給与3ヶ月分「120万円」を退職金代わりに月収へ上乗せでもらいました。税金などの負担はどう変わりますか?
給与と退職金の違いとは
国税庁によると、給与所得は「使用人や役員等が支払いを受ける俸給や給料、賃金、歳費、賞与のほか、これらの性質を有する給与に係る所得」を指します。一方、退職所得(退職金)は「退職により勤務先から受ける退職手当などの所得」です。
さらに、給与と退職金では、課税金額の計算方法や社会保険料の扱いも異なります。
給与の社会保険料と税金
社会保険料のうち、厚生年金保険料と健康保険料(一部介護保険料含む)は、標準報酬月額を基に決められます。この標準報酬月額は、給与を一定金額ごとに区分した報酬月額に当てはめて決められる金額です。
また、社会保険料のうち雇用保険料は、支払った賃金に保険料率をかけた金額です。そのため、給与が高いほど、社会保険料も高くなります。
給与にかかる税金は、給与所得控除や必要な控除を引いたあとの金額に、税率をかけます。給与が高いほど負担が増える仕組みです。ただし、税金の計算をする際は一時所得や雑所得などほかの所得と合計してから計算します。
退職金の社会保険料の扱いと税金
一時金として受け取る退職金は、原則として社会保険料の算定対象にはなりません。退職所得にかかる税金も、ほかの所得とは分けて計算します。国税庁によると、税金の計算に用いる退職所得の求め方は「(源泉徴収前の退職金額-退職所得控除額)×2分の1」です。退職所得控除の求め方は以下の通りです。
・勤続年数20年以下:40万円×勤続年数(80万円未満の場合は80万円)
・勤続年数20年超:800万円+70万円×(勤続年数-20年)
なお、「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、退職金の支払いの際に、退職所得の金額に応じた所得税等が源泉徴収されるため、原則として確定申告は必要ありません。
支給項目の違いで社会保険料や税金にはどんな差が生まれる?
退職金の代わりとして、在職中に退職金相当額を給与に上乗せして受け取ることを「退職金の前払い制度」といいます。この制度では、前払いされる退職金分も給与の一部として扱われることがポイントです。そのため、通常の給与に退職金額を足した金額で、社会保険料や税額を計算する必要があります。
今回は、以下の条件で退職金を通常通り受け取った場合と、給料に上乗せした場合の社会保険料や税額を比較しましょう。
・退職金120万円を退職時に受け取る場合と、在職中に給与に上乗せして受け取る場合で比較
・東京都北区在住30代
・勤続年数は5年
・給与の計算に際して、元々の給与が月収40万円、年収480万円
・退職金を給与として受け取った場合の年収は600万円とする
・年収を12ヶ月で割ったものを月収とし、月収を標準報酬月額とする簡易計算を用いる
・賞与は考慮しない
・退職所得、給与所得以外の所得はない
・住民税は総務省が公表している基準とする
・全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入
・控除は基礎控除、給与所得控除、社会保険料控除、退職所得控除のみとする
・各控除などは令和7年分を適用
条件を基にした場合、各金額は表1の通りです。
表1
※筆者作成
比較すると、今回の条件では退職金を通常通り受け取った方が社会保険料は15万8928円、税金は合計16万200円安くなる結果です。
ただし、税額や社会保険料は高くなりやすいものの、前払い制度では毎月の給料が増え、ローン返済などに役立てやすいなどのメリットもあります。
一般には社会保険料や税金は退職金として受け取った方が安い
退職金の前払い制度を利用した場合、退職時に受け取る通常の退職金とは異なり、通常の給与に加算する扱いとなります。そのため、多くの場合は社会保険料額や税額だけで見ると、通常通り受け取った方が負担は少ないでしょう。
一方で、退職金の前払い制度では早い段階で給与にプラスして受け取れるため、生活費やローンといった毎月の出費の工面が楽になるメリットもあります。選択できる場合は、金額面だけでなく、ライフプランや資金計画といった要素も踏まえて比較・検討するとよいでしょう。
出典
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.1400 給与所得
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

