元交際相手につきまとわれた末、殺害される事件が再び起きた。

 現行制度での対応には限界があり、見直しが急務だ。

 東京都豊島区の商業施設で3月末、人気キャラクターのグッズ販売店に勤める21歳の女性が元交際相手の男に襲われた。男は女性と自分の首を交互に刺し、2人とも死亡した。

 男は、多くの客がいる場所で、女性を巻き込んで「拡大自殺」を図ったとみられる。理不尽極まりない、許し難い行為だ。

 女性はかねてストーカー被害を訴えていた。警視庁は昨年末に男をストーカー規制法違反容疑で逮捕し、釈放前には、つきまとい行為の禁止命令も出していた。女性にも身を隠すように助言し、定期的に連絡を取っていたという。

 警視庁は「最善の措置を取った」としている。現在の制度で事件を防げないのだとしたら、新たな対策を検討せねばなるまい。

 ストーカー規制法はこれまで改正が重ねられ、つきまといのほか、SNSへの執拗(しつよう)な書き込みや、GPS機器で相手の位置情報を取得する行為も禁止された。罰則も2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金に引き上げられた。

 それでもストーカー行為は後を絶たず、毎年2万件前後の相談が警察に寄せられている。

 昨年も、川崎市でストーカーによる女性殺害が発覚し、水戸市ではネイリストの女性が犠牲になった。紛失防止タグをぬいぐるみや車に仕込み、居場所を特定するなど、手口も巧妙化している。

 警察は、禁止命令を受けた加害者に、相手への執着心を弱める治療やカウンセリングを受けるよう促している。しかし任意のため、今回の男は拒否していた。

 昨年の禁止命令3000件のうち、受診したのは200人余にとどまる。受診の義務化を検討すべきだ。また、カウンセラーの人材育成も欠かせない。

 加害者の監視も強化する必要がある。保釈された被告の海外逃亡を防ぐため、裁判所が被告にGPS機器の装着を命じられる制度が近く導入される。これをストーカー事件にも拡大してはどうか。

 治療を拒否した場合にGPS機器を装着させるなど、両者を組み合わせた仕組みも一案だろう。

 失った相手への執着や怒り、絶望といった感情は、程度の差はあれ、誰にでもあり得る。

 「喪失」をテーマにした本や映画は多い。日頃からそれらに触れ、苦しいのは自分だけではないと立ち止まる心も養いたい。