【前編】本州で唯一、能登の海岸に「保水力の高い砂浜」がカギ「奇跡の昆虫」イカリモンハンミョウ

石川県羽咋市から志賀町の海岸に、本州では唯一、この地でしか見られない「奇跡の昆虫」がいます。その名はイカリモンハンミョウ。絶滅の危機に瀕しながら、地道な保護活動もあり、個体数が「V時回復」しています。小さな昆虫が日本海の荒波や地震を乗り越えて数十万年もの間、能登の砂浜で生き続けられるワケとは…。
なぜ能登の浜に!? 鍵は「砂」と「川」イカリモンハンミョウは体長12〜15ミリで、流線型の体に細長い足が特徴です。背中に「錨(いかり)」のような紋様を持つことから、その名が付けられています。かつては金沢市から志賀町にかけての海岸に広く分布していましたが、浜への車の乗り入れ増加などで生息地が減少しました。現在の主な生息地は、羽咋市柴垣から志賀町大島にかけてのわずか2キロほどの海岸に限られています 。
石川県指定天然記念物、県指定希少野生動植物種に指定されており、採取は禁じられています。
保護団体「プロジェクト・アイ」の上田哲行会長(石川県立大学名誉教授)「冬の日本海の荒波にも負けず数十万年、能登の地に生き続けてきたことと、それを可能にしてきた彼らの適応力が素晴らしいです。ビジュアル的には、他のハンミョウ類と比較して体型がスマートで、あしが長いこと。明るいグレーの地色に白い帯がシックである点も魅力的です」
石川以外の分布は「宮崎」「大分」「鹿児島」興味深いのは、その分布です。国内の生息地は、石川県のほか、本州以外では大分県と宮崎県、そして鹿児島県の本土部と種子島に限られます。
なぜ、九州から遠く離れた石川県内が生息地になっているのでしょうか?
石川県ふれあい昆虫館(白山市)の学芸員・福富宏和さんによると、明確な理由は判然としていないものの、鍵は「砂」と「川」にあるようです。
イカリモンハンミョウの幼虫が生息するには、適度な湿り気のある砂浜が欠かせません。幼虫は砂浜に穴を掘り、巣穴の中には、波をかぶっても溺れないよう水の侵入を防ぐ「隔壁」をつくります。羽咋市から志賀町の生息地には、粒が細かくて凹凸のある保水力の高い砂浜が残っており、幼虫が巣に「水没対策」を講じることができる環境になっているのです。
そして、この貴重な砂浜に砂を供給しているのが、「暴れ川」としても知られる手取川です。白山を源流とする手取川から大量の土砂が日本海に流れ込み、対馬海流に乗って能登の海岸に運ばれ、粒が均一で細かい砂浜が形成されているのです。白山、手取川の自然の恵みが、生存に適した環境をつくっているのです。
*「後編」絶滅の危機乗り越え、波打ち際で何匹も見られるまでに…
