陸上男子4×100メートルリレー「安全バトン」で予選9位の日本代表が期す大逆転

◆予選の着順が直結する傾向
過去5大会の結果を参照すると、「予選全体5位以内(シドニーオリンピックのみ準決勝の順位)」に入っていることがポイントとなる。過去5大会で5位以内に入っていない代表チームがメダルを獲得したことはない。予選で主力を温存するチームもあるが、やはり予選での順位は重要となってくる。しかし、5位以内であれば金メダル獲得の可能性もある。リオ大会で金メダルを獲得したジャマイカ代表は、予選2組2位で全体5位だった。
これは、今大会の予選で全体9位だった日本代表にとって不利なデータといえる。自国開催というアドバンテージを持っている”リレー侍"は、このデータを覆すことができるのか。
◆バトンパスを武器とする”リレー侍”
〇多田修平
スタートダッシュを得意とする2021年日本選手権王者。4×100メートルリレーのメンバーとして、2017年と2019年の世界選手権でともに第1走者を務め銅メダルを獲得。近年はスタートだけでなく、後半のスピード持続能力向上に取り組んできた。
今大会の男子100メートル予選では、スタートで大きなリードを奪えず、6着に終わった。リレーでは、王者の意地を見せてもらいたい。

〇山縣亮太
力強いスタートと一気にトップスピードへ達する加速力を併せ持った日本記録保持者。これまでは独自のトレーニングスタイルにこだわり、特定のコーチはつけずにやってきたが、高野大樹氏にコーチングを依頼。高野氏の指導が功を奏し、6月に開催された布勢スプリント2021で9秒95という新記録を叩き出した。
今大会で3度目のオリンピックとなるが、初の予選敗退を経験。大舞台での勝負強さを今度こそ発揮できるのか。

〇桐生祥秀
1秒間に5歩も刻める高速ピッチを武器とする”ジェット桐生”。トップスプリンターとして活躍を続けてきたが、今季は右アキレス腱痛に悩み、日本選手権の100メートルで5位に沈んで個人種目での代表入りを逃した。それだけに本人も「僕はリレーをしに来たのでそこに集中しています」と語る。復調しているならば、世界トップクラスの切れ味を見せてくれるはずだ。
〇小池祐貴
誰よりも「世界一」にこだわる遅咲きのスプリンター。1984年のロサンゼルスオリンピック・男子走り幅跳び7位の臼井淳一氏から指導を受けている。臼井氏の教えで、練習では全力を出し切らず、余力を残した状態で改善点を探すという方法で自身の走りを見つけ出した。
「僕は世界一になりたいんです」と語る小池が日本代表を金メダルへと導くかもしれない。
〇デーデー・ブルーノ
一瞬の爆発的なパワーを秘めた男子短距離界の新星。ナイジェリア人の父と日本人の母を持ち、高校1年生まではサッカー部に所属していた。競技歴はわずか5年ながら、日本選手権の100メートルで2位に割って入った。「自信がない」と何度も語るスプリンターらしくない性格であることも面白い。
大きな可能性を秘めた若き逸材が金メダル獲得へのキーマンとなる。
個性豊かなメンバーに見えるが、日本史上最速の布陣である。ここに日本のお家芸、バトンパスが加われば、金メダル獲得も決して夢ではない。
予選後に出場した4人は「安全バトン」という言葉を口にした。これはバトン技術に関しては、まだまだ改善の余地があるということだ。決勝に向けてバトン技術をどこまで上げるか、どこまで攻めるかが巻き返しのポイントとなるだろう。
◆本命不在、波乱含み?日本のライバル国は…
金メダル候補の一角だったアメリカが予選2組の6位で敗退した。予想外の結果となり、5日のTwitterで「アメリカ予選落ち」がトレンド入りするほどだった。そんな本命不在ともいえる決勝で、日本代表の前に立ちふさがるライバル国をいくつか紹介する。
〇ジャマイカ
何が起こるか分からないリレーではあるが、やはり予選全体1位の国は強い。今大会の予選全体1位は、ジャマイカだ。ウサイン・ボルト引退後、飛び抜けた存在はいないが総合力の高さは健在だ。

〇中国
リオ大会では4位とメダルに一歩及ばず雪辱に燃えている中国は、予選全体2位で通過した。レースでは、エース・蘇炳添が圧倒的な走りを見せた。31歳のベテランではあるが、男子100メートルの準決勝でも自らのアジア記録を0秒08更新する9秒83を記録した。蘇は今がまさに全盛期なのかもしれない。
〇イタリア
男子100メートルで金メダルを獲得したラモントマルチェル・ヤコブス擁するイタリア。今季に急成長を遂げたヤコブスが勢いそのままに、2個目の金メダル奪取なるか。
〇イギリス
女子4×100メートルリレーの予選で2位に差をつけトップ通過となったイギリスだが、男子も決して負けてはいない。選手層は厚く、バトン技術も日本に引けを取らない。2004年のアテネオリンピック以来の同種目金メダルを目指す。
日本中が注目する4×100メートルリレー。侍たちが悲願達成へ全力で走り抜ける。
◆決勝日程
8月6日(金)22:50〜 男子4×100メートルリレー 決勝
