2561日ぶりJ1先発…浦和MF安部裕葵、長かったブランクの先で「この7年間くらい、考える習慣がなかったので」
[5.2 J1百年構想第14節 浦和 2-0 千葉 埼玉]
Jリーグでの先発出場は鹿島アントラーズ時代の2019年4月28日以来2561日ぶり--。度重なる負傷を乗り越えた浦和レッズのMF安部裕葵が23年夏の浦和加入後最長となる62分間のプレータイムを記録し、新体制での2連勝に貢献した。試合後、報道陣の前に立った27歳は「点決めたかったですね」と振り返りつつ、久々に味わった“試合を作る”充実感をにじませながら改善点を口にした。
前節から就任した田中達也新監督に託されたポジションは4-2-3-1のトップ下。攻撃時は3-2-5の可変布陣を取るなか、序盤の安部は右シャドーのポジションからやや落ちた立ち位置を取ることにより、ポゼッションを安定させ、右ウイングのMF金子拓郎の突破をサポートする意図が見て取れた。
その狙いは「相手が『取れねえな』となって取りに来ない」状態を作ることだった。「前半はタクさん(金子)と(石原)広教の間に入って、相手のボランチとウインガーを引っ張って前進しようと思っていた。それで相手は出られていなかった」。そこで狙いどおりに相手を押し込めるようになると、「感覚としてもうちょっと前に行こうかというところでシャドーに入った」とポジションを前に修正。その時間帯にセットプレーからDF根本健太が先制点を奪い、いわば安部の想定どおりに試合が進んでいった。
その一方で、個人のプレーには課題を感じていたという。「45分間やって思ったのはこの数年間、練習をずっとやってきたので、試合とはやっぱり違う。それをすごく感じた」。19年夏に鹿島からバルセロナに移籍した後、当時スペイン3部を戦うバルセロナBで主力を担った経験はあったものの、その頃から度重なるケガに苦しんできた安部。浦和では4試合に途中出場していたが長らく実戦での先発から離れたブランクが、試合のなかで「リスクを負う」感覚を鈍らせていたようだ。
「試合と練習はプレー選択も違う。練習中はケガをしないようにというのもあったし、リスクを負ったプレーをしないので。成功確率50%でもつっかけていくみたいなタイミングは理解し始めないといけない」
かつては局面の勝負勘で相手を上回ることに長けた選手であっただけに、その勘所は「もともと知っているのですぐにわかる」という感覚はありながらも、この日の前半は「どこかで成功確率が低くてもつっかけていくとか、外していくとか、事故を起こさないといけない」という課題を感じながらプレーしていたようだ。
さらに後半は対戦相手の千葉がハーフタイムの3枚替えにより、プレッシングの圧力を高めてきたことで、新たなブランクにも直面していた。安部自身、前半の終わり頃から高い位置に顔を出すポジショニングに手応えを持っていたため、同様の役割を意識しながら試合に入ったが、相手の修正によって押し込まれる展開が続いてしまったのだ。
「相手も後半に3枚代えてきて、バーっとプレスをかけて来て、あそこでチームとしても僕としても気付けなかった。もう一回ポケットを取り直して、(前半の立ち上がりと同様に)広教とタクさんの間に入って、相手がプレスに行けない環境を作るべきだった。他にも(解決策は)あるけど、僕はそう思った」
ピッチ上では解決策を提示できないまま、後半12分に途中交代。「僕も10分くらいしか出ていないので、10分で気づけなかった。どこで受けたらいいんだろうとか、なんかみんなミス増えたなとか、相手が3枚代わってエネルギッシュに来てんなで頭を止めてしまった。でもあそこで気づけたヤツがもう一回ポケットを取りに行こうよってやったら、もうちょっと余裕を持って行けたのかなと思う」と悔いる形となった。
安部によると、後半立ち上がりのピッチ上の構図は「交代してロッカーでアイシングしていた時にDAZNを見ていて、(映像では)上から見られるのですぐにわかった」。ただ、かつてはピッチに立っていいながらその状況を俯瞰できていたという自負もある。そのギャップは長かったブランクの影響に他ならない。
それでも安部にとって、ピッチの上でこのような感覚を味わえたことも光明となりうる。「それをピッチレベルで感じないといけない。感じられるはずなんですよね。この7年間くらい、考える習慣がなかったので。途中出場では考えることが全然違った」。そんな率直な思いを明かしつつ、最後は「ゲームをコントロールするとなればそういう能力が必要。それはチームとしてもそう。僕だけがこうやったほうがいいと言ってもみんなが違うとなったら違う戦術になるので。でも11人の過半数がそういったことを理解できるようになればもっといい試合運びができるし、90分通して圧倒できると思う」と前向きな展望も口にしていた。
またチームのほうに目を向ければ、田中新監督が就任してまだ2試合目。安部個人がブランクを乗り越えていくというだけでなく、チーム全体の成熟が進むことにより、試合中の修正をはじめとした試合運びがうまく機能していくことも大いに考えられる。
安部は「オフサイド(前半9分に金子のクロスをFWマテウス・サヴィオが押し込んだ場面)とか、チャンスにならないシーンがあったけど、ああいうのはまだ前監督とは全く違う形で試合に臨んでいるので慣れじゃないですかね。まだ2試合目なので。ああいうシチュエーションが今まではあまりなかったのでタイミングはズレるし、選手それぞれのプレースタイルが変わっているようなもの。新しいプレーヤーとプレーしているとなったらズレはあるので、そういうのは多分どんどんなくなってくる。イージーなパスミス、ちょっとしたタイミングのズレは同じサッカーをしていたらどんどん良くなっていくと思います」と言い切った。
ピッチに立つことのできなかった長い日々を思えば、久々の先発出場で浮かび上がったこうした課題もかけがえのない光明。J1百年構想リーグは残り4試合、タイトル獲得から遠ざかるシーズンとはなったものの、選手生命の危機から懸命に這い上がってきた27歳は1試合1試合を噛み締めながら再起への道を歩もうとしている。
(取材・文 竹内達也)
Jリーグでの先発出場は鹿島アントラーズ時代の2019年4月28日以来2561日ぶり--。度重なる負傷を乗り越えた浦和レッズのMF安部裕葵が23年夏の浦和加入後最長となる62分間のプレータイムを記録し、新体制での2連勝に貢献した。試合後、報道陣の前に立った27歳は「点決めたかったですね」と振り返りつつ、久々に味わった“試合を作る”充実感をにじませながら改善点を口にした。
その狙いは「相手が『取れねえな』となって取りに来ない」状態を作ることだった。「前半はタクさん(金子)と(石原)広教の間に入って、相手のボランチとウインガーを引っ張って前進しようと思っていた。それで相手は出られていなかった」。そこで狙いどおりに相手を押し込めるようになると、「感覚としてもうちょっと前に行こうかというところでシャドーに入った」とポジションを前に修正。その時間帯にセットプレーからDF根本健太が先制点を奪い、いわば安部の想定どおりに試合が進んでいった。
その一方で、個人のプレーには課題を感じていたという。「45分間やって思ったのはこの数年間、練習をずっとやってきたので、試合とはやっぱり違う。それをすごく感じた」。19年夏に鹿島からバルセロナに移籍した後、当時スペイン3部を戦うバルセロナBで主力を担った経験はあったものの、その頃から度重なるケガに苦しんできた安部。浦和では4試合に途中出場していたが長らく実戦での先発から離れたブランクが、試合のなかで「リスクを負う」感覚を鈍らせていたようだ。
「試合と練習はプレー選択も違う。練習中はケガをしないようにというのもあったし、リスクを負ったプレーをしないので。成功確率50%でもつっかけていくみたいなタイミングは理解し始めないといけない」
かつては局面の勝負勘で相手を上回ることに長けた選手であっただけに、その勘所は「もともと知っているのですぐにわかる」という感覚はありながらも、この日の前半は「どこかで成功確率が低くてもつっかけていくとか、外していくとか、事故を起こさないといけない」という課題を感じながらプレーしていたようだ。
さらに後半は対戦相手の千葉がハーフタイムの3枚替えにより、プレッシングの圧力を高めてきたことで、新たなブランクにも直面していた。安部自身、前半の終わり頃から高い位置に顔を出すポジショニングに手応えを持っていたため、同様の役割を意識しながら試合に入ったが、相手の修正によって押し込まれる展開が続いてしまったのだ。
「相手も後半に3枚代えてきて、バーっとプレスをかけて来て、あそこでチームとしても僕としても気付けなかった。もう一回ポケットを取り直して、(前半の立ち上がりと同様に)広教とタクさんの間に入って、相手がプレスに行けない環境を作るべきだった。他にも(解決策は)あるけど、僕はそう思った」
ピッチ上では解決策を提示できないまま、後半12分に途中交代。「僕も10分くらいしか出ていないので、10分で気づけなかった。どこで受けたらいいんだろうとか、なんかみんなミス増えたなとか、相手が3枚代わってエネルギッシュに来てんなで頭を止めてしまった。でもあそこで気づけたヤツがもう一回ポケットを取りに行こうよってやったら、もうちょっと余裕を持って行けたのかなと思う」と悔いる形となった。
安部によると、後半立ち上がりのピッチ上の構図は「交代してロッカーでアイシングしていた時にDAZNを見ていて、(映像では)上から見られるのですぐにわかった」。ただ、かつてはピッチに立っていいながらその状況を俯瞰できていたという自負もある。そのギャップは長かったブランクの影響に他ならない。
それでも安部にとって、ピッチの上でこのような感覚を味わえたことも光明となりうる。「それをピッチレベルで感じないといけない。感じられるはずなんですよね。この7年間くらい、考える習慣がなかったので。途中出場では考えることが全然違った」。そんな率直な思いを明かしつつ、最後は「ゲームをコントロールするとなればそういう能力が必要。それはチームとしてもそう。僕だけがこうやったほうがいいと言ってもみんなが違うとなったら違う戦術になるので。でも11人の過半数がそういったことを理解できるようになればもっといい試合運びができるし、90分通して圧倒できると思う」と前向きな展望も口にしていた。
またチームのほうに目を向ければ、田中新監督が就任してまだ2試合目。安部個人がブランクを乗り越えていくというだけでなく、チーム全体の成熟が進むことにより、試合中の修正をはじめとした試合運びがうまく機能していくことも大いに考えられる。
安部は「オフサイド(前半9分に金子のクロスをFWマテウス・サヴィオが押し込んだ場面)とか、チャンスにならないシーンがあったけど、ああいうのはまだ前監督とは全く違う形で試合に臨んでいるので慣れじゃないですかね。まだ2試合目なので。ああいうシチュエーションが今まではあまりなかったのでタイミングはズレるし、選手それぞれのプレースタイルが変わっているようなもの。新しいプレーヤーとプレーしているとなったらズレはあるので、そういうのは多分どんどんなくなってくる。イージーなパスミス、ちょっとしたタイミングのズレは同じサッカーをしていたらどんどん良くなっていくと思います」と言い切った。
ピッチに立つことのできなかった長い日々を思えば、久々の先発出場で浮かび上がったこうした課題もかけがえのない光明。J1百年構想リーグは残り4試合、タイトル獲得から遠ざかるシーズンとはなったものの、選手生命の危機から懸命に這い上がってきた27歳は1試合1試合を噛み締めながら再起への道を歩もうとしている。
(取材・文 竹内達也)
