富山県内の50代女性教諭 精神疾患発症で公務災害に認定 文科省「”ワンオペ”教育現場の負担軽減が急務」指摘も実情は
県内の小学校に勤めていた50代の女性教諭が、児童の保護者からの度重なるクレームで精神疾患を発症し、公務災害に認定されていたことがわかりました。
県教職員組合は、教育現場では保護者からの過剰な苦情や不当な要求への対応が大きな課題となっているとしています。
県教職員組合によりますと、県内の小学校で勤務していた50代の女性教諭は、児童の保護者から面談や電話で強い言葉による苦情を何度も受けていたということです。
女性は医師から適応障害と診断され、およそ1年半にわたり休職しました。
発症前の1か月間の時間外労働は90時間を超え、さらに27日間連続で勤務していたことから、地方公務員災害補償基金は今年7月公務と適応障害の間に相当な因果関係が認められるとして、公務災害と認定しました。
県教職員組合 能澤英樹執行委員長
「当事者による解決が難しい場合は、早急に第三者の仲介に繋げることが有効。教育委員会においては来年度に向けて、体制の構築を進めていただきたいと思います」
スタジオには取材している吉田記者です。
全国の教育現場では精神疾患を発症する教員が増えていて課題となっていますね。
文部科学省の調査では全国の公立学校で精神疾患を理由に休職した教員は、2023年度には7119人に上り過去最多となっています。
主な要因は児童・生徒への指導や、職場の対人関係など人間関係に関わるものが多くなっています。
今回、県教職員組合が行ったアンケート調査では「保護者や地域から何らかのクレームを受けたことがある」という教員は8割にのぼっています。
8割というのは多いですし、不当なクレームだとしたら課題が大きいですね。
今回、公務災害に認定された県内の小学校に勤務していた50代の女性教諭が、具体的にどのような苦情や要求を受けたかは明らかにされていませんが、女性教諭は「自分と同じようにつらい思いをする人が二度と出てほしくない」という思いで認定の公表に踏み切ったとしています。
きょうの会見で専門家は「全国の教育現場で保護者などからの過剰な苦情や不当な要求に関する相談が増えている」と指摘しました。
教育研究家 妹尾昌俊さん
「子どもが言うことと、保護者が言うことが錯綜する中で、解決しなくて、先生は真摯に向かっているが、疲弊するということもよく聞きますし。一方的な叱責・暴言・担任をはずせというような無茶な要求もよく聞きます」
今回のように、精神疾患を発症した教員が公務災害に認定されるケースは、全国的に多いのでしょうか。
公務災害にまで認定されるケースは少ないのが現状です。
地方公務員災害補償基金のまとめによると、今回のケースのように全国の小・中・高校の教員が精神疾患を患い、公務災害に認定された件数は過去5年間をみても毎年15件前後にとどまっています。
件数が少ない理由について、過労死や労災問題に詳しい松丸正弁護士に聞きました。
松丸正弁護士
「自分のせいにしちゃう先生が多い。自分の指導力不足ということでなかなか、公務で倒れたということに申請しづらいという面がある。申請するのに管理職がいろんな書類を作らなくてはならず迷惑をかけてしまう、という遠慮もあるかもしれません」
松丸弁護士は、申請する人は少ないだけで、公務災害に認定されるケースは、実態はもっと多いとみています。
学校現場ではどのような対策が進んでいるのでしょうか。
文部科学省は今年9月、全国の教育委員会に対して「保護者からの過剰な苦情や不当な要求への対応」は「学校以外が担うべき業務」と通知しました。
1人の教員が様々な業務をこなす「ワンオペ」の状態から負担を軽減し、教員の働き方改革を促すことが狙いです。
松丸正弁護士
「長時間勤務でいっぱいいっぱい、そこに教師としての誇りが傷つけられる出来事があるとメンタルが病んでいく、そんな構造があると思う。自己責任ではないということを先生自身が考えていく。個々の先生が考えるんじゃなくて、学校全体として考えるべきだし、さらには教育委員会全体として考えていく、その作業が今始まっているんだと思う」
保護者からの苦情に「学校以外で」どの組織がどう対応するのか、文部科学省の通知は今年9月に来たばかりですが、県教職員組合は、早急な体制の構築を求めています。
児童や生徒への教育の質を保つためにも教員の健康をどう守るか考える必要があります。

