「ジャンボ尾崎は出場するだけで1000万円」狂乱の時代から一転、男子ゴルフはどのタイミングで”死に体”になったのか
かつての男子ゴルフツアーは、スター選手の活躍がテレビ視聴率をけん引していました。なのに最近の男子ツアーはスターが不在。新しく現れる兆候はありません。
そしていまだスターを育てようとしない日本ゴルフ界の指導者達は、何を考えているのでしょうか。スターは湧いて出て来るものではありませんよ。これから、いかに日本の男子ゴルフ界が、スター頼みだったかを書かせて頂きます。
男子ゴルフの視聴率が高かった時代には…
ジャンボ尾崎選手に1000万円を払い、試合出場を依頼したのはバブル景気真っ盛りの頃です。私が出演していた、某ローカルテレビ局が恒例の男子ツアーを開催しようとしていました。
テレビ局員と雑談をしていると、どうやらジャンボ尾崎が、そのトーナメントにエントリーしない可能性が出て来たと。ジャンボが試合に出ると出ないとじゃ、視聴率が雲泥の差になる。これはローカル局の一大事、関係者と相談し、何か手を打とうとなった次第。
地方局にとってのトーナメント中継は、年に一度の美味しいボーナスです。当時はローカルテレビ局がトーナメントを主催(または共催)して、放映権を持っていました。だからトーナメント中継のキー局として全国ネットを組み、莫大な放映権料を得られたのです。
ゆえに当時は、地方局の冠がついたトーナメントが多かった。視聴率も良くて、平均でも10%台、盛り上がれば15%もイケる時代です。さらに土曜日の中継すら、そこそこ数字が取れたのです。
当時、視聴率を稼げるスター選手に、おカネを払うのはさほど珍しいことではありませんでした。今でいうと“ステマ”みたいなものでしょうか。
サッカーと野球は「テレビ離れ」にすぐ対応
ちなみに日本の男子トーナメントの最高視聴率は、1981年の「ゴルフ日本シリーズJTカップ」の18.1%、ついで2位が1983年の同じく「ゴルフ日本シリーズJTカップ」で17.8%。この時は青木功が優勝しています。
調べると歴代視聴率10位までの試合で、ジャンボ尾崎は優勝していません。当時のジャンボ尾崎はあまりにも強いので、むしろ試合がデッドヒートし、打ち負かされたぐらいのほうが視聴率を稼げたのでしょう。
さきほどのジャンボ尾崎におカネを払ったローカル局も、予選2日間の出場料で後は本人の成績次第。だから予選通過をしても下位なら、決勝トーナメントを欠場することもあります。
その後の男子ゴルフ界はAON(青木功、尾崎将司、中嶋常幸)人気に陰りが見え、プロスポーツ全体の視聴率も、趣味&余暇の多様化を受けて長期低落傾向となります。プロ野球、サッカー、ゴルフはいずれもテレビ離れが顕著となり、地上波放送の回数も減る一方に。
この視聴率が取れない状況に、いち早く対応したのがサッカーと野球です。どちらも地域に密着したサッカーのサポーター制、野球はフランチャイズ制を導入し、観客動員数増加でテレビ放映権収入の損失をカバーしたのです。
特にプロ野球は12球団の観客動員数が2850万人(2025年)で、1試合の平均入場者数は2万8000人越え(セパ合わせての平均)と全盛期に匹敵する勢いです。プロ野球は球場を改築し、VIPルームやファミリールームなどをもうけ、ファン感謝デーを開催したりと、お客さんとの交流サービスに余念がありません。
「わざわざ他人のプレーを観に行くか?」
ゴルフの場合、試合会場が遠隔地で交通の便が悪いというハンデもありますが、そもそもが入場料収入で賄うビジネスではないのです。男子ツアーの場合、入場チケットを地元の団体や開催コースに押しつけたり、協賛スポンサーの招待枠も沢山あります。どれだけ真水の入場料収入となっているかは謎です。
しかも男子ツアーのギャラリー数減少は深刻で、日本オープンの4日間通しの総入場者数が、1万人に届かないこともありました。ちなみに男子ツアーの総ギャラリー数は23万人(2025年、22試合)で、プロ野球と100倍以上の開きがあります。
ゴルフファンのほとんどがゴルフを嗜むプレーヤーです。わざわざ遠出して、なんで他人のプレーを観なきゃならないのか? トイレだってギャラリーは、クラブハウスや売店のトイレは使えません。基本工事現場にあるような簡易トイレを使うので、温水洗浄便座なんてありません。夏は蒸し暑いし、匂いも気になるし、雨は最悪だしと高い入場料を払うわりに、観戦環境はさほど良くないのです。
そんな面倒臭いことをしてまで、観に行きたい選手はどれだけいるのか。個人的にはジャンボ尾崎、タイガー・ウッズの試合を観戦し、もの凄く満足しました。今観に行くなら松山英樹か外国のメジャー優勝者でしょうね。
結局のところ、ゴルフの試合はスポンサーありきのビジネスモデルです。スポンサーの企業イメージアップを、いかにさせるかが鍵で、試合中継のテレビ視聴率がその指標となっていました。
石川遼の登場、さらに松山英樹が活躍するも…
2006年の男子トーナメント、全29試合の平均視聴率は4.4%。充分危険水域に達しています。もうダメかという矢先、2007年に神風が吹きます。石川遼の登場です。
高校1年生でトーナメントを優勝した石川遼は、翌年すぐさまプロ入りし、徐々に成績を上げて早くも優勝し、視聴率も上昇傾向に。2009年の石川遼は念願のマスターズ出場を果たし、国内ツアー4勝で賞金王に輝く活躍ぶり。優勝に絡む試合は軒並み10%超え。圧巻は日本オープン最終日で16.1%という歴代5位の視聴率を記録します。石川遼黄金時代の始まりです。
その後、松山英樹も現れて、このツートップの活躍で持ちこたえたかに見えたのですが、2014年から松山英樹はPGAを主戦場に移し、石川遼もスイング改造などでプチスランプに陥ります。2025年の男子トーナメントの平均視聴率は2.4%というありさま。ちなみに2025年の男子ツアーの最高視聴率は石川遼が優勝争いに絡んだ「バンテリン東海クラシック」の6.5%です。2026年は石川遼が渡米してるので、出場出来る試合も限られています。
気づいたら女子ツアーにも大きく水を空けられている状況。今や地上波でテレビ中継を行う試合は、数えるほどしかありません。肝心のネット配信も課金が多く、シニア層はおカネを払ってまでゴルフの試合を見ないでしょう。
現在トーナメント中継のメイン視聴者層は、団塊&バブル世代のシニア層。彼らの寿命が尽きる時、いったい誰が男子ツアーを応援するのか? 心配でなりません。
【後編記事】『石川遼にあって松山英樹に足りない…「男子ゴルフ界スター不在問題」いま必要なのは勝利より“キャラの強さ”か』へつづく。
【つづきを読む】石川遼にあって松山英樹に足りない…「男子ゴルフ界スター不在問題」いま必要なのは勝利より”キャラの強さ”か
