池田小児童殺傷事件から25年、全国で見直し進む学校の安全対策…見守り担い手不足の課題も
児童8人が犠牲となり、教師を含む計15人が重軽傷を負った大阪教育大付属池田小の児童殺傷事件は、8日で発生から25年となる。
事件は学校の安全対策が見直される契機となったが、見守りを担う人手が不足するなど課題も残る。(佐藤祐介、竹内涼)
記者は5日朝、付属池田小を訪れた。緩やかな坂道に面する校舎周辺では、児童らが登校する中、「見守り中」と前かごに書かれた自転車で、教員が通学路を巡回。近くの横断歩道では、「PTA」と書かれたベストを着た保護者が、旗を持って見守っていた。
校舎の周囲は、大人の背丈よりはるかに高いフェンスで覆われている。上には感知センサーが張り巡らされ、複数の防犯カメラも設置。人の出入りは警備員が立つ正門に限定されていた。
25年前の事件当日、宅間守・元死刑囚は午前10時過ぎ、当時の正門に車で乗り付けた。門が閉まっていたため、開いていた別の門から侵入した。公判では「門が開いていなければ、入らなかっただろう」と述べた。
校舎は2004年、事件を教訓に改築された。同小によると、校舎内には複数の警報ブザーが設置され、1年生の児童の身長でも押せる高さにある。不審者に気づきやすくするため、建物の一部はガラス張りだ。
同小では事件後、一度も侵入事案は起きていない。荒川真一校長は取材に「日本中の学校に安全への高い意識を持ってもらうため、本校の教員の意識の高さや設備を発信する使命がある」と語った。
目標の半分以下
全国の学校でも、安全対策の見直しが進む。
文部科学省によると、全国の幼稚園から高校までの防犯カメラの設置率は、03年度は2割未満だったが、23年度には6割を超えた。同省は09年、各校に危機管理マニュアルの作成を義務づけた。19年度には、大学の教職課程で安全を学ぶ授業を必修とした。
05年度には、警察官OBらが安全対策を教員らに助言し、見守りも行う「スクールガードリーダー(SGL)」の制度が導入された。
兵庫県明石市の市立中崎小の通学路では5日朝、SGLを務める県警OBの松尾和生さん(67)が、登下校を見守る地域ボランティアに子どもの安全を確認していた。
月に数回、各校区を巡回し、教員やボランティアらと情報交換する。松尾さんは取材に「いざという時にどう動けるかは日頃の心構えが欠かせない」と話し、市教育委員会の担当者は「プロの視点を提供してもらって助かっている」と述べた。
ただ、25年度時点で、SGLは全国に約1500人。文科省が目標とする4000人の半分以下だ。09年度からSGLを配置していた大阪府摂津市では、24年度末に府警OBらが引退し、後任が見つかっていない。同市の担当者は「担い手を見つけるのは容易ではない」と話した。
感知でアラーム
そうした中、新技術を活用する動きもある。名古屋市の防犯機器販売会社「NSK」では、AI(人工知能)を搭載した防犯カメラを学校向けに販売。校門前での長時間の滞在や、塀を乗り越えようとする動きを感知すると、職員室にアラームなどで通知が届く。
同社によると、全国で300校以上が導入しているといい、担当者は「人の目と異なり、集中力が途切れないのが強みだ」と話した。
「防犯教育重要」
学校安全に詳しい小宮信夫・立正大教授(犯罪学)の話「付属池田小の事件以降、学校安全の取り組みは進歩してきた。特に関西の学校は積極的だ。一方、教員は多忙で防犯のプロでもないので、警察OBらの力も必要だ。より重要なのは、子どもらが防犯知識を高めて危険を事前に避ける能力を高めることで、そういった教育の充実を期待している」
◆大阪教育大付属池田小の児童殺傷事件=2001年6月8日午前10時過ぎ、大阪府池田市の付属池田小に当時37歳だった宅間守・元死刑囚(04年執行)が侵入し、児童や教師を次々と包丁で襲った。1、2年生計8人が死亡、児童13人と教師2人が重軽傷を負った。
