防衛大学校の公式ホームページより

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4月1日付で防衛大学校の11代目校長に、前統合幕僚長の吉田圭秀氏が就任する。自衛官出身者の校長は過去にも第2代校長の大森寛氏がいたが、大森氏は内務官僚出身で、戦後自衛隊(警察予備隊)にヘッドハンティングされて、陸上自衛隊のトップ、陸上幕僚長を務め、退官後、防衛大学校の校長に就任されたものである。

今回の吉田氏の場合は、生粋の軍人(自衛官)で、しかも陸・海・空自衛隊を統合する、統合幕僚長という全自衛官のトップのトップを務められた方。さらに、昨年退官されたばかりの、ほやほやである。

我が国で、卒業生が校長になれないのは、防衛大学校と少年院だけだといわれて久しい。吉田氏は防衛大学校の卒業生ではなく東京大学の卒業生だが、自衛官出身者が校長に就任することは非常に意義がある。

国民は防衛大学校にもっと関心を持つべき

我が国に一朝事ある時は、国民の生命に直接かかわる働きをする組織が自衛隊である。陸上、海上、航空の各自衛隊として組織され、それぞれの持ち場を守ることを基本に活動している。

各自衛隊のトップは幕僚長だが、防衛大学校卒業生が初めて幕僚長に就任したのは平成元年(1989)。以来、現在までに陸・海・空それぞれ19人の幕僚長が就任しており、合計57名いる(統合幕僚長は各幕僚長を経て就任する)。

この57名のうち、防衛大学校卒業生以外は吉田氏のみ。実に98%以上が防衛大学校卒業生である。幕僚長に続く、主要幹部に占める防衛大学校卒業生の割合は極めて高い。8~9割程度だろうか。

自衛隊は約25万人の組織。中心的、指導的な人員が、ほとんど1つの大学校の卒業生で占められている。言い換えれば、国民は自分の命を防衛大学校卒業生にゆだねているとも言える。

そのような防衛大学校が、どのような校長に指導されているのか、もっと関心を持ってしかるべきであると思う。

防衛大学校はどんな教育をしているのか

防衛大学校は横須賀市の小原台というところにある。羽田空港発着便の飛行機から、三浦半島の先端付近に見える白い構造物群が校舎である。

昭和27年に保安大学校として誕生し、昭和29年に防衛大学校となった。文部科学省の所管する大学ではなく、防衛省の所管する省庁大学校。今年は創立74年目になり、3月の卒業生は第70期生である。

同じ省庁大学校には、海上保安大学校(広島県呉市)、航空保安大学校(大阪府泉佐野市)などがあるが、いずれも1学年の入校学生数は50人程度。防衛大学校は1学年に500人程度が入校するマンモス校だ。

学生は4年間全寮制で、文字通り「同じ釜の飯を食う」生活を送るので団結力は強い。

当初は理科学系学科のみであり、カリキュラムは東京工業大学(現東京科学大学)を参考にしたといわれている。現在は人文系の学科もあり、平成4年(1992)からは女子学生も入校している。

通常の大学の学科に、軍事学と訓練が追加されるので、学生生活は非常に多忙。身分は国家公務員であり、衣・食・住は無料で提供され、手当も出る。

防衛大学校の教育指針は、初代校長の槇智雄氏の「槇イズム」ともいわれる考えに、強い影響を受けてきた。「良き自衛官の前に良き社会人であれ」「教養のある武人」など、民主主義国家における幹部自衛官の在り方を教えるものであった。

校長の人選に「シビリアンコントロール」は的外れ

第2代校長は自衛官出身者だったが、以降は官僚、学者出身者など、自衛官以外が選ばれてきた。

正しい意味とは思わないが、我が国での「シビリアンコントロール」という考えに基づいて、施設機関の長には文官を充てる、というのが慣例となっていたのである。

しかし、防衛大学校の学生教育は、幹部自衛官として、防衛の中核を担うべき人材を育成するものであり、諸外国でいう「軍学校」である。

軍人を教育する学校の校長が文民であるべきというのは、かなり奇異な考えといえる。軍事的識見の無いものが、どうして軍人を教育できるのか。このことは、諸外国では軍学校の校長として、通常、現職軍人または退役軍人を充てているということからもわかる。

自衛隊の中核となる防衛大学校生に求められるものは

我が国のリーダーに最も欠けている識見は「軍事」に関するものではないだろうか。軍事について、学問のみならず、実践経験を伴う知見を得るのは、自衛官のみである。

防衛大学校生は卒業後、ほぼ全員が幹部候補生学校で初級幹部としての教育を受け、以降も、幹部学校・指揮幕僚課程等で戦術、戦略について身に付けていく。その間、部隊や司令部での経験を踏まえて知見を深めていくのである。少数であるが、海外での軍学校への入校などを経験するものもある。

防衛省の軍事を研究する部署としては、陸上自衛隊の教育訓練研究本部、海・空自衛隊の幹部学校研究部、防衛研究所などがある。

ウクライナ戦争に関して、テレビ等に出演している防衛研究所職員は、一般大学を卒業後、防衛省の職員として、軍事研究を担当する者だが、部隊等の実務を経験できるのは自衛官だけだ。

防衛大学校生には、経験を伴った軍事の専門家として、我が国社会に貢献するという、志と熱意そして、卒業後の自衛官生活に対する準備となる学業を心がけるべきである。

吉田圭秀第11代防衛大学校長に対する大いなる期待

防衛大学校の校長を拝命されるにあたっては、ご自身の強い信念があったと推察する。

半世紀以上も実現しなかった、自衛官出身者の防衛大学校の校長就任は、吉田圭秀氏をおいて他は為しえなかったと思う。

時代の要請、総理の決断、ご自身の意思、すべてが一つになった結果だろう。存分に識見を発揮していただきたいものである。

防衛大学校卒業生が、自身の手腕をもって、第12代の学校長就任を勝ち取ることも合わせて期待している。

文/島本順光 内外タイムス