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道路に飛び出した子どもを「平手打ち」で叱るのは、親のしつけか、それとも虐待か――。そんな議論がネット上で起きている。

きっかけは、ツイッター上に投稿されたドライブレコーダーの映像だ。ドライバーが、どこにでもあるような生活道で車を走らせていると、突然、自転車(あるいは三輪車)に乗った2、3歳くらいの子どもが飛び出してくる。

幸いにもブレーキが間に合って、悲惨な事故は起きないのだが、すぐに母親らしき女性が現れる。女性はドライバーに一礼したうえで、子どものもとに駆け寄り、その頭部に平手打ちするのだ。

この映像の拡散を受けて、「子どもに交通ルールが理解できるのか」と否定的な意見がある一方で、「叩かれたことで、次からは痛いのを嫌がって飛び出さなくなる」「愛のムチだ」といった肯定的な声も多数あがっている。

平手打ちの教育効果はわからないが、法的にはどのように考えればいいのだろうか。神尾尊礼弁護士に聞いた。

●「親であっても児童虐待の責任から逃れることはできない」

「最初に述べておきたいのは、今回のケースは、賛否がありうる状況であり、簡単に適法・違法と分けてよいかは、現時点ではなお議論の余地があると私は考えています。

そのうえで、まずは純粋に法律の話をします。

人に暴行を加えるのは暴行罪(刑法208条)、ケガをさせると傷害罪になります(刑法204条)。

そして、たとえ親権者であっても、児童虐待に関する暴行罪、傷害罪の責任から逃れることはできません(児童虐待防止法14条2項)。

この児童虐待のうち、身体的虐待は『児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること』と定義されています(児童虐待防止法2条1号)。

これらからすると、たとえば、平手打ちによって、子どもがケガをしてしまったのならば、行き過ぎであって、犯罪が成立するおそれがあると言わざるをえないでしょう。

ただし、自転車で飛び出すなど、命の危険がありえた状況で、そのことを強く教えるためにとっさに平手打ちが出てしまった場合(特にケガなどもなかった場合)には、しつけとして許容される余地があるように思います。

したがって、今回のような危険な状況では、考えが分かれるだろうと思います」

●許されない行為の範囲は広がっている

「今後議論を深めていくうえで、『しつけ』と思っていても、許されない行為があること、その範囲が広がっていることには、注目すべきでしょう。

先に述べたように、結果的にケガをさせてしまった場合に限らず、たとえば東京都の条例などでは『しつけに際し、子どもに対して行う精神的肉体的苦痛を与える行為で、子どもの利益に反するもの』も禁止されます。

これは、子どもが苦痛を感じていない場合であっても、苦痛を与えるような行為はしてはいけないとされています。

このように、児童虐待の広がりの下、禁止すべき範囲も広がりをみせている点は考慮に入れるべきでしょう。特に、親の権利ではなく、子どもの権利として構成が試みられている点は、明確に意識するべきです。

こうした流れもあり、別の方法で、子どもにわからせることはできないのかなど、私自身は考えてしまいますので、こうした身体的な『しつけ』には否定的ではあります。

ただ、親の愛から、とっさに手が出てしまった場合まで法律で拘束できるかについては、法的な議論を超えている部分でもあります。議論を深めていきながら、他の観点、たとえば医学的な観点も参照しながら考えていく必要があるでしょう」

【取材協力弁護士】
神尾 尊礼(かみお・たかひろ)弁護士
東京大学法学部・法科大学院卒。2007年弁護士登録。埼玉弁護士会。刑事事件から家事事件、一般民事事件や企業法務まで幅広く担当し、「何かあったら何でもとりあえず相談できる」弁護士を目指している。
事務所名:弁護士法人ルミナス法律事務所
事務所URL:https://www.sainomachi-lo.com