トヨタ自動車の豊田章男社長(同社公式ページより)

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 トヨタ自動車が強靱(きょうじん)な体質づくりに向け、さらなる一歩を踏み出す。2019年4―6月期の売上高と当期利益が過去最高を記録するなど足元の業績は堅調。一方、為替の円高傾向を織り込み、20年3月期業績見通しは下方修正した。今後も長引く米中貿易摩擦をはじめとする外部リスクが横たわり、加えて自動車産業の大変革も待ったなしだ。“いいクルマづくり”の深耕で原価改善の取り組みを加速し、市場環境の変化に振り回されない成長モデルを目指す。

通期は下方修正、コスト競争力磨く
 「販売台数が増え、増収増益を達成できた。収益改善や原価改善の成果が少し現れたととらえている」。19年4―6月期について、トヨタの近健太執行役員は、こう受け止める。売上高は前年同期比3・8%増の7兆6460億円、当期利益は同3・9%増の6829億円で、それぞれ4―6月期で過去最高を更新。営業利益も同8・7%増の7419億円と増益を達成した。

 米国での販売奨励金の抑制や固定費削減が効果を出し始めたほか、日本や欧州での販売台数増が寄与。景気減速が著しい中国でも、販売台数を前年同期比7%増やした。同業他社が軒並み業績を落とす中で「トヨタ独り勝ちの状況」(トヨタグループ幹部)だ。

 ただし為替を1ドル=106円、1ユーロ=121円と、期初想定に比べそれぞれ4円の円高方向に見直した影響で、通期業績予想は下方修正した。営業減益となるのは17年3月期以来3年ぶりだ。近執行役員は「原価低減目標も織り込んでいるが、めどが立っているものではない。予断を許す状況ではない」と、危機感をあらわにする。

 研究開発費の4割を占めるCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)分野向けの先行投資も、今後さらに重しとなる可能性がある。吉田守孝副社長は「CASE時代は技術もビジネスもライバルも大きく変わる」とし、「トヨタは大丈夫と慢心している場合ではない」と気を引き締める。

 市場環境などの外的要因に左右されない事業基盤をいかに構築するかが、大きなテーマの一つ。そこでさらなる強化を図るのが、“いいクルマづくり”の取り組みだ。

「危機は『トヨタは大丈夫』と思った時だ」
 トヨタは15年のハイブリッド車(HV)「プリウス」の新型から、新たな設計思想「トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー(TNGA)」を取り入れた。世界販売台数1000万台超という規模を生かし、設計や部品、生産を共用化することで効率よくクルマ開発を進める考え方だ。

 16年に導入したカンパニー制も合わせて、車の開発・設計手法を改革し、4年間で15車種計約300万台を切り替えてきた。さらにTNGAの導入で、開発工数と設備投資をそれぞれ25%ずつ削減した。吉田副社長は「確実に競争力は上がった」と評価する。

 一方、車両原価は環境対応や安全装備の標準搭載などでコストが増し10%減にとどまった。ただ例えば4月に発売したスポーツ多目的車(SUV)の「RAV4」は、購入者の45%が30代以下の若者で占めたといい、吉田副社長は「価格が適切(だったということ)。TNGAの導入から2―3年たち成果は表れている」と自信をみせる。

 今後はTNGAの思想を生かしつつ、地域ごとのニーズを吸い上げた車両開発を加速する。小型車や商用車も含めて、21年末までに18車種の新モデルを投入する計画も明らかにした。

 これにより計650万台が新型車に置き換わる計算だという。7月にはクルマの先行企画・開発に特化し機能を高めた「クルマ開発センター」を新設し、センター長には吉田副社長が就いた。「クルマづくりの環境が厳しくなる中、競争力を一層加速する」(吉田副社長)。