「中国が先を行く」

チームが本格的に動き出したのは今年3月。GMOの開発チームリーダーに抜擢されたのは滝沢照太さん。学生時代にロボットを動かすソフトウェア技術を学びました。

滝沢さんが、ある機体を見せてくれました。

「中国のユニツリーというメーカーのロボットになります。この機体自体は、買ってきて箱から出しただけではただのラジオコントロールなので、何かをやらせようと思ったら開発者が横について、何か開発をしてやらなければいけない」

国を挙げて人型ロボットの開発を進める中国。性能がよく圧倒的に低価格なものを生産し、世界を驚かせています。ひとみんも中国製です。「中国が(人型ロボットでは)世界の中でも先を行っている感覚は持っています」と滝沢さん。

■走行プログラムを学習させて勝負

開発チームはひとみんに、走行プログラムを学習させて勝負に挑みます。

滝沢さん
「特定のユースケース(活用場所)に特化してハードウェア・ソフトウェアを仕上げていくのでは、我々日本はじめ他の世界各国、中国に引けをとっていないかなと。十分勝機はあるのではないかな、というふうにみています」

大会に向けての開発は手探りです。

■安定した美しいフォーム…動きを解析

まずは、ひとみんに元々搭載されていた走行プログラムを試します。3月10日に確認すると、ゆっくりで、人が簡単についていけます。まっすぐ走るのも難しく、早歩きの延長のよう。

約3週間後にお披露目の舞台が控えています。走りはどう変わっていくのでしょうか。

求めたのは、安定した美しいフォームです。「トップアスリートのフォームを学習すれば、ひとみんは速く走ることができるのではないか」という仮説のもと、開発チームは東京・品川区にある陸上部の練習場所へ向かいました。

今回データを計測したのは、今年のニューイヤー駅伝の優勝に貢献した嶋津雄大選手と今江勇人選手の2人。選手たちもひとみんに興味津々です。

ひとみんのフォームの悪い点について嶋津選手は「腰が落ちているので重心が…。足だけで走っていますね。腰からいけないので違和感。ここ(腰)が固定されているので体幹はしっかりしている」と分析しました。

選手たちにセンサーの付いたスーツを着て走ってもらい、動きを解析します。

滝沢さん
「今回お手本となるきれいなデータが手に入ったので、これを使って学習すれば今よりはいい走りができるようになる。ここからが本番です」

■シミュレーションで走り方を学習

データをもらった開発チームは、ひとみんに選手の走りを学習させていました。シミュレーションでひとみんは、直線やカーブなど様々なパターンの選手の走り方を覚えていきました。

滝沢さんは、あることが気になりました。「減速しながら止まる動きがとても人間らしい動きになっている。少し本質からはそれてしまうんですけど、こういった動きをロボットがしてくれるのはとてもおもしろい」

■ひとみんの動きはどう変化?

3月30日。選手の動きを学習した走行プログラムを入れたひとみんを実際に走らせます。

「きょうどうなるかわからない。いきなり転倒して暴れ出す可能性があります。(前回走ったものと中身は)別物です。今回から仕組みすら全く変わっています」という声が上がります。

ひとみんは、どう変わったのでしょうか。

走り出してみると、動きは選手のようにダイナミックになっています。「走り始め、嶋津選手の腕が伸びているモーションが入っていますね」と滝沢さんは話します。

■人間らしい動きは大きな負荷に

ただ、安定感はなくなりました。一旦止めて、様子を確認。「モーターの負荷がだいぶヤバい気がします。なんかいいにおいがする」と声が上がります。

人間とは構造の異なるひとみんの体にとって、人間らしい動きは大きな負荷となっていました。しかし、開発チームは手応えを感じていました。

滝沢さん
「選手のフォームはかなりマネできているかなと思います。結果はよくないにしても学習がうまくいっているとわかったのは大きいですね」

■走りが安定するようアップデート

走行テストから3日後の4月2日。ついに、お披露目の日を迎えました。ひとみんは、うまく走ることができるのでしょうか。

会見前にもう一度テストします。開発チームは、走りがより安定するようにプログラムをアップデートしていました。「いきます」。動き出すと一気に加速! カメラマンも置いていかれるほどです。「速い、速い」と驚きの声が上がります。

選手の動きそのままではなく、ロボットの動きに適した形に修正したことで、ひとみんは安定した速い走りを手に入れました。そして、ひとみんは報道陣の前に姿を見せました。

ひとみん
「毎日失敗と改善を繰り返しています。ですが、疲労という機能はまだ搭載されていないので元気いっぱいです」

■「社会実装に向けた大きい一歩」

今回はひとみんに適した動きで速く走ることができましたが、今後もフォームを学習し、選手に近づけていくということです。

滝沢さん
「“速く走る”という動きはとても難しい。そういった難しい動きを実現することができれば、ヒューマノイドロボットの社会実装に向けた、我々の中ではかなり大きい一歩になるのではないかなと」

ロボット運動会を通じて目指すことがあります。滝沢さんは「社会的な労働力不足等の課題に対応していくためには、この技術を発展させていかないといけないと考えています」と語ります。

中国での大会まで約4か月。ひとみんは今後もアップデートを続けます。

(2026年4月13日『news every.』より)