齋藤 秀樹 / 株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事

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知識を集める時代から、在り方を耕す時代へ

――答えを探す人間から、真理を探究する人間へ――

1.答えがあふれる時代に、なぜ私たちは迷うのか

現代は「答え」に満ちた時代だ。
SNSを開けば誰かの意見が並び、AIに尋ねれば瞬時に解が返ってくる。
知識を得ることは、これまでになく容易になった。

しかし、不思議なことに――
これほど多くの情報を手にしても、私たちは満たされない。
「どう生きればいいのか」「何が正しいのか」と問いながら、
結局のところ誰かの“正解”にすがってしまう。

それもそのはずだ。
「正解」とは、過去に誰かが見つけた安心に過ぎない。
それをなぞるだけでは、未来は生まれない。

2.「答えを探す」人は、過去に生きる

答えを探すとは、「評価軸を外に置く」生き方である。
他人の正解、社会の正解、常識の正解。
そこに合わせれば、一時的な安心は得られる。

だが、安心は進化の代償だ。
他人の価値観に合わせ続ければ、思考は枠に閉じ込められ、
やがて創造性という筋肉は失われていく。

実際、組織でも同じ現象が起きている。
Korn Ferry社の「Workforce 2025調査」では、
41%の従業員がマネジメント層の削減を経験し、
43%が「上司の方針が整合していない」と感じている
という。
これは、リーダーが「答えを与える人」としての役割を
終えつつあることを示している。

3.「真理を探す」人は、未来に生きる

では、真理を探す人とはどんな人だろう。
それは、自分の内側に問いを持ち続ける人だ。
他人の答えではなく、自分の“実感”を信じる人。

「なぜ、そう感じるのか」
「何が本質なのか」
その問いを抱えたまま、不確実な道を歩いていく。

Harvard Business Publishingの「Global Leadership Study(2023)」では、
68%の組織が“不確実性を受け入れる力”をリーダーの最重要資質に挙げている。
また、2025年版の同調査では、55%がAIや機械学習への適応を
リーダー育成の最優先課題
としている。

つまり、「正しい答えを知っている」よりも、
「未知の中で問いを立てられる」ことが
これからの時代に求められるリーダーシップの本質なのだ。

4.在り方と創造性を耕す

「真理を探す」とは、外に知識を求めることではない。
自分の内側にある“耕されていない土地”――
つまり「在り方」と「創造性」を育てることだ。

在り方とは、「何を信じ、何を大切にするか」。
創造性とは、その在り方から“新しい世界を生み出す力”。

Deloitteの「Gen Z/Millennial Survey 2025」によれば、
Z世代の70%が週に一度スキルを磨く一方で、
“リーダー職を目指す”と答えたのはわずか6%

若い世代が求めているのは、地位ではなく「意味」だ。
彼らは、与えられた答えではなく、自ら問いを立てる生き方を選び始めている。

だからこそ、私たちはもう一度思い出すべきだ。
答えを探す人は、知識を増やす。
真理を探す人は、在り方と創造性を耕す。

5.AI時代のリーダーに求められること

AIは、ほとんどの「正解」を出せる。
だが、「なぜその問いを立てるのか」までは答えられない。
そこにこそ、人間の価値がある。

McKinseyの「Learning Trends 2025」によると、
83%の経営層が“リーダーシップがスキル変革の鍵”と認識する一方で、
その戦略を明確に理解している従業員はわずか28%。

このギャップを埋めるのは、
“答えを与える”リーダーではなく、
問いを共に探究する”リーダーである。

6.それぞれへのメッセージ

経営者へ

あなたが創るべきは、答えを指示する組織ではなく、問いを共に考える文化です。
「不確実性を受け入れる」力を持つ経営こそ、未来を創る基盤になります。
経営とは、社員を導くことではなく、共に未来を耕すことです。

管理職・リーダーへ

部下に答えを与える役割は、AIが担う時代です。
あなたに求められるのは、「問いを立て、共に探究する力」。
それがチームの知性を耕し、信頼を育てる。
在り方の深さが、そのまま組織の深さになります。

若手ビジネスパーソンへ

誰かの答えを待たなくていい。
あなたの中にしかない問いこそ、未来を変える鍵です。
スキルを磨くだけでなく、自分の在り方を耕すこと。
それが、AI時代における「人間らしい強さ」です。

7.結び

答えを求める人は、知識を増やす。
真理を探す人は、在り方と創造性を耕す。

過去に生きるとは、正解をなぞること。
未来に生きるとは、問いと共に歩むこと。

「知る」から「耕す」へ。
いま、この変化を生きる私たち一人ひとりが、
答えを探す生き方から、真理を生きる在り方へ――
静かに進化していくときが来ている。