日本で10年ぶり国際試合 相手は韓国、男子アイスホッケー代表が背負う“未来”への覚悟と使命
4月18、19日に「The Asia Classic Ice Hockey〜日韓代表戦2026〜」開催
アイスホッケー男子日本代表が4月18日(東京)と19日(横浜)に、韓国代表を迎えて「The Asia Classic Ice Hockey〜日韓代表戦2026〜」を実施する。男子日本代表が国内で国際試合に臨むのは、実に10年ぶりのこと。アジアのトップを競うライバルとの対戦は、単に貴重な機会というだけではなく、日本アイスホッケー界の未来にとって重要な機会になるという。
「今回の日韓代表戦は、5月2日から始まる世界選手権(ポーランド)に向けての強化試合であり、子どもたちを含め多くの皆さんにアイスホッケーの魅力を知ってもらう絶好の機会。東京(ダイドードリンコアイスアリーナ)と横浜(KOSE新横浜スケートセンター)で開催されるので、ぜひ会場に足を運んで応援していただければと思います」
そう語るのは、日本アイスホッケー連盟の鈴木貴人強化本部長だ。元日本代表主将で代表ヘッドコーチを務めたこともあり、2024年に現職に就いて以来、日本アイスホッケー界の底上げに努めてきた。最大にして唯一の目標は「五輪出場」。世界選手権トップディビジョンに所属する女子代表は4大会連続出場を果たしているが、同20位の男子は1998年長野五輪以来28年、五輪出場からは遠ざかっている。
だが、近年の強化策が功を奏し、その距離は徐々に縮んできた。今年のミラノ・コルティナ五輪は出場こそ叶わなかったが、最終予選にまで駒を進めた。デンマーク、ノルウェー、イギリスを相手に勝利を飾れず。だが、若手ホープの中島照人選手(レッドイーグルス北海道)は「五輪に行くチームと行けないチームの差を体感できたことで、五輪出場という目標がより現実的なものになりました」と、おぼろげだった目標の実体に触れた感触を掴んだ。
五輪出場への第一歩は世界選手権でのトップディビジョン昇格
2030年のフランス・アルプス五輪出場を見据える上で、日本がまず取り組むべきは毎年開催される世界選手権でトップディビジョンへの自力昇格だ。現在、日本はディビジョン1A(2部相当)に属し、2位以内でトップディビジョンに自動昇格できる。昇格が叶えば、より多くの日本人選手が海外リーグでプレーする機会が増え、日本アイスホッケー界の強化と底上げが期待できる。鈴木氏は「トップディビジョンに昇格すれば、日本アイスホッケー界の景色を変える大きなステップになります」と説明する。
現在、ディビジョン1Aには日本、カザフスタン、フランス、ウクライナ、ポーランド、リトアニアの6か国が名を連ねるが、その実力は拮抗しており、昇格と降格の可能性は紙一重。わずかなミスが命取りになりかねない。それだけに開催2週間前の国際試合は、チームとしてプレーや戦略の最終的な確認が行える貴重な場となる。
現在、世界ランク20位の日本に対し、韓国は23位となっている。毎年冬には両国のプロチームが参加するアジアリーグが開催され、今季こそレッドイーグルス北海道が優勝を飾ったが、昨季までは韓国のHLアニャンが3連覇。ともに強化を進め、アジアのアイスホッケー界を牽引する盟友でもある。世界選手権でディビジョン1B(3部相当)に所属する韓国も2030年の五輪出場を狙っており、韓国の呼びかけをきっかけに強化試合の実施が決まった。
今季アジアリーグでMVPを受賞した中島は、東洋大4年時の2023年からフル代表入りし、感情や気迫を全面に押し出したプレーで魅せるフォワードの選手だ。昨季はイタリアでプレーし、フィジカル面で勝る海外選手としのぎを削りながら、技術とプレー選択の質に磨きをかけた。「日本が世界で勝ち上がっていくためには、フィジカルの強化が絶対的に必要」と感じた一方で、「日本のチーム力はどの国にも勝るし、システムやプレーの実行度は本当にレベルが高い」と日本が持つ強みに自信を見せる。
鈴木氏は、最近の世界的な傾向として、コンタクトプレーなどフィジカルな側面以上に、より細かなテクニックを重視したプレースタイルが主流になりつつあると指摘。「まさに日本が得意とするプレースタイル。チームとしての質を高めていけば、五輪出場も実現できる」と大きく頷く。時代の流れが日本に味方する中で臨む5月の世界選手権、そしてその直前の日韓代表戦が持つ意味は大きい。
日韓代表戦で伝えたいアイスホッケーの魅力
さらに、今回の日韓代表戦にはもう一つ、アイスホッケーというスポーツを愛し、一人でも多くの人に魅力を知ってほしいと願う、すべての関係者が抱く熱い思いが込められている。
日本代表のエースで、今季はドイツ2部のデュッセルドルフでプレーした平野裕志朗選手は、NHLを目指して長らく北米でプレーした。昨季から活動の場を欧州へ移した中で、欧米では1万5000人規模の会場が満員になるのに対し、日本では数千人規模の会場も埋まらない現実があることを、改めて痛感。非日常的なスピードや迫力が魅力のアイスホッケーは同時に、「言葉ではなかなか伝えきれないほど感情が大きく揺さぶられるスポーツ」だと話すが、日本では伝え切れていない事実がもどかしい。
加えて、アイスホッケーでもご多分に漏れず、競技人口の減少が課題となっている。特にアイスホッケーは、子どもたちが「かっこいい! やってみたい」と思っても、すぐに競技を始められる環境が整備しきれていない。平野は「アイススケートのリンクが絶対的に少ないことが理由の1つ。僕も今後、リンクを増やす事業に取り組んでいきたいと考えています」と明かす。
平野は個人の活動として、昨年から福岡で3on3のアイスホッケーイベント「氷刃の乱」を始め、今年も開催が予定されている。19歳から日本代表入りし、日の丸にかける思い、そしてアイスホッケーの未来に寄せる思いは誰にも負けない自信がある。「未来に向けて、この現状を変えていくのが自分の役割。自分の経験から得た知識を還元しながら、連盟や関係者の皆さんと一緒に、競技の普及にも力を注いでいきたいと思います」と強い覚悟を滲ませる。
その熱い思いは、日本代表で時間をともにする仲間や後輩たちにもしっかり伝わっている。中島は「今、自分たちが何かを変えていかないと未来は変わらないという強い使命感や責任感は、僕たちにも伝わっています。だからこそ、代表として日の丸を背負う時は特に、応援してくれる方はもちろん、子どもたちに夢や憧れを持ってもらえるような試合をしたいと意識しています」と胸の内を明かす。
平野が「この2日間は日本のアイスホッケー界が進化するために大きな意味を持つと思います」と言えば、中島は「単なる2試合ではなく、さまざまな意味が込められた試合になる。今後のステップアップに向けて、とても重要な2日間になります」と話す4月18、19日の日韓代表戦。競技の魅力だけではなく、覚悟と使命を持って勝利を目指す日本代表チームの魅力にも触れてもらいたい。
【The Asia Classic Ice Hockey〜日韓代表戦〜】
○開催日時・場所
4月18日(土)14時 Face off ダイドードリンコアイスアリーナ(西東京市)
4月19日(日)14時 Face off KOSE新横浜スケートセンター(横浜市)
○チケット販売など、その他の詳細は日本アイスホッケー連盟ホームページまで
(佐藤 直子 / Naoko Sato)
