沖縄県で黒糖の販売が苦戦していることを受け、JAおきなわは「特命プロジェクト推進室」を新設し、消費拡大に力を注いでいる。近年の豊作や加工黒糖、輸入物などとの競合が影響し、県内の製糖工場の在庫量は約2500トン(9月末現在)と過去にない水準だ。製糖業者は販売努力を重ねるが、国の制度が白砂糖と異なるため負担が重いと危機感を募らす。離島を支える重要品目だけに行政の支援を求める声が上がる。

 JAおきなわや製糖業者でつくる県黒砂糖工業会によると、県内の黒糖生産量は過去20年の平均で年間約8000トン。一方、ここ3年は同9000トン超で推移した。同7000〜8000トンとされる需要量を超え、工場段階で在庫が積み上がった。製菓業者など実需もそれぞれ別に在庫を抱えており、買い控えにつながっている。

 類似商品との差別化が難しい面もある。黒糖に糖蜜などを加えた加工黒糖や、黒糖を使わない加工糖は、サトウキビだけが原料の純黒糖と異なる。だが、違いが十分に浸透しておらず、加工黒糖や加工糖を手にする消費者は多い。

 安価な輸入物との競合も激しい。同会の本永忠久専務は「生産量が5000トン台に落ち込んだ2011、12年産に輸入に切り替えた業者もある」と説明。不作時に需要を奪われた影響が尾を引いており、「製糖工場の経営に響く」とみる。

 県内で黒糖を生産するのは8離島の製糖工場。その一つ、本島北部の伊平屋村で工場を営むJA伊平屋支店によると、管内の黒糖の在庫量は538トン(9月末現在)。JAでオペレーターを確保して生産拡大を支えてきただけに、過剰に膨らんだ在庫は悩みの種だ。同支店の諸見直樹支店長は「増産を喜べるようにしたい」と言う。

 同村の3・3ヘクタールでサトウキビを栽培する安里武雄さん(70)は、耕作放棄を防ぐために農地を引き受けて規模拡大してきただけに「生産を続けられるか不安だ」と訴える。輸送に時間を要す離島は生鮮野菜の栽培に向かないとして、「製品を保存でき、台風にも強いキビが島の生命線だ」と強調する。国境離島の基幹品目が行き詰まれば、安全保障上の問題にもなる。

 関係者は販売拡大に乗り出した。JAは10月、黒糖の在庫解消などに当たる前田典男専務直轄の「特命プロジェクト推進室」を新設、実需者への働き掛けを強める。県黒砂糖工業会も、純黒糖をPRするマークを商品に表示して加工黒糖などとの差別化に努める。

 国の支援を求める声もある。黒糖は白砂糖と違い、農水省ではなく内閣府の管轄。国の糖価調整制度に基づく交付金の支えがない。黒糖向けの補助事業が別にあるが、黒糖の工場は生産者に支払う額が白砂糖より多く、負担が大きいため、同会などは政府に白砂糖と同等の支援を求めている。

 同会の本永専務は「在庫は大きな悩みだ。増産しても販売できる体制を国と共に整えたい」と要望する。