VNLのポーランド戦では日本との身長差が際立った【写真提供:VNL】

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ネーションズリーグ女子 平均身長で劣る日本は3位で決勝Rへ

「高さは正義」なのか? 「買取大吉 バレーボールネーションズリーグ2025 千葉大会」は13日まで女子の熱戦が繰り広げられた。日本は9日から4試合を行い3勝1敗。3位で決勝ラウンド(23日〜、ポーランド)に進出した。試合はテレビが地上波で生中継。3年後のロサンゼルス五輪でメダル獲得を目指す新生日本代表の奮闘ぶりが日本中に伝えられた。

「バレーも階級制にしなきゃダメなんじゃない?」。テレビを見た友人が、怒り混じりに言ってきた。「身長差がありすぎるよ。相手が本気出したら、勝ち目ないでしょ」。応援したい気持ちはあるけれど、あきらめ半分なのだという。

 確かに、今大会は衝撃的だった。ポーランド戦のコイントスではキャプテン同士が並ぶが、2メートルのコカルネルク主将に対して石川真佑は174センチ。試合前の整列でも両チームの選手の差は明らかだった。これからの対戦を考えると、ゾッとした(結果は見事に勝利したけれど)。

 試合後、メディアが選手に接触できるミックスゾーンでも相手選手が通るのを見上げた後、日本選手の話は首も疲れずに聞くことが多かった。石川や佐藤淑乃を取材する代表OGたちの方が背が高い。これも不思議な感じだった。

 大会公式資料によれば、日本の最長身は18歳の秋本美空と荒木彩花の185センチ。ところが、他のチームには185センチ以上がズラリと並ぶ。リベロとセッターを除いた平均身長を比べると日本の180.2センチに対してポーランドは191.2センチ。実に11センチもの差がある。

「高さ」で考えれば、身長差以上だ。身長に比例する手の長さも考慮しなければならない。一般的に両手を広げた時の長さは身長と同じ(個人差はあるけれど)。10センチの身長差が、手を伸ばすと15センチ近くの差になる。

日本女子は18チーム中17番目…リベロ導入で世界の高身長化が顕著に

 バレーボールでは、よく「高さは正義」と言われる。2メートル24センチ(男子は2メートル43センチ)のネットを超えてボールが行き交うスポーツ。当然、身長が高い方が有利になる。

 今大会出場18チームの平均身長を、リベロとセッターを除いて比較してみた。日本は17番目、下には178.8センチのタイしかいない。192.9センチで最も高いのが中国、2番目がポーランド、3番目がブラジルと米国の190.7センチで、いずれも決勝ラウンドに進んでいる。

 逆に、日本に次いで平均身長の低い韓国(183.1センチ)と最も低いタイは最下位争い。結局、韓国のリーグからの降格が決まった。結果を見れば、高さと成績はほぼ比例する。だからこそ、その中で日本の3位通過は快挙といえるのだが。

 日本バレーは男女ともに「高さのハンデを技術とスピードで克服」しながら成績を残してきた。古くは1964年東京五輪女子の「回転レシーブ」、74年ミュンヘン五輪男子の「速攻コンビバレー」……。圧倒的な守備力と技術力、不断の努力で体格に恵まれない(が常識だった)日本が世界に伍してきた。

 もっとも、それほど彼我の差は大きくなかった。確かに相手に超長身のエースがいたり、平均身長で劣っていたかもしれないが、せいぜい数センチ。今大会のように平均で10センチ以上も差があることは少なかったように思う。

 銅メダルを獲得した12年ロンドン五輪時の平均身長は175センチだったが、セッターの竹下佳江、中道瞳、リベロの佐野優子の159センチトリオを除けば180センチ超。優勝したブラジルとの差は5センチほどだった。

 平均身長が一気に伸びたのは、1998年にリベロが導入されてからだ。それまでは攻撃が得意の選手でも後衛に回れば守備をしなければならなかった。守備を専門のリベロに任せるようによって、攻撃だけに特化した選手が生まれた。「高さ」だけで活躍できるようになった。

 リベロ導入以降、世界のバレー界の高身長化は顕著だ。96年アトランタ五輪の日本代表はセッターを除く平均身長が177.3センチだったが、予選敗退した2000年シドニー五輪をはさみ、04年アテネ五輪ではセッターとリベロを除いて182.6センチになった。もっとも、世界はこの後も高さを増しているが、日本はこの時が最長身。その後は横ばいか、下降している。

エース石川は174センチだが…各国は190センチが当たり前

 気になるのは「エース」の身長。174センチながらイタリアで経験を積み、世界の「高さ」を苦にしない石川は素晴らしい。同じ174センチの和田由紀子や178センチの佐藤も活躍している。ただ、強豪国のエースは190センチ台が当たり前。「小さなエース」は耳障りはいいが、正直あと20センチ、いや10センチ高ければ頂点に立つ確率も高まるのではと思ってしまう。

 1976年モントリオール五輪金メダルのエース白井貴子は180センチ、80年代から90年代に活躍した大林素子は185センチ、いずれも当時は世界と競り合う高さだった。04年アテネ五輪の「メグカナ」(栗原恵、大山加奈)はともに187センチ、12年ロンドン五輪銅メダルの木村沙織は185センチ。ところが、今の石川らは170センチ台。高身長化する世界との差は開く一方だ。

「高さに対抗して勝つ」と話すアクバシュ監督だが、長身アウトサイドヒッターの必要性は強く感じているはず。秋本への期待の大きさは試合中にも分かった。ミスのたびに肩をたたき、声をかける。そのプレーを「まだまだ」と評した言葉の裏には、エースに育てるという強い決意を感じた。

「でも、結局は高さで負けるんだろ。やっぱり、バレーボールは身長だもんな」と友人。返す言葉に困った。昨年のネーションズリーグでメダルを獲得したとはいえ、「本番」のパリ五輪で1次リーグ敗退したのが現実。コンディションを万全に合わせて臨めば「高さ」にも勝てるだろうが、それが難しい。何しろ「高さ」にはスランプがないのだから。

「高さは正義」がすべてだとは思わないし、日本バレーを見ていると高さを克服して勝つ方法はあると思える。ただ、日本と世界の「高さ」の差があまりに大きくなると、それも難しくなるはずだ。ある意味「高さは正義」は現実だ。

 ネーションズリーグは男子が16日に開幕。こちらも、世界との「高さ」の差は小さくない。サーブで相手を崩し、拾いまくり、つなぎまくる。粘り強さと技術で相手を凌駕する。「高さ」に屈しない、そんな試合が見たい。身長だけで勝敗が決まらないから、スポーツはおもしろいのだ。

(荻島 弘一 / Hirokazu Ogishima)

荻島 弘一
1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者としてサッカーや水泳、柔道など五輪競技を担当。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰する。山下・斉藤時代の柔道から五輪新競技のブレイキンまで、昭和、平成、令和と長年に渡って幅広くスポーツの現場を取材した。