優秀な人材を引き入れるにはどうすればいいか。採用コンサルタントの内藤貴皓さんは「上から目線の面接をしていると、優秀な人材に避けられ、応募者の質が低下していく。会社は選ぶ側でなく、選ばれる側であるという認識を持つべきだ」という――。

※本稿は、内藤貴皓『採用大全』(総合法令出版)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/Chalirmpoj Pimpisarn
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Chalirmpoj Pimpisarn

■「いかに厳しい会社か」を語る面接官

「最近の若い営業は根性がない。すぐに辞めてしまう」

都内のマーケティング会社で営業部長を務めるK氏(42歳)は、憤慨しながらそう語りました。彼の会社では、毎年15名の営業職を採用する計画を立てていますが、入社1年以内の離職率が50%を超えています。

「面接では『御社で成長したい』と言っていたのに、少し厳しく指導すると『パワハラだ』と言い出す。ゆとり世代は本当に困る」とも言っていました。

そこで私はK氏に聞きました。「面接では、どんなことを聞いていますか?」

「当然、営業経験と実績です。あとは、うちの厳しい環境に耐えられるかどうか。プレッシャーに強いか、数字に執着できるか。営業は結果がすべてですから」

「候補者からの質問には、どう答えていますか?」

「キャリアの可能性とか昇給率など、そんな質問ばかりです。『まずは結果を出してから言え』と思いますけどね」

さらに聞き進めると、驚くべき実態が明らかになりました。面接では、候補者の話を聞く時間はわずか15分。残りの45分は、K氏が「営業とは何か」「うちの会社がいかに厳しいか」を延々と語っていたのです。

■「根性があるか」という時代遅れな考え方

「最初に厳しさを伝えておかないと、後でギャップが生まれますから」とK氏は自信満々でしたが、私には別の光景が見えました。これはまるで、砂漠で貴重な水を見つけながら、「この水は純度が低い」「ミネラルバランスが悪い」と文句を言って、次々と捨てているようなものです。

しかも、その判断基準は「自分の若い頃と比べて根性があるかどうか」という、極めて主観的で時代遅れなものでした。

残酷な事実をお伝えしましょう。あなたの会社は「水(求職者)を選ぶ側」ではありません。「水(求職者)に選ばれる側」です。多くの採用担当者や経営者は、この根本的な構造変化を理解していません。いや、認めたくないのかもしれません。

事例1「上から目線の質問に“逆質問”」

あるメディア企業の営業職採用で起きた出来事です。最終面接で、役員が候補者に対して「君、うちで本当にやっていけるの?」と上から目線で質問しました。

候補者は冷静に「むしろ、御社が私を必要としているかどうかを判断したいので、具体的な事業戦略を教えていただけますか?」と返しました。

役員は言葉に詰まり、結局その候補者は辞退しました。後日判明したことですが、その候補者は競合他社に入社し、わずか2年で営業部門のトップパフォーマーになっていました。この企業は、自らの傲慢さゆえに、優秀な人材を逃したのです。

写真=iStock.com/Liubomyr Vorona
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■「選ぶ側」の意識が採用の失敗を招く

採用の現場を10年以上観察してきた経験から言えることは、「選ぶ側」意識に囚われた企業ほど、採用に失敗するということです。

かつての日本では、確かに企業が「選ぶ側」でした。しかし、時代は完全に変わりました。優秀なビジネスパーソンほど、選択肢は無限にあります。成果を出せる人なら、どの業界でも引く手あまたです。

転職エージェントからは毎週のようにスカウトが届きます。一人の求職者が、登録後わずか1週間で200通のスカウトを受け取るスカウト媒体も存在します。そんな彼らが、なぜあなたの会社の「暑苦しい環境」に飛び込まなければならないのでしょうか?

「うちで鍛えてやる」「基礎から教えてやる」「一人前にしてやる」こんな上から目線の態度では、優秀な人材が集まるはずがありません。

■逃した魚はとてつもなく大きかった

事例2「カジュアルな面談と聞いたのに…」

あるM&A仲介会社でのカジュアル面談に、オブザーバーとして同席する機会がありました。「ざっくばらんに話しましょう」と人事担当者のMさん(35歳)は、にこやかに面談を始めました。

しかし、5分も経たないうちに、執拗に志望動機を聞き始めました。「なぜうちの会社に興味を持ったんですか?」「他にもM&A仲介会社はたくさんありますが、なぜうちなんですか?」「うちじゃないとダメな理由は何ですか?」。

候補者のBさん(27歳)は困惑した表情で答えました。「正直、まだ詳しく分からないから、お話を聞きに来たんです。カジュアル面談だと聞いていたので……」。すると、Mさんの表情が曇りました。「志望動機が明確じゃないと、次のステップには進めませんね」。

面談後、Bさんは応募を取りやめました。こちらも後日判明したことですが、Bさんはその後別のM&A仲介会社に入社し、わずか2年でMVPを獲得。現在は最年少でチームリーダーを務めています。

■履歴書の“数字”しか見ない会社の末路

人材紹介会社の採用責任者(40歳)は、営業経験者の書類選考で必ずこう言います。「前職の売上実績は? 達成率は?」「数字が書いていない履歴書は、その時点で不合格」しかし実際のデータを分析してみると、驚くべき事実が判明しました。

写真=iStock.com/ridvan_celik
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過去3年間で「数字重視」で採用した営業20名のうち、1年後も在籍していたのはわずか8名(40%)。しかも、そのうち目標を達成できたのは3名だけでした。一方、「数字は平凡だが、プロセスや工夫を評価して採用した」5名は、全員が1年後も在籍し、4名が目標を達成していました。

なぜこんなことが起きるのかと言うと、扱う商材によって売上規模は全く異なり、市場環境や会社の状況で達成難易度は変わり、数字以外の貢献(チームビルディング、仕組み化など)を評価していないからです。

結果、「たまたま良い商材・良い顧客に恵まれただけの営業」を採用し、「厳しい環境で創意工夫してきた本物の営業」を逃してしまうのです。

事例3「休みの日もBBQ」と説明する面接官

営業代行会社の営業職面接に同席する機会がありました。人事担当者のYさん(32歳)は、用意したスライドを使って会社説明を始めました。「弊社は創業5年で売上10億円!」「社員同士の仲が良く、休みの日も一緒にBBQをします!」「社長の高級車に社員も乗せてもらえます!」。

40分の説明の後、候補者に質問の時間を与えました。しかし、残り時間はわずか10分。候補者のCさん(30歳)が「実際の営業活動について詳しく……」と聞き始めると、「詳細は入社後に。まずは選考に進みたいと思ったかどうか、後日ご連絡ください」。

面接後、Cさんにヒアリングしたところ、「正直、何も分かりませんでした。自分がそこで働くイメージが全く湧かない。BBQとか高級車とか、そういうことを聞きたかったわけじゃないんです」とこぼしていました。

■古臭い成功体験で「圧迫面接」は起きる

多くの日本企業で、いまだに「選ぶ側」意識が根強く残っています。なぜでしょうか。「俺の時代は、上司の言うことは絶対だった」「理不尽なことにも耐えて、成長した」「そうやって今の地位を築いた」こんな話を語る管理職は多いです。

そして、同じことを今の若者に求めます。しかし、時代は変わりました。働き方も、キャリア観も、価値観も、全く違います。過去の成功体験は、もはや足かせでしかありません。そして面接官になると、急に態度が大きくなる人がいます。

「評価する側=上」「評価される側=下」。この上下関係の意識が、「選ぶ側」という傲慢さを生みます。

■「他社と比較検討」と言った瞬間、不機嫌に

事例4「熱意を見せてよ」と言ってきた役員

ある広告代理店の最終面接でのやり取りです。役員「君、うちに入りたいんだよね?」候補者「はい、御社の事業に魅力を感じています」役員「じゃあ、どれくらいうちに入りたいか、熱意を見せてよ」

候補者「……どういうことでしょうか?」役員「例えば、内定出したら他社は全部断るとか、そういう覚悟はあるの?」候補者は困惑した表情で、「他社の選考も受けていますので、比較検討したいと思います」と答えました。

すると役員は不機嫌そうに、「それじゃあ、うちへの志望度は低いってことだね」と言い放ちました。結果、その候補者は辞退しました。後で分かったことですが、その候補者は別のPR会社に入社し、3年で最年少のマネージャーになりました。

■優秀な人材から嫌われる会社

「選ぶ側」意識から脱却できない企業は、どうなるのでしょうか。最初に起きるのは、応募者の質の低下です。優秀な人材は、自分の市場価値を理解しています。企業の評判を詳しく調べ、「この会社は違う」と判断すれば応募しません。

内藤貴皓『採用大全』(総合法令出版)

わざわざ上から目線の企業に応募する理由がないからです。結果、他に選択肢がない人材だけが応募してきます。ミスマッチな応募が増え、採用担当者は「最近の応募者のレベルが低い」と嘆きます。しかし、それは応募者の問題ではありません。

優秀な人材から避けられているという現実に気づいていないだけです。また、新人がすぐ辞めるので、既存社員の負担が増えます。常に新人教育に追われ、自分の業務に集中できず、成果が出ず、モチベーションが下がり、優秀な既存社員から辞めていく。この負のスパイラルを招くことになります。

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内藤 貴皓(ないとう・たかひろ)
採用コンサルタント
CHEMI株式会社代表。 1988年生まれ、静岡県出身。大学在学中から大手教育企業でキャリアをスタート。2012年、新卒で入社した出版社では広告営業として社内売上のギネス記録を更新後、人事戦略部にて採用・研修制度を設計。2016年、株式会社FiNCに人事として入社し、中途採用や評価制度の改定を主導。その後、WEINグループの創業に参画し、管理部門とコワーキング事業を立ち上げ。2020年10月に独立、2021年1月にCHEMI株式会社を設立し代表取締役に就任。2025年10月、社名をRECRUIT BOOSTER株式会社へ変更予定。
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(採用コンサルタント 内藤 貴皓)