市長もあきれる福岡市職員「自宅外1カ月禁酒令」
●前代未聞の「自宅外1カ月禁酒令」
福岡市は、職員が自宅の外で酒を飲むことを禁じるのだという。理由は、「綱紀粛正を唱えても不祥事が後を絶たない」ためで、期間は1カ月間。2012年5月20日付の西日本新聞が「自宅外1カ月禁酒 福岡市 21日から 不祥事続き職員に厳命」という記事で詳細を報じている。
2月には「酒に酔った消防士が盗んだ車を運転したとして逮捕」され、今月に入ってからも17日に「公共事業の移転保証をめぐる収賄容疑」で「市土地開発公社職員が逮捕」された。さらに、翌18日には「酒に酔った港湾局職員」が「タクシー運転手を殴」り、保育課係長が同僚を殴ったて歯を折ったとして」、それぞれ逮捕されたという。
これらの不祥事を受けて、高島宗一郎福岡市長が「悔しくあきれ果てている。1カ月、公私ともに外出したときは酒を飲むなという気持ち。ペナルティーですよ。大人扱いできない」と市の緊急幹部会議で述べ、市は職員が1カ月のあいだ自宅外での飲酒を禁止することを決めた。
記事を読んで、「世も末だな」と思った。どこかの高校が、生徒の飲酒を禁止するのは当たり前の話である。未成年の飲酒は法で禁じられているからである。他方、未成年ではない大人には飲酒が認められているのだから、それを誰かが強制的に禁じること自体が、法に引っかかる振る舞いなのではないか。
確かに、福岡市職員による不祥事の数々は、まずいことだと思う。組織の綱紀が緩んでいると指摘されても、仕方がない。それでも、不祥事を起こしたのは1万8000人の福岡市職員のうち、ほんの数人なのである。「少人数の不祥事の責任」と「プライベートで酒を飲む自由」を天秤にかけた場合、後者の方が重いと思うのは筆者だけであろうか。
●職員同士が飲酒を監視し合う!?「酒」にしても「入れ墨」にしても、基本的には個人が「飲むかどうか」とか「入れるかどうか」を判断し、その責任を取るべき問題である。それに対して、勤め先などの組織が強制的にどうこう言うような問題ではない。「大人扱いできない」という理由で個人(=大人)が組織に何かを禁じられたら、何でも禁じることができてしまう。福岡市では今後1カ月にわたって、酒を飲んでいるかどうかを市職員同士が監視し合うことになろう。酒好きは、監視を逃れて飲み続けるのは必然だ。それが好ましい社会の姿なのかどうか。世の中の人々が、そういうことを考えるきっかけとなる。
そのことくらいが、福岡市の禁酒令がもたらすプラスの効果であるような気がする。
(谷川 茂)