「見なくてもいい」日曜劇場&朝ドラが“ダブル低視聴率”に苦しむワケ 面白くても選ばれない地上波ドラマの構造

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テレビはまだまだトガっている。心に“刺さった”番組を語るリレー連載「今週のトガりテレビ」。今回は、日本テレビドラマ界を支える日曜劇場・朝ドラ、そろっての“低視聴率”について考える。

【画像】戸田恵梨香が演じる“美しすぎる細木数子”

日曜劇場・朝ドラのダブル低迷

今期のドラマ界で、少し不思議なことが起きている。

NHKの朝ドラ『風、薫る』、そしてTBS日曜劇場GIFT』。どちらも、本来なら高視聴率が見込める“鉄板枠”の作品だ。朝ドラは長年にわたり、朝の生活習慣として見られてきた国民的ドラマ枠。日曜劇場は、日曜夜に重厚な人間ドラマを届ける民放ドラマの王道枠。

しかし今期、この二つの枠がそろって苦戦している。

『風、薫る』は、3月30日放送の初回世帯視聴率が14.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区・以下同)。前作『ばけばけ』の初回16.0%を下回るスタートとなった。

第1週の週平均は14.3%。第2週は13%台の回が続き、第7回13.6%、第8回13.1%、第9回13.3%と推移している。朝ドラとしては、低めの数字だ。

一方、日曜劇場GIFT』も初回世帯視聴率は9.4%と一桁スタート。前クールの『リブート』が初回13.3%で、最終回12.7%まで盛り返したことを考えると、こちらも苦戦感は否めない。第3話も8.5%と、“日曜劇場なのに一桁”とも見られる状況になっている。

しかしだからといって単純に「作品の出来が悪い」と決めつけるのは早い。内容に関しては「私は好きです」「丁寧に作られている」といった好意的な声も少なくない。

つまり低視聴率の問題は、作品の質というより、“届き方”にあるのかもしれない。

いまの時代、ひと言に「ドラマ」といっても、そのコンテンツ数はあまりにも多い。NetflixAmazon Prime Video、YouTube、TVer、SNSのショート動画まで、視聴者にはいくらでも選択肢がある。そんな中で、「しっかり作られていそう」というだけでは、なかなか選ばれない。

4月よりNetflixで配信が始まった『地獄に堕ちるわよ』は、対照的な例だ。細木数子の人生を題材にした作品と聞くと、かなり人を選びそうに思える。万人向けかといえば、おそらくそうではない。地上波ではまず選ばれにくい題材だろう。

だが、そのぶん「何を見る作品なのか」ははっきりしている。題材を尖らせて、ターゲットに届かせる。さらに一挙配信が基本なので、公開直後に話題になった勢いのまま、視聴者を満足させることができる。

そして何より、こうした作品には「見なきゃ」と思わせる力がある。「戸田恵梨香が細木数子を演じる」「あの人物の人生Netflixがどう描くのか」という話題性は強く、見ないと話題から置いていかれる気すらしてくる。

一方で、地上波の王道ドラマは、どれだけよくできていても、題材が普通ならば「見なくても大丈夫」と思われてしまうことがある。問題は、作品の面白さではない。「見なきゃ」と思われないことなのだ。

3か月以上、感情を継続させる大変さ

地上波ドラマは、今も昔も“長く届けること”を背負っていることも問題だ。1クール3か月。朝ドラなら2クール分で半年間も、視聴者の心をつかみ続ける必要がある。この、テレビにとって当たり前すぎる形式が、いま地上波ドラマの難しさになっている。

特に日曜劇場GIFT』の苦戦は、その象徴に見える。

GIFT』は、堤真一演じる孤独な天才宇宙物理学者・伍鉄文人が、弱小の車いすラグビーチームと出会う物語。パラスポーツを舞台に、仲間や家族の大切さ、愛を知っていく完全オリジナルストーリー。

スポーツドラマ、成長ドラマ、仲間との絆、挫折からの再起。こうした要素は、本来なら日曜劇場と相性がいいはず。しかし、いまの視聴環境では、感情をじっくり積み上げるドラマを3か月にわたって見続けてもらうことが難しい。

Netflixに慣れた視聴者は、気になった作品を一気に見る。テンポが合わなければすぐに離脱し、次の作品に移る。話題になっている作品も、数日単位で消費されていく。そうした見方に慣れると、週1回、1時間、3か月かけて進む地上波ドラマは、どうしても遅く感じられてしまう。

スポーツドラマや成長ドラマは、その空白で感情の熱が冷めやすい。

「先週どこまで進んだっけ」
いい話だけど、今週は見なくてもいいか」
「全部終わってから見ればいいか」

そんなふうに思われてしまうと、リアルタイムの視聴にはつながりにくい。地上波では1週間ごとに視聴者の感情の温度が途切れてしまうのだ。

朝ドラにも似た難しさがあるだろう。

特に『風、薫る』はダブルヒロインの物語だ。二人の主人公がいて、それぞれに背景があり、さらに周囲の登場人物も多い。明治期の看護という題材も、説明すべきことが少なくない。

物語としては丁寧に積み上げる必要がある一方で、視聴者が主人公に強い感情を抱くまでには、いつもより時間がかかる構造になっている。その時間の長さが、視聴離脱を招いている可能性がある。

地上波で好調のジャンルとは

一方で近年の地上波ドラマで強いのは、サスペンスや考察要素を持った作品だ。前回の日曜劇場『リブート』がヒットしたのも、毎週新たな謎が提示され、視聴者が次回までの1週間を使って考察できたことが大きいだろう。

同作は中盤で一度数字を落としながらも、終盤に向けて視聴率を上げ、最終回は12.7%を記録している。

放送と放送のあいだが視聴者の考察の時間になることで、その空白時間が熱を冷ますどころか、むしろ盛り上げてくれるシステムになっていた。

今期の朝ドラと日曜劇場は、決して駄作ではない。ただ、ストーリーの題材上、大きなうねりになりにくいことは確かだ。

この苦戦は、単なる2作品の不調ではない。地上波ドラマが、配信時代の視聴者にどう向き合うのか。その難しさが、如実に数字に表れ始めた出来事なのかもしれない。

文/ライター神山