夕食会発砲の容疑者は「フレンドリーな暗殺者」を自称 米国で増える“普通の男”の暴力事件【トランプ2.0 現地リポート】
【トランプ2.0 現地リポート】
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4月25日、トランプ大統領が出席していたホワイトハウス記者協会主催の夕食会の最中、会場付近で起きた発砲事件は、何とも言えない嫌な後味を残した。大統領は無事で、容疑者はその場で拘束、暗殺未遂の疑いで起訴された。しかし、トランプ氏に対する3度目の深刻な襲撃事件は、一件落着とは言い難い。
その理由のひとつは、コール・トーマス・アレン容疑者の人物像だ。
31歳、名門カリフォルニア工科大学の出身で、博士号を持つエンジニアと報じられている。本人のSNSによればゲーム制作や家庭教師の仕事をしていた。NASAのフェローシップ・プログラムに参加した経験もあり、教育分野で表彰されたこともある。
ロサンゼルスの閑静な住宅地に住み、教会にも通っていた。政治的には、民主党に1度少額の寄付をしたのが確認されている。経歴だけ見たら、要人暗殺を企てる人物とは思えない。
彼は4月21日に自宅を出発し、列車でワシントン入り。夕食会の前夜、会場のヒルトンホテルにチェックインしたという。当日、複数の武器を持って、警備検査場を走って突破しようとしたところを拘束された。
捜査には黙秘を続けているが、凶行直前に送られた家族宛てのメールでは、政権に対して鋭い批判を表明している。トランプ氏の名前や、暗殺計画の具体的な詳細は言及されていないが、政権を「裏切り者」と非難、高官らを標的にしていたことも記されていた。
■不気味さと後味の悪さ
不気味なのは、自身を「フレンドリーな連邦暗殺者」と呼んでいることだ。そこには、自分は正義を実行しているという確信がにじむ。この構図は、2024年12月、医療保険大手CEO、ブライアン・トンプソン氏を射殺したとして起訴された、ルイージ・マンジオーニ容疑者を想起させる。
近年アメリカで増える、強い使命感を帯びた単独犯型の暴力事件とも重なる。中でも目立つのは、社会から脱落した人物には見えない、学歴も仕事もある男たちだ。
今アメリカで恐れられているのは、「過激派の怪物」ではない。外からは普通に見える人間が、ある日突然、自らを正義の執行者だと信じて銃を手にすることだ。その不気味さこそが、この事件の後味の悪さなのである。
(シェリー めぐみ/ジャーナリスト、ミレニアル・Z世代評論家)
