外面を気にして子育てに手抜きができない母親はどうすればいいのか。上手に手を抜く子育てをする「ズル親マインド」を提唱する咲良ともこさんは「1人でラーメン屋に食事に行ってみるといい。『道端のうんこ』のように、誰も自分のことなど見ていないことがわかり、気が楽になる」という――。

※本稿は、咲良ともこ『ズルい親ほど子は育つ!』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kohei_hara

■あなたの経験は「たったひとつの事例」でしかない

自分の知っている世界が、まるで誰にとっても「当たり前」だと思ってしまうことはありませんか。けれど実際には、それは「あなた」というたったひとりの経験にすぎません。自分だけの人生、自分だけの体験からできあがった「たったひとつのデータ」なのです。

たとえば「お箸はこう持つべき」「あいさつは誰にでもするもの」といった常識も、その多くが自分の身の回りの中で学んできたことにすぎません。

私たちは、小学校、中学校、会社、近所のママ友など、せいぜい200人ほどの人たちとの関わりの中で生きてきました。そこで得た経験を「日本全体の常識」かのように信じてしまいがちです。

けれど、それはたったひとり分の人生から得た感覚。言いかえれば、「小さな井戸の世界から出られずに生きている、カエル同士の中での当たり前」に過ぎないのです。

同じ経験をした人が周りにいそうに見えても、実際にはそうではありません。すべての人は違う価値観の両親、違う環境、それぞれの友人と過ごした経験からできています。

高校も出て大学も出て就職もして結婚もして――それでも「あなた」が経験したことは、「あなた」というたったひとりの人間の事例でしかありません。

■東大卒が全員幸せとは限らない

たとえば、自分のバイト先にいる人を見て「こんな大人にさせちゃダメ」と思い、子どもを東大に行かせようとするお母さんがいます。

でもそれは、自分の経験からくる「こうなってほしくない」という強い思い込みにすぎないかもしれません。実際、「東大を出た人で幸せそうな人を見たことがあるか」と問われると、多くの人は答えに詰まります。

東大出身者が近くにいて、苦労もせず幸せそうな姿を見ているのなら、「東大っていいな」と確かに感じることでしょう。けれど現実は「東大生ってなんかいいよね」と、遠くからぼんやり憧れているだけ。

さらに、身近な“幸せそうではない人”が東大出身でない場合。

「やっぱり東大じゃないとダメなんだ」「高学歴じゃないと不幸になる」と、短絡的な結論を出してしまうこともあります。

つまり、「東大に行けば人生が安泰」という価値観は、そのお母さん自身の限られた経験や世界に根ざしたものであることが多いのです。

■価値観を押し付けず、自由に探求させる

「子どもには大学に行ってほしい」「いい会社に入ってほしい」――その気持ちはとても自然です。

でも、その奥には「私はこうだったから、この子もそうなるはずだ」という思い込みがひそんでいるかもしれません。

私たちが「常識」「当たり前」と思っていることは、実は「たった200人分くらいの人間関係」から得た経験値でしかないのです。「あなたは社会に出たら困るよ」という言葉の裏側には、親の一度の人生経験から得た世界観しかありません。

すべてにおいて最も大切なのは、自分の価値観を押し付けるのではなく、子ども自身の可能性を信じること。あなたの経験は貴重ですが、それはあくまでも「たったひとりの母親」の一例に過ぎないことを忘れないでください。子どもには子ども自身の「たったひとりの人間」を、自由に探求させてあげることが大切なのです。

■自分の子であっても「魂は別物」

ここからは、もう少し視点を広げて、「子どもと親は別の存在である」という大前提について考えてみましょう。

子どもの顔や体型は、親に似ることもあります。でも心や魂はまったく別物です。

双子でも、同じ両親、同じご飯、同じ学校に行っているのに性格が違いますよね?

自分がかつて出会った「こうなってほしくない大人」の姿が強く印象に残っていると、わが子にも「同じようになってはいけない」と無意識に力が入ってしまうことがあります。でも私たちはつい、自分の過去の経験や、そこで出会った誰かの姿を重ねて、目の前の子どもを見てしまうのです。

「どこまでが遺伝で、どこまでが環境か?」と気にする人もいますが、親子の体型や顔が似ていることはあっても、その子に宿る魂は別物と考えたほうがラクです。

子どもには子どもの時間が流れていて、その子自身の人生があります。

自分の小さな経験を物差しにせず、目の前の子どもをよく観察し、その子の可能性を信じていきましょう。それがズル親の子育てです。

■他人の目が気になって「手抜き」ができない時は

物事をまったく違う角度から捉え直す「リフレーミング」。これを実践しようとしたときに、私たちは思いがけない壁にぶつかることがあります。

たとえば「お弁当は手作りでなければならない」という思い込みを見直し(リフレーミングし)、「コンビニ弁当を使ってみよう」「おかずは一品でいいや」と思えたとします。

「忙しい朝をラクにしたい」「栄養バランスも悪くないし、卵焼きだけで十分!」

このように自分では納得できていても、いざやろうとするとためらってしまうお母さんが多くいます。

結局、ブロッコリーをゆでて入れてみたり、コンビニ弁当のおかずをきれいに詰め替えて、手作りの卵焼きを急いで作って足したりしちゃうのです。なぜなら、周りの目が気になるから。

「誰かに手抜きと思われるかもしれない」「子どもが友達に何か言われたらどうしよう」と感じてしまい、一歩が踏み出せなくなるのです。

自分の中で「本当はやめたい」と思っていても、実行に移すのは簡単ではありません。気持ちがついていかず、続けられず途中であきらめてしまうことも。

そんなときに思い出して欲しいのが、「道端のうんこ理論」です。

■「道端のうんこ理論」でスター意識を手放す

ちょっと想像してみて下さい。道の端っこにうんこがもし落ちていても、離れて歩いたり人と話したりして通りすぎれば基本的には誰も気にしませんよね。うんこに素敵もかっこいいも、いいも悪いもありませんよね?(笑)

写真=iStock.com/alexei_tm
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私たちは(顔の知られた国民的有名人でもない限り)、みんな道端のうんこのようなもの。誰もあなたのことをじっと見たり、評価するほどの存在ではないのです。だから、人にケガをさせたり、警察に捕まらないことなら、「何をしたっていいじゃない」と捉えてみませんか。

実際に、誰にも見られていないのに「誰かが見てる」と思い込んで動けなくなったり、「やりたいこと」をあきらめてしまうのはもったいないこと。

「見られている」という意識は、ある意味「私はスターよ」と言っているようなもの。

そんな自意識はさっさとズルく手放しましょう。

■「他人の目」を気にするクセは子供にも影響する

こうした「他人の目」を気にするクセは、子どもにも自然と引き継がれていきます。

たとえば、今の小学生が前髪をやたら気にするのも、「かわいく見られないとクラスの子たちにハブられるかも」という恐れからです。

親が「見られていること」を気にして行動にブレーキをかけたり、見られる前提で行動しろと言えば、子どもも「見られていること」を意識し、オドオドするようになります。

子どもは敏感ですから、何でも伝わるのです。小さな頃から、

「そんなことをしたらはずかしいでしょ」「周りの子に笑われるよ」「他の子はそんなことしないよ!」

こんな言葉で育てられると、「他人の目」への過剰な意識が刷り込まれかねません。

そもそも「他者から見られている」という意識は、思い込みであることがほとんどです。多くの人は、自分が思うほど他人から注目されていません。

では、この呪縛から解放されるにはどうすればいいのでしょうか?

他人の目が気になるときこそ“ズル親”の出番です。

他人の目を可能な限り遮断しましょう。

たとえばある日おうちにあげなければならない場面がきたとしましょう。本来なら家中の掃除をして、あらゆるものを布で隠し、使わない部屋には使わないものを詰め込み、普段使わないティーカップを洗い、お菓子を買って挑みますよね? そしてママ友がどんな風に我が家を評価したのか、人の噂話に耳を立てて気にしてしまうなんてことありませんか?

義母や学校の先生も同じです。ママ友を含め「人」を自宅に招かなければいいのです。そうすれば、部屋が散らかっていても、よそ行きの服に着替えなくても大丈夫。

その辺のカフェで心置きなく話せばいいし、義母や先生は玄関先かマンションのロビーで済ませればいいのです。

そうやってズルく生きる方法を知れば子どもも親もラクになります。

「片付けなさい!」と怒る回数も激減しますし、お母さんもムダに疲れないでイライラしません。

■「1人でラーメン屋」に行ってみる

また荒療治ですが、「ひとりでラーメンを食べに行く」という方法も効きます。

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女性客がいなそうなお店で、あえて食事をしてみるのです。店に入る前は、もしかしたらこんな迷いがあるかもしれません。

「おひとりさまって思われたら嫌だな」「変なおばさん扱いされそう」

でも実際は、何も起こりません。ラーメンを普通においしく食べて、終わり。好奇の目でジロジロ見られたり、からかわれたり……なんてしませんから(笑)。

咲良ともこ『ズルい親ほど子は育つ!』(KADOKAWA

「誰かに見られている気がする」という幻想を実体験でズルく壊しましょう。

このように「他人の目を気にしていたのは思い込みだった」と体感できると、人生は変わっていきます。「人にどう思われるか」よりも「自分は何をしたいか」「自分はどう生きたいか」を優先できるようになっていくのです。

自分の「こう生きたい」を優先できるようになったとき、ズル親の生き方が自分の中に根付いていきます。

“お母さん”とはいえ、あなたの人生は、あなたのもの。

「自分の気持ち」を大事にしていきませんか。

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咲良 ともこ(さくら・ともこ)
育児ナレッジメンター
P&Gで研究開発・生産技術を担当。結婚を機に退社後、専業主婦に。趣味のパン作りをきっかけに、パン教室を7年間運営。さらに卸販売2年、通販1年半を経て、2023年に法人化。2025年現在は、既存の2社に加えマレーシア法人を設立し、計3社を経営中。10年間にわたる自己否定と葛藤の末、「叱らない・怒らない育児」へと考え方を転換。その実体験を基に、「できない自分を責めがちなママ」に寄り添う独自のメソッドを確立し、「叱らない育児」を通じて母子の幸せを支援する、育児ナレッジメンターとして精力的に活動している。SNSの総フォロワーは10万人を超え、これまでの講座受講者は延べ1,135名に達するなど、多くのママたちから支持を集める。「すべての母親が幸せである社会」の実現を目指し、育児分野での発信と実践を広げている。
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(育児ナレッジメンター 咲良 ともこ)