こちらは、ジェミニ天文台のジェミニ北望遠鏡で観測した銀河「NGC 5394」と「NGC 5395」のペア。りょうけん座の方向、地球から約1億7500万光年先にあります。


【▲ ジェミニ北望遠鏡が観測した相互作用銀河「NGC 5394」(右)と「NGC 5395」(左)(Credit: International Gemini Observatory/NOIRLab/NSF/AURA)】

鳥のサギに見立てられた銀河のペア

18世紀の天文学者ウィリアム・ハーシェルが1787年に発見したこの2つの銀河は、海外ではその独特な形状から「Heron Galaxy」、日本語にすれば「サギ銀河」という愛称で親しまれています。また、天文学者のHalton Arpが1966年にまとめた特異銀河(特異な形態を持つ銀河)のカタログ「Atlas of Peculiar Galaxies」では「Arp 84」として収録されています。


画像を鳥のサギに見立てると、左側に位置する大きな渦巻銀河(NGC 5395)がサギの「胴体」にあたり、そこから右側へ伸びる小さな銀河(NGC 5394)が「頭部とくちばし」のように見えます。よく見ると、そのくちばしの先には、まるでサギが狙っている獲物のような「魚」の形をした遠方の銀河も写り込んでいます。


ちなみに、サギの胴体にあたるNGC 5395は、中心部に超大質量ブラックホールが潜むとみられる「セイファート2型」という活動銀河に分類されます。一方、頭部を形作るNGC 5394は、星形成が非常に盛んな銀河(HII銀河)としての顔を持っています。


銀河の衝突が育む「星のゆりかご」と超新星

天文学者たちの解析によれば、これら2つの銀河はすでに少なくとも一度は接近、あるいは衝突したと考えられています。重力を介した相互作用は銀河全体の形をゆがめて、銀河内のガスや塵(ダスト)の分布を劇的に変化させました。


NOIRLab(アメリカ国立光学・赤外天文学研究所)によると、この相互作用によって生じた乱流が水素ガスを特定の領域に集め、爆発的な星形成(スターバースト)を引き起こしているといいます。


画像の中でリング状に点在している赤色の斑点は、HII(エイチツー)領域や電離水素領域と呼ばれるものです。これらの領域では星形成活動によって生み出された若い高温の星々が放射する紫外線によって電離した水素ガスが赤みがかった光などを放っていて、「星のゆりかご」とも呼ばれる星形成領域があることを示しています。


こうした激しい星形成活動を裏付けるように、2020年には大質量星が引き起こすタイプのIb超新星「SN 2020aaxs」がNGC 5394で観測されました。これは、銀河どうしの相互作用によって誕生した大質量星が、その短い生涯を終えた姿と言えるでしょう。


銀河の相互作用は単なる破壊ではなく、新しい星々を誕生させ、宇宙の構造を豊かにしていく創造的なプロセスでもあります。ジェミニ北望遠鏡が捉えたこの光景は、銀河が静止した存在ではなく、常に進化し続けていることを物語っています。


冒頭の画像はNOIRLabから2019年12月19日付で公開されました。


本記事は当時公開の画像紹介記事を再構成したものです。


 


文/ソラノサキ 編集/sorae編集部


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