米フロリダ高校銃乱射の容疑者ニコラス・クルスとは何者か

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米現地時間2月14日、フロリダの高校で起こった銃乱射事件。容疑者とされるニコラス・クルスのInstragramには、銃、ナイフ、動物の死骸ばかりがアップされていた。さらに白人至上主義に傾倒していたとも言われており、事件当日は「バレンタインデーには学校へ行かない」と発言している。

2018年2月14日(現地時間)、フロリダの高校で発生した銃乱射事件の容疑者ニコラス・クルス(19)は、物静かな変わり者だったという。いくつかの学校を退学になり、白人至上主義団体Republic of Florida(フロリダ共和国)に所属していたとも言われている。

事件当日クルスは、フロリダ州パークランドにあるマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校を銃撃し、17人を射殺。米国史上最も悲惨な学校での銃撃事件のひとつとなった。犯行には、セミオートのAR-15ライフルが使用された。

「多くの人たちが、彼(クルス容疑者)は何か事件を起こすのではないかと言っていた」と、ある学生が証言した。クルス容疑者は前年に同高校を退学処分にされていた。「彼は学校を銃撃するのではないか、と皆が噂していた」

以下に、クルス容疑者について判明している事実や、今回の悲劇的な銃撃事件を引き起こした背景についてまとめた。

1.クルス容疑者と弟のザッカリーは、まだクルスが幼児の頃、ある老夫婦の養子となった。

養父は10年以上前に他界したが、養母であるリンダ・クルスは2017年11月に肺炎により68歳で亡くなったばかりだった。養母の死後、クルス容疑者はフロリダ州パームビーチ郡にある友人の家族宅にしばらく身を寄せた。しかしクルスは、友人の寝泊まりしていたモービルホームへ移りたいと言い、友人とその両親は承諾。クルスはその後間もなくモービルホームで友人と暮らし始めた。

クルス容疑者の弁護人となったジム・ルイスによると、友人の家族は住居を与えるだけでなく、高卒認定プログラム(GED)を受講し、仕事を見つけるように勧めた。彼は家族の勧めに従い、地元のダラーツリー(ディスカウントストア・チェーン)で働き始めた。「彼は上手くやっているように見えたという」とルイス弁護士はCNNに語っている。クルスは養母の死で落ち込んでいた、と弁護人は説明する。養母のリンダは、クルスの乱暴な行為に手を焼き、警察を呼ぶことがたびたびあったという。

2.同居家族は容疑者が銃を所持していることを承知していた。

ルイス弁護士によると、クルス容疑者が居候していた家族は、鍵付きの保管庫内に入れておく条件で、家の中に銃を置くことを許したという。「問題児を引き取り、彼を支援しようとしていた家族は、そうするのが正しいことだと思っていた」と弁護人はニューヨーク・タイムズ紙に語っている。クルスは事件の前年、身元調査にもパスし、事件に使用した小銃を合法的に購入した。

3.クルス容疑者は事件の前年、校内でのナイフ所持によりダグラス高校を退学処分にされたという。

学校関係者はクルスの退学理由についてのコメントを拒否しているが、娘が彼と同じ学校に通っていたという母親がニューヨーク・タイムズ紙に語ったところによると、クルスは校内に武器を持ち込んだため退学処分を受けたという。

「娘の友人たちによると、クルスはいつも精神的に不安定で、動物を虐待しているのではないかと噂されていた」という。また別のクラスメイトがCNNに語ったところによると、2年生の時にグループプロジェクトに一緒に取り組んだ際、クルスはクラスメイトと打ち解けて話をしていたという。「彼はそれ以前に2つの私立高校を退学になったと言っていた。2度失敗しているが、彼は軍隊に入りたがっていた。彼はハンティングが好きだった」

4.SNSに見られる不穏な思想と行動

クルス容疑者のInstagramには、BBガンと思われるショットガンを振り回す姿や、赤白青のバンダナで顔を覆いロングナイフを持つ姿などがアップされている。またYouTubeには、クルスのものと思われるアカウントから、複数の動画に対して過激なコメントが書き込まれている。

例えば「大量虐殺して戦って死にたい」とか「善人を追い回す法の執行人をいつか殺してやる」、「俺は学校銃撃のプロになってやる」などのコメントが見られる。自分の動画にこのコメントを書き込まれたユーザーが2017年9月、当局へ通報。FBIもCNNの取材に対し、通報を受けたことを認めた。投稿は即時削除されている。

5.FBIはクルスの存在を認識しており、事件の数か月前から彼のネット上での行為に対応していたことを認めた。

自分のYouTube動画に、”Nikolas Cruz”というアカウントから「俺は学校銃撃のプロになってやる」と書き込まれたユーザーは、当局に通報し、FBIも通報を受けたことを認めた。同ユーザーがCNNに語ったところによると、彼は書き込まれたコメントのスクリーンショットを撮り、FBIのホットラインと思われるメールアドレスへ送信した。しかしそのアドレスは無効だったため、電話をかけた。投稿は即座に削除された。

フロリダの高校での銃撃事件後、同ユーザーの元へFBIミシシッピ支局の捜査官が訪れたという。「ニュースで自分の投稿にまつわる話を耳にしたけれども、あまり気に留めていなかった」と事件の翌日CNNに語った。「でもFBIが、コメントしたアカウント名が犯人と同じ名前だったというのを聞いて、”ああ、僕が数か月前に通報した奴をFBIはマークしていたんだな”って思ったよ」

6.クルス容疑者の代理人とフロリダ州ブロワード郡保安官によると、クルスは精神疾患を抱えていたらしい。

ルイス弁護士がニューヨーク・タイムズ紙に語ったところによると、クルスの家系には、うつ病の傾向が見られるという。ただし、暴力にまで発展するとは考えられていなかった。事件の朝クルスは同居していた家族に対し、「バレンタインデーなのでGEDクラスには行きたくない。バレンタインデーには学校へ行かないんだ」と言ったという。ある関係者がフロリダ・サン・センティネル紙に語ったところによると、クルスは自閉症と診断されていたという。

7.クルス容疑者は、白人至上主義団体フロリダ共和国と関係していた。

名誉毀損防止同盟(Anti-Defamation League)は、4chan上の掲示板を通じ、クルスがフロリダ共和国を信奉し、接触していたことを認知していた。ウェブサイトによると同団体は、フロリダにおける「白人国家」を立ち上げるために活動している。団体のリーダーであるジョーダン・ジェレブがザ・デイリー・ビーストに語ったところによると、クルスの個人的な信念は認識していなかったが、「クルス自身は、白人分離主義者による準軍事的なプロトファシズムの団体に所属していたことはよく承知していたはずだ」という。「クルスは、公民権を剥奪されたごく普通の白人青年に見えた」