本当のお金持ちは、どんなことにお金をかけているのか。富裕層税務コンサルタント・税理士で『億万長者になるお金の使い方 富裕層の領収書1000万枚見てきた税理士が教える』(SBクリエイティブ)を出した森田貴子さんは「領収書を確認すると、どんな人も靴への強いこだわりが見て取れる」という――。
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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Pavel1964

■お金持ちは「運動」に投資している

富裕層は例外なく何らかの運動習慣を持っています。健康という見えない資産は、人生後半が長くなった時代を生き抜くための最強のインフラです。

富裕層にとって、心身の健康維持は、いわば「家族や従業員に対する愛情表現」のひとつです。

もちろん、ビジネスでは見た目の印象も重要ですし、「かっこよくありたい」「素敵でありたい」という目的でボディメイクするというのもあるでしょう。

でも、それ以上に、「周囲にいる大切な人たちのために、自分が心身共に健康でなくてはいけない」という意識が強いのです。

経営者が倒れたら家族も従業員も、従業員の家族までもが先行き不安になってしまいます。路頭に迷う可能性すらあるのです。経営者という責任ある立場として、それは避けなければなりません。

また、ビジネスの世界では欠席しないことは大原則です。首相や大統領、上場企業の社長など、大事な場面で欠席すればニュースになります。身体には日々調子の変化はあるものの、責任ある仕事をしている人は当たり前のように体調管理をしています。

「富裕層にはアーリーリタイアなんて選択肢はない」という話をしましたが、生涯現役を貫くためにも、心身を健やかに保ち、健康寿命を延ばすことに非常に意欲的です。これほどウェルネスの意識が高いことは、領収書からも、そして実際に接していてもよくわかります。

■「休む」ために泳ぎ、漕ぎ、走る

まず、強い体づくりのためにパーソナルトレーナーをつけるのは、富裕層にとっては常識と言えるほどの共通項です。

また、私が接してきた方々は例外なく、筋トレゴルフテニスなど、何かしらの運動習慣を持っています。フルマラソンやトライアスロンといったハードなスポーツに挑戦している方も少なくありません。思い返してみると、成功している人ほど身体を大切にしている、そんな印象を受けます。

「仕事が終わってから夜11時にプールに入ることもあるんですよ」

そう笑いながら話してくれた方は、トライアスロン歴は5年。年に3回ほど大会に出場し、オフシーズンでも早朝のランニングや深夜のスイムを欠かさない。

「泳いで、漕いで、走っている間だけは、誰の期待にも応えなくていい。自分とだけ向き合えるんです」

昼は経営会議、夜はオンラインミーティングもある日もあります。休日も「休むために走る」と言います。

ある経営者は、日曜の早朝に100キロを超えるバイクトレーニングを行う。「過酷なことをやっている時間ほど、頭が静かになる。判断がシンプルになるんです」と言います。ビジネスの現場では、情報過多やストレスの中で冷静さを保つことが難しい。

■“再現性のない成果”を出すには運動がベスト

なぜ彼らは、あえて過酷な競技に挑み続けるのでしょうか。

ジムで筋トレやランニングをすれば健康維持には十分なはずです。それでもトライアスロンに惹かれる理由を尋ねると、「トライアスロンは“自分と向き合わざるをえない”スポーツなんです。逃げ場がないから。水中でも道路でも、最後は自分の呼吸と心拍数に向き合います」

それはまさに拙著『億万長者になるお金の使い方 富裕層の領収書1000万枚見てきた税理士が教える』(SBクリエイティブ)で述べた「プランBをもつ」「ストレス耐性に打ち勝つ」「やりきる力(グリッド力)」の体現です。

富裕層の多くは、経営や投資の世界で“再現性のない成果”を求められてきた人たちです。正解がない環境で結果を出すために必要なのは、即興に見える行動の裏側に、どれだけ準備と習慣があるかがすべてなのです。そしてひらめきは、積み重ねの延長線上にしか現れません。

意外に思うかもしれませんが、再現性という意味でトライアスロンを「音楽」などアートやステージで演じる競技や芝居にも通じると私は考えます。音楽も、舞台上では即興のように見えて、その裏には膨大な基礎練習と積み重ねがあります。

同じように、トライアスロンの本番で最高のパフォーマンスを出すには、日常の淡々とした積み上げが欠かせません。

■お金持ちへの道は「週1回の運動

そして、肉体を使って心を整える。

トライアスロンは、彼らにとって単なる運動ではなく、“自分を再構築するための儀式”なのです。そこには、富裕層が大切にしている支出哲学――「見えないものを大切にする」という生き方が表れています。

ストレスを制し、習慣を磨き、心を鍛える時間こそ、最も確かな“見えない自分資産”なのです。

さらに言えば、彼らが運動に熱心な理由は、生活の質が向上するからです。運動そのものの健康効果に加え、パフォーマンスを上げるために仕事時間を調整してオンとオフのメリハリをつける、睡眠をしっかりとる、不摂生を減らして旬の食材を取り入れるなど、運動習慣を取り入れることが、ライフスタイル全体を整えることにつながっています。

さらには運動後に気分がすっきりするのも大きな魅力です。

富裕層は、こうしたお金では買えない健やかさや充実感こそが人生を豊かにすることを知っているのです。恋愛も親孝行も新しいチャレンジも、健康だからできることです。

そして、これは、誰にでも応用できる考え方です。いきなりハードなスポーツに挑戦する必要はありません。

たとえば、今日の帰り道にひと駅分歩いてみる、週に一度は意識して体を動かす時間を取り入れてみる――そんな小さな一歩からでも、生活の質は確実に変わっていきます。

■ジョブズやザッカーバーグが歩きながら会議をする理由

「歩き続けられる靴」への支出を惜しまない富裕層が趣味として最も多く挙げるのは、ゴルフです。

「歩くことは人間にとって最良の薬である」

これは古代ギリシャの医師ヒポクラテスの言葉です。歩くことは、健康寿命を延ばし、メンタルの不調を防ぎ、幸福感を高める効果があると言われます。その点、ゴルフは自然の中を長時間歩きながらプレーするため、心身の健康づくりに大きく役立つのです。

また、ゴルフ趣味として楽しむ程度であればそれほどハードではなく、自分のペースで調整できるため、年齢を重ねても長く続けられます。集中力が求められることから、頭脳の健康維持にもつながっているようです。

さらにゴルフは個人競技でありながら、仲間と一緒にコースを回るため、プレー中には自然と会話が生まれます。格好のコミュニケーションの場となる点も、富裕層に好まれる大きな理由でしょう。

ゴルフに限らず、多くの富裕層が「歩くこと」を習慣としています。スティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバーグが歩きながら会議をしたり、ニーチェやベートーヴェンが散歩を日課にしていたことからもわかるように、偉人たちはみな歩くことの重要性に気づいていました。

■領収書を見てわかる「靴へのこだわり」

一方で、私たちの生活は便利になった分、歩く量が減り、さらに機能性やデザイン性を優先した靴を選ぶことで、足のアーチが崩れて偏平足や外反母趾(ぼし)といった不調に悩まされる人も少なくありません。

森田貴子『億万長者になるお金の使い方 富裕層の領収書1000万枚見てきた税理士が教える』(SBクリエイティブ)

だからこそ、歩くことを快適に続けられるように、自分に合った靴を選ぶことがとても大切なのです。

現に富裕層は、靴への支出を惜しみません。見た目のかっこよさよりも、「人間本来の自然な歩き方を保てるか」という基準で靴を選びます。靴のコンシェルジュがいるようなスポーツ用品店で、高価でも自分の足に合った靴やオーダーメイドのインソールを購入している形跡が、領収書からも確認できます。

過度に機能性を重視した靴は、履いていると楽に感じられますが、実は本来使うべき筋肉をあまり使わないため、身体の機能を弱めてしまうことがあります。だからこそ、自然な歩行を取り戻せる靴を選ぶことを大切にしているのです。

写真=iStock.com/kupicoo
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■靴をじっくり選んで買うのは立派な投資

ある方は、自分の足に合った靴に変えただけで、足への負担が格段に減り、足取りが軽くなり、歩ける距離が倍に伸びたと話していました。最近では、5本指シューズや、裸足に近い感覚が得られるベアフットシューズでトレーニングを行う方もいます。足のアーチを鍛え直し、自然な歩行を取り戻すことができるからです。

こうした適切な靴で歩く量が増えれば、健康効果も大きく高まります。靴一足への支出でこれほどの変化が得られるのなら、それはまさに「豊かさを生む投資」と言えるでしょう。

次に靴を選ぶときには、デザインや価格だけでなく「自分が歩き続けられるか」という視点を持ってみてください。その一足が、未来の健康という資産につながっていきます。

『億万長者になるお金の使い方 富裕層の領収書1000万枚見てきた税理士が教える』(SBクリエイティブ)からの引用

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森田 貴子(もりた・たかこ)
富裕層税務コンサルタント・税理士
税理士29年、起業21年目。山口県の起業一家に生まれ社長を支えたいと大学院卒業後25歳で税理士に。経済学修士・商学修士・MBA(豪州)。アーサーアンダーセンなど世界4大会計事務所を経て2003年会計事務所を創業。YojiYamamoto、ダイエーなど100件以上の大型再生案件を税務チームとして担当。日本有数のお金持ちの領収書1000万枚以上や申告から共通するお金の使い方と価値観を発見。栄枯盛衰を見た学びから、税金の正しい知識と自分資産を継続的に積み上げることの大切さを伝えている。明治大学や会計大学院での特別講義、東京都年収の壁セミナー講師、東京商工会議所税務相談員を務める。2023年フジテレビめざまし8」専門家出演。
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(富裕層税務コンサルタント・税理士 森田 貴子)