トヨタのミニバンの特徴

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日本の自動車メーカーで数多くの人気車種を生み出している「トヨタ」。コンパクトカーやスポーツカー、SUVと様々なジャンルでブランド知名度の強さを表していますが、ミニバンタイプの車種でもヒット作を世に送り出しています。

トヨタと聞くと、日本全国に広がる販売網の強さに目が行くかもしれません。しかし、モデルラインナップや個々の車種での特徴・強みを打ち出して、ユーザーに購入する・所有する喜びを提供しています。

トヨタが生産・販売しているミニバンの特徴には何が存在するのでしょうか。今回は、トヨタのミニバン人気ランキングを、特徴や選び方を交えて解説します。

■“コンパクト”から“ラグジュアリー”までバリエーションが豊富

トヨタのミニバンに存在する特徴の1つ目は、「“コンパクト”から“ラグジュアリー”までバリエーションが豊富」な点です。

全国各地にトヨタ系の販売店が存在していますが、2020年に販売チャネルが一本化され「すべての販売車種の取り扱い」を宣言・実施されています。チャネルが一本化される前は“トヨタ店”や“トヨペット店”、“カローラ店”、“ネッツ店”などと分かれていました。チャネルごとの専売車種が用意されていた名残が今の販売ラインナップにも反映されています。

過去の経緯から、コンパクトサイズからラージサイズの高級路線の車種まで、多彩なラインナップからお気に入りのミニバンを選べる流れが作られているのです。

また、同じボディ形状を使ったミニバン車種でも、フロントマスクのデザインに違いを加えるなど細かな部分を変更。ユーザーに対して多彩な選択肢を与えています。

■ハイブリッドシステムによる高い燃費性能

2つ目の特徴は「ハイブリッドシステムによる高い燃費性能」です。

1997年に初めてのハイブリッドシステム搭載車「プリウス」を世に送り出して以降、着実にシステムを進化させて優れた環境性能を磨いてきたトヨタ。開発を続けているハイブリッドシステムはミニバンの一部ラインナップにも使用されており、クラストップレベルの燃費性能を発揮して高い評価を得ています。

また、近年のトヨタ車はハイブリッドシステムを搭載していても“走りの楽しさ”を見限らず、逆に走行性能も燃費性能と併せてレベルアップを遂げています。

■「Toyota Safety Sense」による安全装備の充実

3つ目の特徴は、安全装備の充実です。

トヨタの予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense」はミニバンのラインナップ各種でも搭載されており、上手に機能させることで安全運転をサポートします。

自動車が絡んだ死亡事故の約7割が、歩行者との接触や車両同士の正面衝突、走行レーンの逸脱などが原因で起こっているとされているのは周知の通り。トヨタは“交通事故死傷者ゼロ社会”を目指して、多様なシチュエーションでの事故を未然に防ぐべく取り組んでいます。

トヨタでは、NASVA(独立行政法人自動車事故対策機構)による安全性能を図ったアセスメント「JNCAP」にて「自動車安全性能2022ファイブスター賞」を獲得する車種が現れています。2022年度にはミニバンジャンルからも選出されており、他ジャンルのトヨタ車と同様、高い実績がある点がユーザーからも人気を集める要因となっているでしょう。

トヨタのミニバン人気ランキング

2022年現在、トヨタでラインナップされているミニバンを人気ランキング順に取り上げてみました。

コンパクトサイズからラージサイズまで幅広く存在し、ハイブリッドシステムの有無やToyota Safety Senseの充実度など、注目すべきポイントが複数あります。

7つのモデルからお気に入りの1台を見つけてみてください。

■第7位:グランエース

グランエース(2020年)

「グランエース」は、“フルサイズボディ”が際立つラージサイズミニバンです。

フロントシートの真下にエンジンを配置することでボンネットの長さを極力短くして、広大なキャビンを実現しています。室内長は3,290mmと、まるで商用バンやマイクロバスにも匹敵するような車内空間を実現しています。

また、日本の国産車では珍しい4列シート8人乗り仕様をラインナップしているのもポイントです。3列シート6人乗り仕様と比べて足元の広さに余裕がなくなるものの、全幅2,000mm近くのワイドボディを生かして、左右の広さが魅力となっています。

・グランエースの車両本体価格

620万円(G 8人乗り)~650万円(Premium 6人乗り)

■第6位:ヴェルファイア

ヴェルファイア(2020年)

「ヴェルファイア」は”大空間高級サルーン”をキャッチコピーとした、ラージサイズのミニバンです。2008年の初代、2015年の2代目と、“クール&スポーティなエクステリアデザイン”を引き継いでおり、子連れの家庭でスポーツカーが好きな男性に好評のモデルとなります。

外観だけでなく、車内空間にもちょっとした工夫が施されているのもヴェルファイアの特徴。ロングスライド機構付きの「リラックスキャプテンシート」は、足元を広く使えてリムジンカー並みのゆとりを味わえます。ドライバーだけでなく、いっしょに乗る人の心地よさも考えられている点はヴェルファイアを選ぶポイントとなるでしょう。

・ヴェルファイアの車両本体価格

430万6,000円(GOLDEN EYESⅢ 2WD・7人乗り)~515万4,400円(HYBRID GOLDEN EYESⅢ 7人乗り)

■第5位:ハイエースワゴン

ハイエース ワゴン GL(2021年)

「ハイエースワゴン」は、商用バンと基本設計を共有しつつも多人数乗車を可能としたラージサイズのミニバンです。

エンジンをフロントシート下に収納し、FR(フロントエンジン・後輪駆動)レイアウトをベースとしたプラットフォームを採用。運転席からの視界が良好で、運転しやすさを実現しています。

また、バン仕様と異なり乗車定員が「10名」となっているのも注目ポイント。人を乗せるだけなら複数世帯で乗り込むのも可能です。

また、通常の新車だけでなく、一般のカスタマイズチューナーによって多彩なシートアレンジを可能としていたり、キャンプが手軽にできる設備を備えたりした特別仕様が販売されているのも注目ポイントとなります。

・ハイエースワゴンの車両本体価格

290万3,600円(DX 2WD)~403万9,100円(グランドキャビン 4WD)

■第4位:シエンタ

シエンタ(2022年)

「シエンタ」は、5ナンバーサイズのコンパクトミニバンです。初代モデルの誕生が2003年と歴史を積み重ねているモデルとなります。

2022年、7年ぶりのフルモデルチェンジを実施。3代目は、初代および2代目から引き継がれている「扱いやすい5ナンバーサイズ」はそのままに、先進の安全技術と燃費性能を備えているのが特徴です。

歴代モデルと互角のボディサイズとしつつ、大人7名が乗り込んでも問題ない車内空間を実現。加えて、2列目シートの構造を見直して頭上と足元に余裕を持たせています。

エクステリアも、2代目はスポーティな要素を持たせたのに対し、現行の3代目はフランス風のポップな印象へ一新。老若男女に受け入れやすいスタイリングとなっています。

・シエンタの車両本体価格

195万円(X 2WD 5人乗り)~310万8,000円(Z 4WD 7人乗り)

■第3位:ヴォクシー

ヴォクシー(2022年)

「ヴォクシー」はミドルサイズのミニバンです。

通称「ノアヴォク」のニックネームをもつ兄弟車種の片割れとなりますが、アメリカンビレットのようなスポーティな雰囲気はヴォクシーが担当。2001年に登場した初代からその雰囲気は変わらず、個性を強調して「大人のかっこよさ」を表しています。

2022年に登場した現行モデルでは、フロントのヘッドライトが上下に分割点灯するなど、同ジャンルのライバル車種とは一線を引いた外観デザインが取り入れられています。網目状と格子状が組み合わさったバンパーと一体化したフロントマスクで、ヴォクシーと認識しやすいデザインを採用しています。

・ヴォクシーの車両本体価格

309万円(S-G 2WD 8人乗り)~374万円(HYBRID S-Z 2WD 7人乗り)

■第2位:ノア

ノア(2022年)

「ノア」は、ヴォクシーとは兄弟関係にあるミドルサイズのミニバンです。かつて存在した5ナンバーサイズのミニバン「タウンエース」「タウンエース ノア」から歴史を引き継いでいます。

2022年に登場した4代目は、“みんなのミニバン”をキャッチフレーズに、歴代モデルで好評だったポイントを押さえつつ、随所でレベルアップを遂げているのが特徴。すべてのグレードが3ナンバーサイズボディとなり、走行安定性の向上と車内空間の拡大を実現しました。

また「ユニバーサルデザイン」の試みで、老若男女にも受け入れられる機能を搭載。パワースライドドア装着車には助手席側に「ユニバーサルステップ」と呼ばれる電動の補助ステップを装着しました。ヴォクシーとはキャラクター付けで差別化し、物腰柔らかな印象を与えています。

・ノアの車両本体価格

267万円(X 2WD 7人乗り)~389万円(S-Z E-Four 6人乗り)

■第1位:アルファード

アルファード(2022年)

「アルファード」はラージサイズのミニバンです。2002年の初代登場以降、2008年に2代目、2015年に3代目と進化を続けているモデルとなります。

かつては、キャブオーバータイプの1BOXタイプが主流だったミニバンのジャンルに、FF(フロントエンジン・前輪駆動)レイアウトの本格派として誕生。ジャンルの定義を一変させた車種です。

アルファードには”ダイナミック”を強調した外観デザインが武器として備わっています。上部から下部のバンパーまで覆われている大型のメッキグリルは迫力満点。公用車でも多々使用されるほどの高級感が強みで、アルファードと認識しやすいほどのインパクトです。

加えて、走行性能面では、リヤサスペンションはダブルウィッシュボーン式を採用するなど乗り味にも工夫が加わっています。空力抵抗も細かく意識して作られたボディと一体化することで、車内の静粛性も抜群です。

・アルファードの車両本体価格

359万7,000円(X 2WD・8人乗り)~775万2,000円(HYBRID Executive Lounge S 4WD 7人乗り)

トヨタのミニバンの性能比較

2022年現在、トヨタでラインナップされているミニバン同士で性能を比較してみました。
「ボディサイズ」「エンジンスペック/駆動方式」「Toyota Safety Sense機能比較」と、3つの項目をピックアップして比べています。

トヨタのミニバン同士で購入を迷っていたり、お気に入りのモデルのスペックを知りたい際にチェックしてみてください。

■ボディサイズ

ボディサイズ一覧

■エンジンスペック/駆動方式

エンジンスペック/駆動方式 一覧1
エンジンスペック/駆動方式 一覧2

■Toyota Safety Sense機能比較

Toyota Safety Sense機能比較 一覧1
Toyota Safety Sense機能比較 一覧2

トヨタのミニバンを選ぶときのポイント

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多彩なバリエーションとハイブリッドシステムの技術力、安全性能の高さがセールスポイントとなるトヨタのミニバンラインナップ。

選ぶのに迷ってしまいそうなほど優れた要素がそろっている中で、トヨタのミニバンをどう選ぶべきか、3つのポイントをピックアップして解説します。

■ボディサイズの大きさと車内空間の広さ

1つ目は「ボディサイズの大きさと車内空間の広さ」です。

日ごろから乗車する人数、使用用途などユーザー側のニーズと、車のボディサイズや車内空間の広さを一致させることで、より購入したい車が絞りやすくなるでしょう。

例えば、「夫婦+子供1人」で、市街地でのお出かけがメインの使用用途となるなら、シエンタが向いているでしょう。5ナンバーサイズのボディながら十分な車内空間を誇り、かつ、市街地での取り回しにも向いています。

その他にも、大人と子どもが入り交じった6人程度の乗車人数で、遠くのレジャー施設へ遊びに出かけるなどがメインであればよりボディサイズが大きめのミニバンがおすすめです。手ごろなボディサイズ感なら「ノア」「ヴォクシー」、ゆとりのある空間を求めるなら「アルファード」が適したチョイスとなるでしょう。

■ハイブリッドシステムが搭載されているか

2つ目は「ハイブリッドシステムが搭載されているか」です。

トヨタのミニバンラインナップでは、ガソリンエンジン単体に加えてハイブリッドシステムを搭載・採用している車種も存在します。

シエンタ ノア ヴォクシー アルファード ヴェルファイア

いずれの車種も、ガソリンエンジン単体グレードと併売されているのが特徴ですが、注目すべきは燃費性能の差です。例えば、ノアのグレード同士で比較すると次のような性能差があります。

ガソリンエンジン単体「S-Z」:15.0km/L ハイブリッドシステム「S-Z」:23.0km/L

※WLTCモード燃費数値

同じグレード名で、ほぼ主要な装備や仕様が同じにもかかわらず、WLTCモード燃費のカタログ数値で大きな差がついているのが見て取れるでしょう。実際に使用した際でも同様の実力差となると考えられており、燃費性能を取るならハイブリッドシステムを搭載した車両が優位です。

・【補足】車両価格と燃料代に注意!

しかし、燃費性能が優れている分、車両の本体価格もしっかり把握してミニバンを選ぶのが大切です。

ガソリンエンジン単体の搭載車とハイブリッドシステム搭載車では車両本体価格に差があるようです。

ノアのグレードを例に、ガソリンエンジン単体の搭載車とハイブリッドシステム搭載車で廉価グレード同士の価格を比較してみると興味深い事実が明らかとなります。

グレード「S-Z」2WD仕様(ガソリンエンジン単体):332万円(税込) グレード「HYBRID S-Z」2WD仕様(ハイブリッドシステム仕様):367万円(税込)

廉価グレード同士を比較してみると、およそ35万円程度の差があるようです。

実際に所有した際、この差を埋めるにはどれほどの時間や労力を要するのでしょうか。燃料代のみではありますが簡単に考察してみました。

燃料代の計算方法は次のとおりです。

「年間走行距離÷年間平均燃費×ガソリン価格=合計費用」

なお、計算を行う際、次の2点を補足事項として考慮しています。

年間走行距離、ガソリン価格は仮定の数値 タイヤ交換、オイル交換などガソリン代以外のランニングコストは省く
燃料代の比較例(ノア グレード「S-Z」および「HYBRID S-Z」を参照)

ノアの性能を考慮した仮定の数値ですが、平均燃費や1年間での走行距離、ガソリン価格を考慮すると、2倍近く差が出るケースが考えられるようです。車両本体価格に35万円程度の差があるとするなら、およそ5年ほど所有を続けて乗り続ければ差額が埋められる計算です。

最初の車検までの3年間までとりあえず所有し、早めの買い替えを検討しているならガソリンエンジン単体の搭載車でも損は生まれにくいでしょう。しかし、10年間など長期で同じ車種を乗り続けるなら、ハイブリッドシステム搭載車を購入するのが適していると考えます。

予算や使用用途も絡んでくるポイントとなるので、ガソリンエンジン単体の仕様とハイブリッドシステム仕様はよく考慮して車選びを進めるとよいかもしれません。

■「Toyota Safety Sense」の機能がどれほど使われているか

3つ目は、「“Toyota Safety Sense” の機能がどれほど使われているか」です。

このポイントに関しては、2022年にニューモデルが登場したばかりのノアやヴォクシー、シエンタ」がリードしているでしょう。

特に、ノアとヴォクシーでは、「緊急時操舵支援」「フロントクロストラフィックアラート」、「レーンチェンジアシスト」と、名称のとおり緊急時にもドライバーを手助けしてくれる機能が備わっています。

ボディサイズやハイブリッドシステムの有無と同様に、Toyota Safety Senseの機能が充実しているかどうかチェックすべきではないでしょうか。