香川真司とサラゴササポーターの関係は良好のようだ

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【スペイン発コラム】アルコルコン戦を現地取材 香川のユニフォームを着たサポーターを多数発見

 元日本代表MF香川真司が、サラゴサで7000人もの大観衆をホームスタジアムのラ・ロマレダに集めた入団発表から、早くも約1カ月が経過した。

 香川はその後、8月17日のリーガ・エスパニョーラ2部開幕戦テネリフェ戦(2-0)からスタメン出場を続け、第2節ポンフェラディーナ戦(1-1)では初得点も記録した。そして9月8日に行われた第4節でマドリード州のクラブ、アルコルコンとアウェーで対戦した。

 8月9日の移籍発表、同13日の入団会見から約1カ月が過ぎても、サラゴサでの香川人気はとどまるところを知らない。実際スタジアムのオフィシャルショップでは、香川の名前をユニフォームにプリントする人たちが何人も見受けられた。

 さらにアウェーのアルコルコン戦に訪れた多くのサラゴササポーターのなかにも、「Shinji Kagawa」のユニフォームを着た人たちを何人も見ることができ、彼らは声高に香川のチャントを歌いながらスタジアムに乗り込んでいった。

 そのなかの1人、エドゥアルドさんは試合前、「カガワは本当に素晴らしい! メンバーのなかで間違いなく最高の選手だよ。彼がプレーするために来てくれたことに僕たちは大きな誇りを感じている。なぜなら彼はビッグクラブにいたのに、サラゴサに来ることを決断してくれたのだからね」と興奮気味に語ってくれた。

 首都マドリードの衛星都市アルコルコンは、近郊電車で30分弱に位置するスタジアム、サント・ドミンゴを本拠地としている。周りをサブグラウンドに囲まれ、やや牧歌的な雰囲気が漂い、収容人数は5100人と少ない。

 2部リーグにありがちなそのような環境は、これまでドルトムントやマンチェスター・ユナイテッドといったビッグクラブでプレーしてきた香川にとっては物足りないものに映るかもしれないが、本人は「この状況を楽しまなければいけないし、そういう気持ちを持つ必要がある。毎日いろいろな発見をするために積極的に取り組んでいきたい。そういうことを楽しみ、喜びに変えながらやっていけたらと思っている」と前向きに捉えていた。

3点目の起点となったヒールパスは「サラゴサの人々へのプレゼント」

 香川は前節エルチェ戦(1-0)、ダイヤモンド型の4-4-2のトップ下でプレーするも、相手が徹底的に守備を固めてきたこともあり、ボールを上手くもらえず、後半26分に1人目の選手交代でピッチを去った。チーム全体の連係不足も感じられていたが、「僕も我慢しているし、みんなで解決策を見つけ、話し合いながらやってきている」と、ベストの形を模索している段階であることを明かした。

 香川はアルコルコン戦でも、エルチェ戦と同じポジションで先発出場。前節同様、序盤はボールがあまり入らなかったが、時間の経過とともにプレーの質が上がっていった。そして1-0で迎えた前半36分にFKからカルロス・ニエトの決定機を演出すると、その3分後に左サイドを突破し左足で正確なクロスを上げ、カルロス・ビガライが強烈なボレーシュートを放つ。そして同43分には、ラファエル・ドゥワメナに決定的なスルーパスを送っている。

 さらに後半に入ると香川が中盤のパス回しにしっかりと絡み、足もとにボールが入った際は圧倒的な技術で存在感を見せつけた。そして試合終了間際の後半45分、ヒールパスで3点目のカウンターの起点となり、チームはアウェーながら3-0の勝利を挙げた。

 香川は大勝後、「アルコルコンがけっこう前めに来ていたので、バイタルエリアで動き、ミーティングのなかでCBとボランチの間をチームとして狙うという意識があった。そこのスペースが空いていたので、いいリズムをつかむことができた」と振り返った。

 さらに「開幕してからチームとして一番手応えを攻守に感じることができたし、それがポジティブなことだった。でもそれは、そこに至るまでにしっかりとハードワークをやり続けているから生まれているものなので、これに止まらずに続けていきたい。この感触が非常に大事だと思う」と、開幕からの4試合で最高の出来だったことを強調した。

 この日の香川の出来が良かったのは間違いないだろう。それはスペイン紙「マルカ」が、「第4節のベストイレブン」に香川を選んだことでも証明された。そしてチームメイトのビガライ、グティ、ドゥワメナの3選手も選出されている。

 さらにスペインのラジオ局「ラジオ・マルカ」のイスラエル記者は、「カガワはこれまで、他の選手との違いを示してきた選手なのは事実であるし、セグンダ(2部)でプレーするには十分過ぎるクオリティーを備えている。そして実際に、相手を凌駕していたことを感じさせてくれた。特にサラゴサがリードしている時、チームを落ち着かせる役目も果たしていたよ。そして3点目のカルロス・ビガライのゴール時のヒールパスは、サラゴサの人々へのプレゼントになったと思う」と高く評価した。

香川の本調子はまだ遠い… 自身に「一番欠けていること」とは?

 アルコルコン戦では素晴らしいパフォーマンスを見せたものの、香川のベストパフォーマンスを知る人々の目には、まだ本調子ではないように映るかもしれない。それはビクトル・フェルナンデス監督が、第2節ポンフェラディーナ戦後の記者会見で「フィジカルコンディションを向上させる必要がある。なぜなら何カ月も試合に出場していなかったからね」と指摘したことからも感じ取れる。

 チームは4試合を戦い3勝1分で2位と好位置につけており、8シーズンぶりの1部復帰に向けて上々のスタートを切っている。そのなかで、香川が多大な貢献をしているのは間違いない。

 しかし、香川本人は「僕自身、アシストして点を取りにいくことが一番欠けていること。その意識を持ち続けていかないと、なかなか目には見えてこないし、今はそういう時期だと思う。周りをしっかりと活かしながら、大事な試合になったら必ず自分で行くということを証明していきたい。厳しい戦いが続くので、これからだと思っている」と、まだ満足している様子ではなかった。

 香川はこの後、ホーム3連勝を目指して9月15日の第5節でエストレマドゥーラと対戦する。そして12月8日の週末(日時未定)に行われる第19節で柴崎岳が所属するデポルティボ・ラ・コルーニャ、同月22日(日時未定)の第21節では岡崎慎司が加入したばかりのウエスカと“日本人初対決”を控えている。おそらく、その頃までに香川はトップフォームを完全に取り戻し、本来の姿を見せてくれるはずだ。(高橋智行 / Tomoyuki Takahashi)