『仮面ライダーゼッツ』©テレビ朝日

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 毎年、テレビ朝日系で日曜日の朝に放送されている『仮面ライダー』シリーズは、視聴者の予想を良い意味で裏切る様々な仕掛けを展開してきたが、現在放送中の『仮面ライダーゼッツ』(テレビ朝日系/以下、『ゼッツ』)はまさに“意表を突く”と言っていい驚くべき展開を迎えている。2025年9月にスタートした『ゼッツ』は、現時点で第25話まで放送済みであるが、3月1日放送の第24話のラストシーンで主人公の万津莫(今井竜太郎)が第1話と同じ病院のベッドで目覚めるという展開が、視聴者の間で大きな反響を呼んだ。「まさかの夢オチ?」「これまでの5カ月間の放送は何の意味があったのか」とSNSでも議論と謎が渦巻いている状況だ。平成ライダーシリーズのトリッキーな脚本に慣れているファンからは「単なる夢オチじゃないはず」という冷静な声も聞かれたが……。

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■第25話で明かされた“予知夢”の真相 まず基本的な世界観から整理しよう。万津莫は極秘防衛機関「CODE(コード)」に所属する“コードナンバー:セブン”として、秘密裏に悪と戦っている無敵のエージェント……というのは、彼が就寝中に見ている明晰夢(当人が「これは夢なんだ」と自覚している夢体験)のお話。現実世界の莫は、無職で冴えない23歳の平凡な青年である。眠っている間の莫は、夢の中でゼッツドライバーという変身ベルトを使って仮面ライダーゼッツとなり、悪夢の怪人ナイトメアと戦っているのだが、もちろん現実の莫にそんな能力はない。現実世界では昏睡状態でありながら、莫の夢には現れる美少女タレントのねむ(堀口真帆)、そしてナイトメアを操って暗躍する元怪事課の刑事ノクス(古川雄輝)、CODEを敵視している大人の女性ザ・レディ(美村里江)など、複雑に謎が絡み合っている。前述の第24話でエージェントとしての莫は銃で撃たれて殉職し、それに呼応するように現実の莫は病室のベッドで目を覚ます。仮面ライダーゼッツに変身するコードナンバー:セブンとしての莫と、それを明晰夢で体験していた莫自身も、全部ひっくるめて夢の出来事だったのだろうか?

 夢を題材にしている作品らしく、主人公の名前は夢を食べるといわれる動物の“バク”から、人気タレントねむの名は“眠り”から、ゼッツと対峙するノクスはラテン語で夜を意味する“Nox”という具合に、主要キャラクターのネーミングは全て眠りと夢に関するものから採られている。しかし、いくら夢をモチーフにしているとはいえ、放送半年近くを費やして「これまでの話は全て莫が病院のベッドで見ていた夢でした」という夢オチはあり得ないんじゃないか、と考えたファンも多いと思う。もちろんこれは夢オチなどではない。3月8日放送の第25話では、莫が見ていたのは予知夢だったことが明かされる。彼が明晰夢の中で見ていた「CODE」は実在する組織で、バイクから人型ロボットに変形するゼッツの専用マシン、コードゼロイダーも本当に存在していたのだ。交通事故に遭って病院で眠っていた間に莫が見ていたものは、これからの未来に起こりうる出来事、すなわち予知夢であった。ここから『ゼッツ』の第2章が始まり、自分が何者であるかを知った万津莫の本当の戦いも、ここから始まる。

■『仮面ライダー龍騎』が描いた“ループ構造”との違い 平成に放送された『仮面ライダー龍騎』(2002年~2003年)は、作中のある人物が望まない方向に事態が動くと、第三者の意志によって世界がリセットされ、主人公たちが何周も戦いを繰り返すループが描かれた。『龍騎』はテレビシリーズ、テレビスペシャル、劇場版と、それぞれ異なる結末が提示されたが、戦いがリセットされて何度も繰り返されているというドラマの設定を飲み込んでいれば、ライダー同士のバトルの勝者が変わる結末も様々な楽しみ方が可能だった。だが最新作『ゼッツ』は、この度届いた谷中寿成プロデューサーの公式インタビューによると「ただの“2周目”になることを拒否するかのように盤面をかき乱していきます」とのことで、『仮面ライダー龍騎』のときのようなリセットからの何周目かのループとは訳が違うようだ。夢をテーマに据えた作品だからこそ、予想されやすい夢オチ的な展開を逆手に取って、莫の殉職を描くタイミングで新章を始めるのが制作側の狙いだという。以前から作中に意味ありげに現れていた紫色の蝶々は、第25話で改めて莫のそばを飛んでいる。この蝶なども、夢と現実の区別が曖昧なことを指す「胡蝶の夢」の暗喩だけでなく、谷中プロデューサーの狙いの中にあるバラフライ・エフェクト(=些細な出来事がきっかけで未来が変わる現象)を象徴しているようだ。

主題歌はYUTAによるロックナンバーに 『ゼッツ』第2章を始めるにあたって、ドラマの展開だけでなく、主題歌もリニューアルされることになった。これは放送クールごとに主題歌が変わるテレビアニメのやり方に乗らない手はないという制作側のアイデアと、『仮面ライダー剣』(2004年~2005年)、『仮面ライダー響鬼』(2005年~2006年)など、放送半ばで主題歌が変わった過去の仮面ライダーシリーズも踏まえた上での試みとのこと。3月8日からYUTAが歌う新主題歌「PLAY BACK」のTVサイズ版が配信されたが、既にダウンロードしたファンからは「ゼッツの雰囲気にピッタリ」「早くフルバージョンが聴きたい」と大きな反響を得ている。力強いロックサウンドの「PLAY BACK」を歌うYUTAからは「『ゼッツ』の主題歌として、毎週日曜日の朝に彩りを添えられたら嬉しいなと思います」とコメントが寄せられた(※)。作詞を担当している藤林聖子は、平成ライダー第1作の『仮面ライダークウガ』(2000年~2001年)に始まり、『仮面ライダー555』(2003年~2004年)、『仮面ライダー電王』(2007年~2008年)、『仮面ライダードライブ』(2014年~2015年)ほか、数多くの平成・令和ライダーシリーズで作品世界に寄り添った歌詞を手がけてきただけに、YUTAのヴォーカル共々大きな期待が寄せられる。

 予知夢を通して「CODE」の野望やノクスの心情、他のコードナンバーが与えられた仮面ライダーたちの存在、ザ・レディとねむの関係性を知った上で莫が臨む、「強くてニューゲーム」の新章が果たしてどう動くのか。これまでの放送でも、SNSでは「先が読めない」といった意見が散見されたが、『ゼッツ』は新しく“始める”仮面ライダーとして、平成第1期の製作陣がやろうとしていた精神を想像しながら作っているため、谷中プロデューサーは「ご覧になっている皆さんから反応をいただけることは、励みになります」と話している。最悪のバッドエンドを体験した莫は、このニューゲームでどう動くのか。24話をかけてスタッフが積み上げてきた多くの仕掛けと伏線が、これからの2クールでどのように開花するのか。莫の予知夢を観測していた、新たな仮面ライダーであるドォーンの登場を含め、『ゼッツ』の第2章からは目が離せそうにない。

参照※ https://x.com/KR_avex/status/2030433319934984469(文=のざわよしのり)