履歴書に「2年前の証明写真」バレたら解雇?内定取り消し?“3カ月ルール”の法的意味を弁護士が解説
就職活動やアルバイトの応募で提出する履歴書について、指定された「3カ月以内」のルールを破り、数カ月前や数年前の証明写真を使い回してしまったら「懲戒解雇」されてしまうのでしょうか──。
弁護士ドットコムにそんな相談が寄せられています。
相談者は、就職活動で撮影時期の指定があったにもかかわらず、履歴書に「4カ月前」に撮影した写真を貼って提出してしまったそうです。
「もし何らかのきっかけで会社にバレてしまったら、懲戒解雇になるのでしょうか」と不安を募らせています。
●採用後に「写真は3カ月以内」ルールを知る
また、別の相談者は、アルバイトの面接で「2、3年前」の写真を貼ってしまったといいます。
面接前に急いでいたため、自宅にあった写真を使い、採用された後に「写真は3カ月以内のもの」というルールを知って青ざめたようです。
この相談者も「ルール違反を理由に解雇されることはあり得るのか」「現在進めている就活にまで悪影響を及ぼさないか」と気が気ではない様子です。
証明写真の撮影は手間も費用もかかるため、つい手元にある写真を使い回したくなるのは、多くの人が共感できる悩みかもしれません。
しかし、相手が指定した撮影時期を守らないことは、法的に「経歴詐称」や「虚偽申告」にあたり、解雇や内定取り消しの正当な理由になってしまうのでしょうか。今井俊裕弁護士に聞きました。
●顔写真は「本人の同一性を確認するための手段」
──就職活動や資格試験の受験の際に、履歴書や申込用紙に貼る顔写真について、相手が指定した撮影時期を守らないことは、法的に問題となるのでしょうか。
こうした顔写真について、「撮影日から何カ月以内もの」と募集要項や受験要項であらかじめ指示されている場合があります。
これは採用面接や試験会場において、本人の同一性を確実に確認する手段の一つとして設けられているものです。
替え玉面接や替え玉受験といった不正行為を事前に断念させたり、仮に不正行為があった場合に発覚しやすくする目的があります。
したがって、たとえば「3カ月以内に撮影された顔写真を使用すること」と指示があったとしても、その期限自体に特別な意味があるというよりは、上記の目的に由来する便宜的な基準と考えられます。
●期限を守らない写真使用でも「無効」の可能性
──指定された撮影時期を守らない写真を使用したことで「経歴詐称」や「虚偽申告」と指摘されたり、解雇や内定取り消し、試験失格などの理由とされたりすることはありますか。
相当前に撮影された顔写真では、体重や髪型など身体的な変化により、現場での本人確認に支障が生じる可能性があります。そのため、便宜的に「3カ月以内」といった期限が設けられているにすぎません。
したがって、悪意なく、期限を若干過ぎた顔写真を使用してしまったとしても、企業側がいったん採用決定したにもかかわらず、後になって「期限を過ぎた写真だった」という理由だけで解雇したり、合格基準をクリアした受験生に対して事後的に不合格としたりすることは、無効とされる可能性が十分にあります。
ただし、事情によっては結論が異なる場合もあります。
たとえば、企業側に応募者の直近の容貌を確認する合理的な必要性があり、かつ応募者もそれを認識しながら、あえて現在と異なる外貌の写真を使用した場合です。
具体的には、髪型や髪色なども選考基準に含まれることを理解したうえで、基準に適合していた過去の写真をあえて使用したようなケースです。
面接であればその場で判明するかもしれませんが、書類選考だけの場合、企業側が誤って採用決定をしてしまうかもしれません。
このように、不正な意図があり、かつ選考結果に重要な影響を及ぼす事情がある場合には、採用後に事実が発覚したとしても、採用取り消しが有効と判断される余地もあります。
【取材協力弁護士】
今井 俊裕(いまい・としひろ)弁護士
1999年弁護士登録。労働(使用者側)、会社法、不動産関連事件の取扱い多数。具体的かつ戦略的な方針提示がモットー。行政における、開発審査会の委員、感染症診査協議会の委員を歴任。
事務所名:今井法律事務所
事務所URL:http://www.imai-lawoffice.jp/index.html
