「日本のスカイライン」が帰ってきたと話題に

 日産のビッグネーム「スカイライン」がビッグマイナーチェンジを発表した。最高出力405馬力の3リッターV6ツインターボを搭載する「400R」の登場や、特定条件下においてハンズオフ(手放し)運転が可能な「プロパイロット2.0」の初採用などトピックスにはこと欠かないマイナーチェンジだが、古くからのスカイライン・ファンにとってはボディ各部に配されていた「インフィニティ」エンブレムがなくなり、日産のエンブレムに変わったことが注目されている。まさに「日本のスカイライン」が帰ってきたというわけだ。

 そもそも「スカイライン」という名前は、日産に合併されたプリンス自動車の有していたモデルに由来するもので、日本を代表するスポーティモデルのイメージが強い。初めて「GT-R」を設定したC10系スカイラインは「ハコスカ」の愛称で親しまれた。

 また、1989年に第二世代のGT-Rが復活したR32系スカイラインは欧州モデルをハンドリングで超えるという「901活動」を象徴するFRプラットフォームを基本としていた。C10以降のスカイラインにおいては、基本的に直列6気筒エンジンを積んでいるのも特徴で、スポーティモデルでありながら、プレミアム性も併せ持つ独自のブランドとして確立していた。そうした直列6気筒エンジンを積んだスカイラインは、実質的には日本専売モデルだった。日本市場のニーズだけを汲んでいたから、あの名車たちは生まれたのだ。

V35型からグローバルモデルとなった

 しかし、シュリンクする日本市場に向けて、いくつもの専用モデルを作り続けるのは無理がある。数字の期待できる軽自動車やMクラスミニバンであればまだしも、ただでさえ市場が小さくなっているセダンカテゴリーにおいて日本専用モデルを用意することは体力的にもできなくなった。

 そうして生まれたのがV6エンジンを搭載したV35型スカイライン。グローバルなセダンモデルを日本で販売するにあたって、バリューのある「スカイライン」という名前を使ったが、本来はスカイラインとして開発されたクルマでないことは知られている。なにしろ海外では「インフィニティG35」として売られていた。つまり、V型エンジンにシフトした以降の「スカイライン」は、インフィニティのラインアップとして開発したモデルを日本向けに販売するときにつける名前という位置づけになっていた。

 その意味では、現行スカイライン(V37型)のデビュー時に、インフィニティのエンブレムをボディの前後やステアリングにつけてアピールしていたことは自然な流れだった。海外では「インフィニティQ50」と名付けられたプレミアムサルーンの価値を日本でもそのまま展開しようというわけだ。さらにいうならば「インフィニティ」ブランドを日本でも活用するという意図も感じられた。トヨタがレクサスを展開しているようにまったくの別店舗とするのは非現実的としても、日産の上級ブランドとして「インフィニティ」を活用するということはプラスの効果をもたらす可能性を期待させた。

 しかし、今回のマイナーチェンジにおいてスカイラインからインフィニティのエンブレムは外されることになった。スカイラインが日本に帰ってきたと評価する声が目立つことからも、少なくともスカイラインという確立したブランドにおいてインフィニティとのコラボレーションは有効ではなかったということだろう。逆にいえば、今回の変化はインフィニティ・ブランドの日本展開は当分先になることを示唆していると捉えることもできる。

 プリンス、日産、インフィニティと変わったように見えたが「スカイラインスカイライン」なのである。その価値を最大限に活かそうというのが、日産のマーケティングが導き出した、ひとまずの結論といえそうだ。