「釧網線」は維持できるか、JR北海道と地元が導く終着駅
人口が減少していく地域で鉄道を持続的に維持するには、観光客の利用に頼らざるを得ない。釧網線は、競合する高規格道路の整備計画は今のところなく、周遊観光のメーンルートとして優位にある。
ただ列車本数、接続するバス路線は少なく、オフシーズンになるとバスの運転本数は激減する。「空気を運ぶことが多い。生活圏と観光ルートを重ねられれば地域の足を維持できるのだが」と、弟子屈(てしかが)町観光商工課の浜岡英明課長補佐は話す。
中国や欧米からの個人旅行客はレンタカーで移動しない傾向が強く、一級の観光資源に恵まれながらもアクセスの悪さが客足を遠のけている。誘致増には、鉄道を軸とした2次交通の充実が欠かせない。
鉄道を生かした観光のカギを握るのはスマートフォンだ。MaaS(乗り物のサービス化)による情報と移動の連携で課題解決を狙う。島田修JR北海道社長は「点と点を線で結びつけ、さまざまな情報、予約と決済をスマホで行う。釧網線で面にしたい」と意気込む。
中核となる担い手は、自らで高速バスや鉄道を運行するWILLER(ウィラー、大阪市北区)だ。島田JR北社長は「餅は餅屋だ」と話し、ノウハウを持つ域外事業者の参画を歓迎する。
ウィラーは数年前から釧網線沿線の魅力を評価し、食を楽しみながら景勝地をめぐるレストランバスを走らせるなど観光活性化に取り組んできた。
8月にはMaaSアプリケーション(応用ソフト)を投入。スマホに表示された地図上で希望する観光や体験を選択して目的地を設定すると、自動で最適な移動を含む旅程を検索し、予約や決済をワンストップでできる。村瀬茂高ウィラー社長は「空白を埋める新たな交通サービスも必要だ」と話し、オンデマンド交通やパーソナルモビリティーの可能性も模索する。
沿線自治体も関心が高い。水谷洋一網走市長は「道東は、まさに観光の宝石箱。ただ、『どう行ったら良いのか』が大変だった。アプリで解決できれば、この地域の観光は変わる」と期待を寄せる。
「列車でこそ見られる風景」
釧路湿原を縦断する釧網線の顔となる観光列車がトロッコ風客車「くしろ湿原ノロッコ号」だ。今年運行から30周年を迎え、延べ乗車人員は200万人を達成した。
列車に乗って風を感じながら、各所で徐行し、タンチョウが飛来する広大な湿地帯、線路に並走する釧路川や岩保木(いわぼっき)水門を眺めることができる。地元紙の釧路新聞社の星匠社長は「湿原の東側は鉄道でなければ見られない景色だ」と紹介する。
オホーツク海沿岸を並走する釧網線では冬期限定の観光列車「流氷物語号」が走る。車内では地元ボランティア「MOTレール倶楽部」が観光案内を行っている。普段は小学校の校長をしている橋本雄一觔事務局長は「釧網線は海側に並行する道路がなく(流氷が広がるオホーツク海は)列車でこそ見られる風景」とアピールする。
20年夏には東急の観光列車「ザ・ロイヤルエクスプレス」が北海道で臨時運行を予定する。釧網線を経由し、知床斜里で下車して宿泊する行程だ。豪華クルーズ列車の走行で、沿線の知名度向上にも期待がかかる。
