「ゴミ回収員って、本当に底辺だと思いますか?」で万バズ、美女起用で応募殺到…人手不足業界で過熱する“採用TikTok”の実態
◆「ゴミ回収員って、本当に底辺だと思いますか?」で万バズ
とある平日の午後、東京都足立区内の駐車場で、ゴミ収集車を背景に撮影を行う3人の男女の姿があった。この日男性が扮していたのは、無許可の不用品回収業者という役柄だ。
女性2人から次々と繰り出される指示に、素直に従う男性。慣れない口調で「カネもらわねえと話になんねえんだよ!」とセリフを読み上げると、「ちょっと下手ですね」と、容赦のないダメ出しを受ける一幕もあった。
女性たちの言いなりになっているようにも見えるが、実はこの男性、廃棄物の収集運搬を手がける利根川産業の経営企画部部長・利根川靖さん(47)。同社にパート社員として勤務する子持ち主婦のアミーさん(33)、いーちゃんさん(31)とともに、SNS企画・撮影全般を手がけている。複数あるアカウントの中でも’23年に開設したTikTokはフォロワーは5.5万人、投稿した動画の総「いいね」数は116.3万回(数字は’26年4月時点)と屈指の人気を誇る。
アカウントが注目を浴びたきっかけは、’23年9月に公開されたとある動画がきっかけだった。「私は底辺職業と噂のゴミ回収員。でもゴミ回収員って、本当に底辺だと思いますか?」といういーちゃんさんの呼びかけから始まるこの動画は、1万4700回近い「いいね!」を獲得。その後も「底辺職業」をフックとした動画を次々と公開し、’24年1月時点で約3800人だったフォロワー数を1年後の’25年1月には、10倍以上の約4万人にまで伸ばした。
動画の中で「底辺職業」というパワーワードを使ったのは’22年、とある就職情報サイトが「底辺の職業ランキング」を公表し、大炎上を招いたことがきっかけだった。
◆間口を広げるためにエンタメ的な切り口を重視
「ランキングに『ゴミ収集スタッフ』が入っていて、『あれ見た?』と会議で話題になったんです。それまでも動画は出していたんですが、まあ再生回数が伸びず……。目を留めてもらうためにもまず、SNSで好まれがちなネガティブワードを逆手に取る戦略に切り替えました」と企画者のアミーさんは振り返る。ただし元ネタとなった炎上騒動も沈静化した今は「底辺」よりも「ブルーカラー」という表現を使うことが増えているという。
「最近ではゴミ処分の方法を説明する知識系だったり、流行りのショートドラマだったりと、トレンドも交えつつ試行錯誤しています」とひーちゃんさんは語る。
こうした努力は、はたして肝心の採用に直結しているのだろうか。靖さんはいう。
「職種にもよりますが、ゴミ収集のドライバー職についていうと、応募者はSNSを始めた3年前の約2倍に増えました。正社員募集をかけてもすぐに埋まるので、今はお待ちいただくためのエントリーフォームも用意しています」
人材獲得とはまた別のメリットも感じているという。
「ゴミ回収業への偏見を大真面目に訴えるより、エンタメ的な切り口で伝えたほうが視聴者には見てもらいやすい。結果としては求職者以外も含めて、SNS動画が業界への理解を深めるきっかけになっていると思います」
SNS採用代行などを行うリソースクリエイションが転職活動を行う20代を対象に実施した調査によれば、転職活動の際、「SNSを使って社名を検索した」と答えた割合は約8割、その手段としてTikTokを挙げたのは46%と半分近くにのぼった。若年層獲得のための企業採用活動でSNSが欠かせない存在となりつつある中で、最近増えているのが、従業員ではなくインフルエンサーを起用・出演させるという手法だ。
