27分台の記録で優勝を果たし、右手を突き上げる早大の山口竣平=菅野靖撮影

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 トラックシーズンたけなわの春、学生日本一を決めるレースが行われた。

 4月24日に神奈川県平塚市で行われた、日本学生対校選手権1万メートル。記録を狙って他の競技会を選ぶ選手も多い中、各校の主力を担う粒ぞろいのランナーたちが、ハイレベルな走りを見せた。(編集委員 近藤雄二)

けん制し合うレースは「面白くない」

 出場者はわずか8人。ただ、そのうち6人は正月の箱根駅伝で、区間上位を争った精鋭たちだった。

 号砲直後、先頭に立ったのは早大の山口竣平(3年)だった。4月に入って左脚を痛め、大会直前に出場を決めたというが、「けん制し合うレースは、見る方も走る方も面白くない」とハイペースで引っ張った。

 一時後方に下がって様子を見ると、3700メートル付近で意表をついて集団から抜けだした。独走に入っても後続を引き離し、5000メートルは13分55秒で通過。ラスト1周ではタイムを確認してスパートし、自己記録を1分以上上回る27分59秒47でフィニッシュした。「全く望外だった」という27分台に、右手を突き上げた。

 今年の箱根は3区8位。堅実な走りで往路準優勝に貢献したが、昨秋に左大腿(だいたい)骨を疲労骨折した影響もあり、納得できる結果ではなかった。その悔しさを踏まえ、チームを勢いづける走りを狙った一戦で、6000メートル以上を独走して優勝。「自分でレースを作っての27分台。強さの証明はできたと思う」と胸を張った。

 今春には昨年の全国高校駅伝1区の上位3人が入学。チーム力が大きくアップする中、学生日本一に輝いた山口は「早稲田は個で勝つというのがテーマ」と言い切った。「僕は準エースでいいかな」と冗談めかしたが、秋の駅伝シーズンへ、自信を深める飛躍となった。

2位争い制した順天堂大・吉岡大翔

 最後まで激戦となった2位争いを制したのは、順大の吉岡大翔(ひろと)(4年)だった。勝った山口については「いつか落ちてくる」と見て逃がしたが、終始2位集団で好位置をキープした。

 残り2周は3人の集団の3番手。前を行く2人の動きを見極めると、残り650メートルでスルスルと2位へ上がった。ロングスパートから最後の直線も力強く駆け抜け、きっちり逃げ切った。

 ただ、狙っていたのは学生日本一。「競り合いで勝ち切れたのは良かったが、やっぱり悔しい気持ちの方が大きい」と振り返った。

 山口と同じ長野・佐久長聖高出身。5000メートルで高校記録を作って入学したが、思うような活躍をしてきたわけではない。「大学では悩むことの方が多かった。悩んで、苦しんで、時に楽しみながらやって、自分なりの陸上競技がようやく確立されてきたと思う」

 その結果、今年の箱根では初の2区に挑み、1時間6分28秒の好記録で区間9位。チームの総合3位躍進にしっかり貢献した。そして、今大会では優勝は逃したものの、自己記録に約4秒まで迫る28分12秒22の好記録で2位に食い込んだ。

 「今日は最低限の表彰台だったけど、まだまだトラックシーズンは続く。引き続きチームに勢いをつけていきたい。そして、最後は箱根で優勝したい」

 2年時の箱根では、7秒差でシード権を逃す悔しさも味わった。「どのチームよりも勝ちたい思いは強い」と自負するエースは、さらなる進化を見据えている。

強力ルーキー加入で刺激

 そして、スプリント力で表彰台を引き寄せたのが、早大で山口と同学年の吉倉ナヤブ直希だった。

 ラスト1周では、筑波大の川崎颯(4年)に数メートル遅れる4位。しかし、最後の直線に入る前に川崎をかわすと、吉岡を猛追して3位でゴールを駆け抜けた。自己記録を30秒以上更新する28分13秒07。「スピードには自信があったので、絶対3番には入ろうと思った」と笑顔を見せた。

 今年の箱根1区では1時間0分58秒の好記録で7位。チームが5区途中まで首位を走る流れを作った。「手応えがある走りができて楽しかった。新1年生は乗りに乗っているので、自分も負けないように頑張って、箱根ではまた1区を走って完勝したい」

 トラックシーズンで好調が続く早大勢。下からの強烈な突き上げが、エンジのユニホームに確かな勢いをもたらしている。