『君は天国でも美しい』最終回で明かされたソミの正体に涙 ヘスクが選んだ新たな“生”
Netflixで配信中の『君は天国でも美しい』が幕を閉じた。本作は、ソン・ソックとキム・ヘジャを主演に迎えたヒューマンロマンティックコメディで、死後の世界である天国や地獄をスピリチュアルな雰囲気で描いて人々を魅了した。韓国でのテレビ放送時、初回視聴率5.8%から最終話では全国8.3%、首都圏8.9%と自己最高視聴率を更新(※1)し、Netflix週間グローバルランキングでもTOP10入りのまま本作らしさに溢れた優しいフィナーレを迎えた。本稿では、第11話と最終話である第12話を中心に紹介したい。(以下、ネタバレを含みます)
参考:ソン・ソックが優しい夫から“悪役”顔に豹変! 『君は天国でも美しい』怒涛の展開に突入
実年齢83歳の韓国が誇る大女優キム・ヘジャがイ・ヘスク役を演じ、年の離れた夫コ・ナクジュン役を演じた42歳のソン・ソックと素晴らしいケミストリーを見せた。ヘスクは、下半身不随の夫のために苦労して街金で生計を立てていた。ナクジュンの死後、まもなく亡くなったヘスクは、天国で夫と再会を果たす。天国では好きな年齢で生きていけるのだが、ヘスクは、生前のナクジュンの言葉、「どんな時より一番きれいだ」を真に受けて80代の身体のまま生きることを選択する。しかし、再会したナクジュンは30代の見た目となっており、ヘスクとナクジュンは年の差夫婦として天国で暮らすことになる。
ナクジュンが地獄行きの地下鉄から救った女性ソミ(ハン・ジミン)は、ナクジュンとヘスクの子供のことを知っていた。ソミは、記憶を取り戻していくうちに、自分とナクジュンが愛し合っていたことを思い出す。さらに、ソミには愛する息子がいたが、彼を亡くしたことを思い出す。ナクジュンは、天国のセンター長から、ソミの秘密を教えられ愕然とする。
ハン・ジミンが記憶を失くした女性、ソミとして登場後から、彼女の存在の謎は視聴者の関心の的であり、考察も多く見られた。愛人説やヘスクの若い頃説などいろいろな説が出る中で、ヘスクが生きるために“切り取った感情”であったことが天国支援センター長(チョン・ホジン)の言葉により明かされた。「鮮明な記憶であり沸き立つ感情そのもの」「自ら切り離したつらく悲しい感情」「それを抱えては生きられなかった」その想念が人の姿となったものがソミだという。
ナクジュンから自身の正体について聞かされたソミを演じるハン・ジミンがここから凄まじい演技力を見せる。ソミが若き頃のヘスクとして、記憶を取り戻していくさまは、彼女の脳内で何が起こっているのかがわかり、明かされた真実の残酷さと痛ましさに胸が張り裂けそうになる。母として息子をかわいがる様子が一変し、母子の「子育てあるある」が、とんでもない事態に発展していくさまを、まるで実際に体験したかのような迫力で体現したハン・ジミン。我を失い半狂乱となる姿には、彼女の感情がダイレクトに流れ込んでくるようで観ていて一緒に号泣してしまう。それはただの悲しみではなく、自分の落ち度で愛する我が子を喪ってしまうという生き地獄だったのだ。そんな地獄の中にいる若きヘスクとナクジュンが痛ましくて辛い。
天国にいる80代のヘスクは、牧師(リュ・ドクファン)の転生に伴い、彼と天国での別れの言葉を交わす。ヘスクは、牧師の転生日に見送りに行くが彼の姿はなく、牧師を探しに行くが、その頃ちょうどソミが全ての記憶を思い出す。そして、ヘスクは自身が封印していた過去の痛ましい記憶を全て思い出し、鏡の中に入り込み茫然自失の状態となる。
ヘスクとソミ、そして牧師とナクジュンの隠されていた全てのベールが明かされて、物語最大の山場が鏡の中での親子対面となった。ヘスクと牧師の関係性は、回を追うごとに推理している視聴者も多かったが、この場面の残酷で心がえぐられるような悲惨さには、あまりの辛さに声を上げて嗚咽してしまった。SNSでも同様の視聴者が多く見られ、涙なしには見られないとの声が続出した。若きナクジュンとヘスク夫妻、そして愛息子が3人で幸せなひとときを過ごした場面を見ながら、筆者の目にもとめどなく涙が溢れた。
生きている間は、記憶を封印することで生き抜いたヘスクだったが、天国でやっと完全な自分を取り戻せたのだ。センター長の言葉である、「理解し、受け入れて、浄化させなければならない」の言葉通りにヘスクは全ての感情を取り戻して、愛で浄化することができたのだった。
ヘスクとナクジュンは、大きな嵐を乗り越えて互いに揃って転生しようとする。しかし、ナクジュンはまたもセンター長から「ナクジュンさんは転生するよりも、魂の成熟のために次の段階へ進んでほしいです」と意味ありげな言葉を告げられる。センター長は、ナクジュンに「夫婦は鎖でつながれた囚人と言われます。同じ方向へ歩いてしまうという意味です」と語り、これまでの夫婦の前世をナクジュンに見せた。ここでの画面は、観るものに共有はされないが、ナクジュンを演じるソン・ソックの顔色が変わり、喜ばしいものではないことがわかる。ナクジュンが、がっくりと肩を落として帰っていく姿が切ない。
ヘスクとナクジュンが共に天国から転生へのイミグレーションを通過していく。「新しい生」の扉へ続く道すがら、ナクジュンはヘスクに自分は転生しないことを伝える。ナクジュンはヘスクに、「これまで23回夫婦の縁を結んだって」「毎回、君に苦労をかけそのたびに申し訳なく思う、来世では必ず尽くしてあげよう、そう思ってた」「来世では必ず、また来世では必ず……だけど。ごめん」と静かに口にした。ナクジュンは、ヘスクと夫婦になるたびに彼女に苦労をかけたので、今回は転生しないことを選択する。そして、ヘスクはひとり転生して、ナクジュンのいない人生を精一杯生きた。そしてまたヘスクの人生が終わるとき、天国からナクジュンが迎えにやってくる。
エンディングでは、ヘスクが天国で“転生はいいもの”という番組でインタビューを受けている。ヘスクは、生まれ変わったら俳優になりたいと答え、「名を残すことよりも“彼女は温かみのある俳優だった”そう思われたいです」と満面の笑みを見せている。俳優キム・ヘジャとして、様々なキャラクターで多くの人の心を震わせてきた、名優の姿がそこにあった。
キム・ヘジャは、本作について、「もしかすると、これが私の最後の作品になるかもしれません。だからこそ、感謝の気持ちを込めて演じた。心から満足のいくかたちで終えられて、本当に良かった」と制作発表会で語っている。(※2)本作を通じて、ヘスクとしてすこぶるキュートな姿を見せ、ソン・ソックとほのぼのとした夫婦像を演じたキム・ヘジャの姿にはほっこりさせられた。何度も転生し、愛し合っている夫婦なのだと思わせる説得力が、キム・ヘジャとソン・ソックにはあった。さらにキム・ヘジャは、「この作品では“ご縁”について多く語られる。現実にはこんなに美しいご縁なんてなかなかないと思って、この物語をぜひお届けしたかった」と、作品に込めた思いを語っている。(※2)
大型犬のようにヘスクにまとわりつく愛らしいナクジュンを演じたソン・ソックは、これまで演じてきた役柄では、深く濃い闇をまとった、地獄行きは免れないキャラクターが多かったが、本作でソン・ソックの優しく温かな“光”の演技を観ることができ、演技力の確かさを再認識させられた。背筋の凍るような恐ろしいキャラクターから、ナクジュンのような小春日和を思わせるポカポカした雰囲気を纏う役まで、暗色から暖色、さまざまなグラデーションを演じることができるソン・ソック。さらに、ハン・ジミンのもはや演技という枠を超えた体現っぷりや、イ・ジョンウンが持つ役への圧倒的な没入力、牧師役で癒しと涙を誘ったリュ・ドクファン、天国と地獄でカリスマ性を見せたベテラン俳優チョン・ホジンら俳優たちのまさに「神ってる」演技力。物語を紡いだ舞台が天国と地獄だけに、神々が降臨したかのような演技の饗宴だった。
ヘスクと共に死後の世界を垣間見せてもらった私たちは、天国や地獄の様相や、語られる言葉を通じて、雲間から差し込む天使の梯子のように自身の生き方に光を浴びせられたように感じた人も多いだろう。これまでの自分の人生の全てを理解して受け入れて浄化しながら、自分で作り出すことができる未来は、天国行きの電車に乗れるように精一杯に生きていきたいと思わせてくれるドラマだった。
参照※1. https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2025/05/26/kiji/20250526c000413K1045000c.html※2. https://www.cinemacafe.net/article/2025/04/18/99427.html(文=にこ)

