〈日本の首相を見たくない〉…要職から外れた金与正氏「金正恩氏の娘と確執の噂も」権力闘争シナリオ
3月22日に北朝鮮の首都・平壌で開かれた最高人民会議で決定された人事が、波紋を呼んでいる。
最高指導者・金正恩氏の妹・金与正氏が、要職である国務委員会のメンバーから外れたのだ。国務委員会は軍事、外交、経済など北朝鮮全体を指導する最高政策機関。与正氏の国務委からの離脱は、さまざまな憶測を呼んでいる。
「噂されるのが与正氏の姪で、金正恩氏の娘ジュエ氏との確執です。ジュエ氏はまだ13歳といわれますが、3月19日の軍事演習を父親と一緒に視察するなど影響力を増しています。’22年11月のミサイル発射実験で公の場に初登場して以来、表舞台に現れる回数が年々増加。昨年9月の正恩氏の訪中にも同行し、後継者の最有力候補と考えられているんです。
一方の与正氏は党の要職を歴任し、’18年4月に板門店で行われた南北首脳会談や同年6月のシンガポールでの米朝首脳会談などにも兄に同行。国内での影響力は絶大です。このまま権力を持ち続ければ、ジュエ氏が正式に後継者となった際に対立の火種となりかねません。そのため与正氏を要職から外し、今のうちに力を削ごうとしているのではないかという見方があるんです」(韓国紙記者)
〈日本が望むからといって〉
こうした憶測を否定するのは、朝鮮半島情勢に詳しい『コリア・レポート』編集長の辺真一氏だ。
「北朝鮮は朝鮮労働党による国家です。国務委の上に朝鮮労働党がある。与正氏は今年2月、党内で『副部長』から『総務部長』に昇進しています。北朝鮮の最要人の一人であることは変わりません。肩書がいくつもあると雑務が増えるため、党の下部組織である国務委のメンバーから外れ、正恩氏の妹として『兄の代弁人』の仕事に専念するつもりなのでしょう。
その証拠に高市早苗首相が3月20日に『金正恩氏と直接会いたい』との意向を示すと、与正氏はこんな談話を発表しました。〈日本が望むからといって実現する問題ではない〉〈個人的な立場ではあるが日本の首相が平壌に来る光景を見たくない〉と。トップの会談について北朝鮮で言及できるのは、正恩氏と与正氏ぐらいです。しかも個人的見解が許されるのですから、兄からの信頼の厚さがうかがえます。拉致問題を抱える日本としても、無視できない存在でしょう」
ジュエ氏と与正氏の関係はどうだろう。辺氏が続ける。
「2人の関係が悪いという話を聞いたことがありません。ジュエ氏が正恩氏の跡を継ぐのは既定路線です。与正氏はジュエ氏の後見人として、姪が成人するまで支え続けると思います。
不安要素は、健康不安説のある正恩氏がジュエ氏の成人前に急死することです。13歳の少女に国の責任を負わせるのはムリでしょう。与正氏が実質的な権力者として、国を動かすことになります。ただ与正氏にも息子がいるといわれます。ジュエ氏が成人になった時に素直に権力を譲るかどうか……。兄の意向が働かないとなれば、姪ではなく成長した自分の息子に引き継がせたいという気持ちが起きても不思議ではありません」
権力闘争のシナリオが現実となるのか――。今は良好な関係の金ファミリーも、一つの変化で血で血を洗うお家騒動に発展しかねない危険性をはらんでいるのだ。
